『旗本夫人が見た江戸のたそがれ―井関隆子のエスプリ日記』
深沢秋男、2007、『旗本夫人が見た江戸のたそがれ―井関隆子のエスプリ日記』、文芸春秋 (文春新書 606)
幕末の旗本婦人が残した日記をもとに、幕末の裏面史を明らかにしようとする。裏面史といっても、何か隠されていた事を明らかにするというよりも、むしろ、公式記録を補間するという事であろうか。ただし、加えて、当時の旗本の生活も伺い知る事が出来るという意味に置いても、貴重な日記を新書のかたちで明らかにしたのは、大変面白い。
歴史的知識の常識、例えば、江戸時代の人々は自分の住まいからはなれる事は難しかったとか、女性は虐げられていたとか、明治維新で改めてそうした封建遺制から免れる事が出来たという定番史観から免れる事の出来るもののひとつが、こうした日記に基づく、歴史の再構成であろう。
家に閉じ込められた女性の日記ではなく、様々な教養にあふれ、離縁(どのような理由かは本書では明らかにされたい)された後、後妻にはいり、なさぬ仲の跡取りの息子や孫との関係をうまく維持しつつ、彼らの得た江戸幕府における職責の中で知り得た情報を日記に記す。まさに彼女は、明らかに、後世に残る事を意識しつつ書き残し、その事は、彼女の確立した地位に置いて、当然知りうる情報であった訳である。
読むべし、そして、江戸末明治に関する自らの歴史知識を疑うべし!
幕末の旗本婦人が残した日記をもとに、幕末の裏面史を明らかにしようとする。裏面史といっても、何か隠されていた事を明らかにするというよりも、むしろ、公式記録を補間するという事であろうか。ただし、加えて、当時の旗本の生活も伺い知る事が出来るという意味に置いても、貴重な日記を新書のかたちで明らかにしたのは、大変面白い。
歴史的知識の常識、例えば、江戸時代の人々は自分の住まいからはなれる事は難しかったとか、女性は虐げられていたとか、明治維新で改めてそうした封建遺制から免れる事が出来たという定番史観から免れる事の出来るもののひとつが、こうした日記に基づく、歴史の再構成であろう。
家に閉じ込められた女性の日記ではなく、様々な教養にあふれ、離縁(どのような理由かは本書では明らかにされたい)された後、後妻にはいり、なさぬ仲の跡取りの息子や孫との関係をうまく維持しつつ、彼らの得た江戸幕府における職責の中で知り得た情報を日記に記す。まさに彼女は、明らかに、後世に残る事を意識しつつ書き残し、その事は、彼女の確立した地位に置いて、当然知りうる情報であった訳である。
読むべし、そして、江戸末明治に関する自らの歴史知識を疑うべし!
旗本夫人が見た江戸のたそがれ―井関隆子のエスプリ日記 (文春新書 606)深沢 秋男文藝春秋このアイテムの詳細を見る |