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言葉こそ敬意の制球力

2018年05月08日 | 読書
 「申告敬遠」とは関わりなくこの新書を読み始めた。そしたらこんな一節が…「結局、敬語を使うということは『敬遠』です。『敬して、遠ざける』という効果がある」。納得!野球の敬遠の正式用語は「故意四球」であり表面上の敬意と言えるが、実際生活では虚実いずれであっても、言葉こそが敬意の制球力となる。


2018読了50
 『勘違いの日本語、伝わらない日本語』(北原保雄 宝島社新書)


 著者は辞典の編纂者。国語学の権威である。前半は敬語、後半は「ぼかし表現慣用句等を取り上げて、現代日本で行き交っている日本語の実態について明らかにしている。学習としては結構難しい敬語だが、まずはその原則について考えさせられた。「敬意を表す対象を見極める」という一言で、言葉遣いを見直せる。


 「尊敬語・謙譲語・丁寧語」はよく言われる。著者はその三つに「丁重語・美化語」を加え5つ提示している。国でも「敬語の指針」として5分類化されている。同じ「お手紙」一つとっても「先生に差し上げたお手紙」と「先生からいただいたお手紙」と「押し入れにあるお手紙」では、語の分類が異なるのである。


 チェーン店の過剰とも思える敬意?表現の間違いはよく指摘されている。自分でもよく理解していない表現もあった。例えば「お申し出ください」という言い方も要注意だ。「申し出る」が目上に対して言う意味なので、お客を対象に使うと、自分が目上になるニュアンスが出てしまう。語そのものを知る必要がある。


 「ぼかし言葉」は自分でもよく使ってしまうので、アイタタタと感じた。何故ぼかすのかは常々感じていて、多くは自信のなさに通じている。いわば、逃げ道の確保…政治家や芸能人の謝罪の言葉などにもよく表れている。「とは思います」「~~という形」「~~的」「とか」…その曖昧さに助けを求めてるみたいな~(笑)


 日本語のウンチク本としても面白い。しかし著者の意図は「伝わる日本語」という箇所にある。そのために「もっと言葉を学べ。言葉をいじることに興味を持ちすぎるな」と警告する。教育に関しても「『話す教育』に偏りすぎ」と指摘する。コミュニケーション能力重視の陰で「読むこと」を貧弱にしてはならない。