司馬遼太郎原作の映画化である。主演の岡田准一は彼の良さが十分に発揮された映画だったとの感想をもった。しかし、私には脚本が不満だった。映画全体は主役である土方歳三が己の人生を回想する形を取った。それがストーリーの連続性を阻害したと私には映ったのだが…。
映画「燃えよ剣」の公開を知った時、「これは観なければ」と思った。そのわけは原作が司馬遼太郎であるうえ、主演が岡田准一と聞いて私の中では期待感が膨らんだ。
昨日(10月20日)、正午前「シネマフロンティア札幌」に足を運んだ。いくら緊急事態宣言が解除されたとはいえ、平日の昼間である。観客は20数名程度だった。
映画は土方が箱館戦争において官軍相手に自らの死を前にして、己の人生を回想する形で進行する。その手法が果てして適切であったかどうか?判断の分かれるところであるが、私としては少なくともこの手法を是としては受け入れ難い。というのも、映画の中で折々にその土方が回想する場面が挿入されるのである。そのことによって、ストーリーが寸断され、映画を観ている者が映画に没入できないきらいがあった。いわば土方歳三の人生のダイジェスト版を見せられているような気分に陥ってしまったのである。箱舘戦争の最後の戦闘場面のスケール感などは観ている者を圧倒させるのだが、それすら焼け石に水的に観えてしまった…。
出演したキャストは 土方歳三役の岡田准一、近藤勇役の鈴木亮平、沖田総司役の山田涼介、松平容保役の尾上右近、芹沢鴨役の伊藤英明、歳三の恋人のお雪役の柴咲コウと芸達者ぞろいが好演していたのだが…。
人間って面白い。惚れてしまうと痘痕も靨(あばたのえくぼ)的にみえるのだが、反対の立場に立つと荒探しをしてしまう。主役の岡田准一は以前から素晴らしい才能を有した俳優だと見ていた。本作においても彼の演技は際立っていたように思えた。彼の場合は彼の硬質な表情、演技が功を奏しているところが大きいと思っている。しかし、本作の土方歳三はその写真からも、伝わる話からも、表面的には優男という評価が高い。その優男が人を斬ることを躊躇せず、怜悧な性格であるところの落差が土方歳三伝説のように現代には伝わっているように思えるのだ。そう考えた時に、はたして岡田准一がベストなキャスティングだったのかどうか、疑問が残るところでもある。
ただ、「土方歳三」はこれまで多くの俳優が演じてきた役でもあるという。その中で岡田准一の土方歳三の評価が高いのも事実である。
久しぶりに大スクリーンでの映画観賞を堪能することができた「燃えよ剣」だった…。
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