さすがに防衛畑の専門家である。鋭く国際間の問題に切り込んだ話を展開してくれた。しかし、それは主催者の思惑とはやや違ったものになったようではあったけれど…。
昨日(木)午後、ニューオオタニイン札幌において北海道エナジートーク21が主催する「エネルギー講演会」が開催され、知人から入場整理券を譲られたので参加した。
講師の森本氏は立憲民主党が政権を担っていた時代に民間人として初めて防衛大臣に就任した方である。私の認識では、立憲民主党の政策に特別賛意を示していた方とは認識していなかったが、時の野田政権も防衛問題の専門家であり、かつ民間人であるという認識から就任を要請されたのではないかと認識している。
この日の演題は「激動の国際情勢と日本の課題~国家の安全保障とエネルギーについて考える~」という長い演題だった。
私は主催者の「北海道エナジートーク21」という団体をよく理解していなかったが、知人に伺うと、「原発の推進を支援している団体だ」とのことだった。ということは、主催者は演題の後半の「国家の安全保障とエネルギー」に関して語っていただきたいという思惑があったのでは?と推測する。
ところが森本氏は冒頭から「私は防衛問題については語れるが、エネルギーは専門外である」と述べ、初めから国際問題について語り始めた。
森本氏のお話の要旨は、現在の国際情勢は冷戦時代が終わったことに伴い、複雑さが増してきた現状にあるとした。その要因の一つが第三世界の台頭であるという。第一世界を米国を中心とした西側陣営、第二世界は中国・ロシアとそれに追随する国々、そして第三世界がインドおインドネシア、トルコなどが中心となったグローバルサウスの国々、と大きく色分けされ、それぞれが覇権を狙って胎動している現状だとした。
さらに別の観点から世界を俯瞰すると、米国や日本、欧州各国が標榜するいわゆる民主主義国家は88ヵ国程度で人口比23%だそうだが、中国やロシアに代表される権威主義国と言われる国々は91ヵ国程度で人口比では70%に達するという数字だという。この数字に私は少なからずショックを受けた。中国の尊大とも思える強気の姿勢にはこうした背景を意識していることがあるのだろうか?
さて、そうした背景の中、森本氏は「ウクライナ戦争」についての見通しに論及した。残念ながら森本氏の見通しではウクライナにとっては厳しい情勢だと語った。大きくは米大統領選挙の行方にかかっているが、米国と共にウクライナ支援の中心を担っていた欧州各国において政権交代が相次いでいるという事実を挙げた。欧州各国ではいま “自国第一主義” を謳う右派系の政党が台頭し、ウクライナ支援が先細りとなることが避けられない、と森本氏は喝破した。
森本氏の話は、さらに中東戦争、台湾問題にも及んだが、その部分のレポは割愛したいが、さすがに国際情勢については造詣が深いことをうかがわせてくれる森本氏だった。
森本氏のお話は最後になって辻褄合わせのように突然エネルギー問題について触れた。
ウクライナ戦争による経済制裁によってロシア産原油・ガスが西側に届かなくなった。中東戦争において中東の原油の輸送体制が危うくなった。こうした状況の中で、石炭による火力と再生エネルギーによる電力だけでは限界であり、原子力は不可欠であると森本氏は主張した。ただし、使用済み核燃料の最終処理問題を一日も早く解決してほしいという条件付きで…。
非常に雑駁なレポではあるが、複雑化し混迷する世界情勢の一部分を解説いただいた思いである。
これから国際情勢を報道など見聞きする際には、森本氏の言説も重ね合わせながら解釈していきたいと思っている。