本書はパプアニューギニア北部の低地の森林地帯に位置するチェルブメル村と中央高地のウェナニ村でで長期フィールドワークをおこなった人類生態学者のエッセイである。
2つの村の生態系は異なっていて、チェルブメル村ては熱帯降雨林で焼畑耕作を行っていて焼畑の結果、深い森が開かれて狩猟採集対象のノブタの生活圏が生まれるものの、野菜とサツマイモ・ヤムイモの焼畑耕作はノブタとの競合関係にある。また、メスブタの飼育を行いノブタとの交尾によって子孫を増やす。サゴヤシデンプンの採集をおこない。日常の食事はサゴデンプンやイモ類と野菜である。
一方のウェナニ村では、サツマイモの耕作をおこなっていて、オスメスのブタを飼育する。村の周辺には森はなくサツマイモの畑が広がっている。2つの村に共通な点は、ブタは財産でもあり、婚姻や争いのための支払手段となっている。もちろん、食料でもある。
著者は、長期フィールドワークを受動的な行為という。それに対して、短期で課題を明確にした調査行もおこなっていて、これは能動的な行為という。受動的な行為とはいえ、長期で暮らすことによって村の人々の暮らしの詳細を捉えることができたという。