江戸の旅人はアスリートであるというのが本書の結論のひとつだが、江戸時代の人々は普段特段のトレーニングをしていたわけではなく、一日あたりの平均歩行距離は男34.9キロ、女28.6キロを一日ではなく、何十日もかけて歩き通す健脚ぶりであった。
本書の優れているところでは、各種道中記を渉猟して、日本各地からの道中を集計することにより、一日平均の距離だけでなく、どの季節に歩いたのか、天候による違い、何人で歩いたのか、荷物はどのように持っていたのか、歩き方や姿勢、路銀をどのように管理したか、必要とした旅行資金をどのように調達したのか、旅は物見遊山が伴うものであちこち寺社仏閣などの見物が伴われたこと、道路整備の様子なども含め様々なポイントから指摘していて、まさに、江戸時代の徒歩旅行についての完本とも言うべき内容となっている。