なんともマニアックな講演会だった。写真のことなどまったく知識のない私にとってはちんぷんかんぷんのお話だったが、山本氏が撮り溜めた写真の数々は自然が創る造詣の素晴らしさを、山本氏の技術によってさらにそれを増幅させたような一枚一枚の写真に魅入った私だった…。
拙ブログの4月8日付で「鼓動する野生 山本純一写真展」と題して道新ホールで開催されていた写真展をレポートしたが、同じ写真展が会場を移して現在北海道大学総合博物館で開催されている。(5月29日までの日程で開催中)その写真展に併せて5月14日(土)午後、同博物館内で「カムイの大地」―撮影秘話 夏・秋編―と題する講演会があり,フォト講演会とはどのようなものなのか?という興味もあり参加してみた。定員が60名と限定されていたこともあり少し早めに会場に赴いたところ、幸いに最前列に空いた席があったのでそこに席を確保した。
講演会は氏の作品を大写しにして、その撮影秘話を語るという形で進められた。一般の講演とは違い、講師の山本氏の方も構えることはなく、リラックスした話しぶりで時折りユーモアも交えたものだった。
講演の中で印象的だったのは、川の流れや、夜空の星雲を撮った時についてだった。川の流れる様子や、光量が少ない夜空を撮るときの機材や、時間の設定など、私にはまったく分からないお話だったが、参加していた聴衆の方々の中には氏の写真仲間や、写真部の学生などが多かったようで、彼らにはおおいに参考になったようだ。
※ このような川の流れを表現するには特殊な撮影技術や機材が必要だという。
また、自然界の動物が動いている一瞬を捉える写真などは、多い時で800回もシャッターを切ったうえでの一枚だという説明にも「さすがプロフェッショナル!」と素人の私は唸るばかりだった。
※ 飛んでいる鳥などをクリアに捉えるためには何百回ものシャッターを切ったうえでの一枚だという。
山本氏の言葉で印象に残った言葉があった。それは美瑛町の「青い池」の作品について説明している時だった。山本氏は「“湖面が止まる”時がある」と表現した。シャッターチャンスをうかがい、じーっと待つことの多い写真家ならではの言葉だと受け止めた。
※ こうした一枚をモノにするために山本氏は「湖面が止まる」瞬間を狙っているという。
また、山本氏は現在62歳だということだが、氏のカメラとの付き合いはフィルムカメラからデジタルカメラに切り替わる時代のど真ん中を生きた世代である。それだけにアナログな写真への郷愁もあるという。パソコンによる画像処理が当たり前となって現代において、それを利用してより素晴らしい写真としての完成度を目ざすことも必要だが、全てをそれに頼ることの安易さは避けたいと話され講演を終えた。
※ 山本氏は失敗の一枚だという。それは月の光が山頂から覗く瞬間を狙っていたのだという。
一つの道を究めた人、究めようとしている人のお話をうかがうことは興味深い。
※ 掲載した写真は全てウェブ上から拝借しました。