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この危険性を直視せよ

2018年05月04日 | 読書
 我々の世代は子どもの頃に「漫画を読むと馬鹿になる」と言われ、次は「テレビ」そして「ゲーム」等と同様に繰り返された。その真偽はある程度検証されているだろうが、確たる周知の結論にならないまま、ぼんやりと忘れられている。では「スマホ」はどうなのだ。稀代の研究者はかなり危機感を持ち、発信する。

2018読了49
 『スマホが学力を破壊する』(川島隆太 集英社新書)


 一般人に「スマホの悪影響は?」と訊ねた時、コミュニケーションのあり方、使用時間の分別、ネットへの依存等々考えられる答があると思う。それらが「学力を破壊する」まで到るか、と問われれば、多くは使い方次第といった地点で収めるのではないか。自分も含めてそう思った人は、この新書で認識を改めたい。


 仙台市教委との連携調査、全国調査との比較を通して、スマホ使用の危険性が明確にされる。スマホの使用時間と学力低下の関係から導き出された仮説は「①学校で獲得した学習の記憶が消えた、②基本的な学習能力が低下し、学校の授業で学習が成立しなくなった、のいずれか」である。脳への影響は避けきれない。


 身体機能を語るうえで「use it」と「lose it」がキーワードになる。使わなければ衰える。いわゆる便利で楽な状態はlose itを増長する。しかしスマホによる検索、コミュニケーション等は、脳の前頭前野に抑制をかけるlose itという段階でなく、悪いことの起こるdestroy itではないか、という最悪の仮説が提示された。


 著者は「流行っているものを叩くことで自分が浮かび上がろうとする品の無い行為は忌避」してきたと書く。しかし、「その危険性を考慮するに、時代の寵児であるスマホに戦いを挑まざるを得ません」と、「ドン・キホーテ」を覚悟で声をあげる。信頼を寄せてきた研究者がここまで強調することに真摯に向き合いたい。