すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

斑もしくは縞模様の彼女

2018年05月19日 | 読書
 あれは2005年、プロ野球セ・パ交流戦がスタートした年である。「楽天vs巨人」カードのチケットを手に入れることが出来て、娘たちと一緒にスタジアムへ向かった。球場入口まで来た時、どこか落ち着きない動作だが、光るような笑顔を見せて歩き回っている女性が目に入った。「あっ、ウドウユミコ」と心で叫んだ。


2018読了52
 『ウドウロク』(有働由美子 新潮文庫)



 当時はサンデースポーツ担当だったか。NHKアナウンサーの中ではひときわ異彩を放っていた。というより、もう既に紅白の司会をしていたのだから認知度は抜群だったのだろう。その後、NY勤務を経て帰国してからもやはりウドウはウドウだった。「あさイチ」は時折しか観なかったが、存在感の濃さが際立った。


 NHK退社のタイミングでこのエッセイ集が文庫化された。十年近い年月のあれこれが記されているが、面白く読めた。「はじめに」にあるように「男性が読んだら中年女が怖くなり、順風満帆に幸せになった女性が読めば、軽蔑する」文章と言えるかもしれない。しかし、それはまさしく彼女の個性発揮そのものだ。


 章立てされている「黒ウドウ」と「白ウドウ」。これが実に象徴的だ。いわゆるブラック的な物言いと、逆に弱気なモードとが対照的に出現しているようだ。画面に映っている時も、そうした振れ幅の大きさは感じられるし、それが魅力でもある。そして黒と白とは、ある意味で「メタ認知と本音」に通じていないか。


 結婚式司会についての文章に、彼女の本質を見る。様々なカップルの司会を全身全霊込めて準備、没頭する姿には純粋さを感じつつ、「自分の結婚式」でもピンマイクをつけて「自分で司会したい」と本気で思う彼女に、黒と白の「中間色」などという半端さは似合わない。斑もしくは縞模様のイメージの彼女が麗しい。