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続・ファッションとしての言葉

2012年11月11日 | 雑記帳
 その言葉は,目に飛び込んできた。

 全部
  全力で。


 シンプルで,しかも頭韻をふんでいるこのコピーはなかなか素敵だ。

 エネルギーを出し切らない最近の子どもに対して,もっと出し切って燃費のいい心身を作ってほしいという気持ちは強い。
 そんな意味で,堂々とスローガンに掲げていいような気もする。

 しかし,それは無理だろ。

 「全部」が何を指し示すのかわからないが,書いた以上はやはり全部だ。
 全部に全力を出すなんてことは出来ないのである。

 かつて野口芳宏先生が,雑誌連載だったと思うが,「何事にも全力を」といった表現が掲示されていることに対して,到底できないことを何故掲げるのか,それは言葉への信頼感を削ぐことになるといったニュアンスのことを書かれていたことを思い出す。

 もちろん中学であるから,生徒が担当して掲示したものだろう。
ただ,それを安易に認めていたのでは,単にきらびやかな装飾と同じではないのかなと思う。

 仮に,ひと月掲示し見慣れた頃に,「見慣れた風景への疑問」と称してその言葉について意見を出させるならば,結構いい活動になるかもしれない。

 この言葉をどう思う?
 「全部 全力で。」


 それにしても,掲示されたその言葉のビジュアルだが…
 手書きの細長くやや丸みを帯びた字体,そして右下部には熊?らしき絵があり,なんとなく脱力系なんだよね。
 これも意図的か。

 もしかしたら句点の意味も深かったりして…

 普通は「全力で やろう」なのだが,句点の存在から「全力で できるかな」となり,あげくは「全力で,できるわけないだろ,そんなもん」といったふうに,読み手に任せる手法か,これは!

 ああ見どころいっぱいの環境であった。