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「おおブタ」を改心させるには…

2022年03月02日 | 絵本
 この絵本は、教職時代に読み聞かせに来校していたあるご婦人からいただいた。手持ちの本を貸したお礼だったかと思う。何度か校長室で雑談した記憶があり、聡明な方だったという印象が残っている。俗にいう転勤族で、興味関心をもって地域のサークルに加入して活動された。声もよく語りも上手だったなと思い出す。


『3びきのかわいいオオカミ』
(U・トリビザス文 H・オクセンバリー絵 こだまともこ訳 冨山房) 

 

 ほぼ7年、書棚に寝かせたまま(もっとも自分で目は通していたが)。長い間読み聞かせする機会がなかったが、たまたま4歳の孫相手に語ってみた。題名から想像できるように、一種のパロディ。「3びきのちいさなかわいいオオカミの兄弟」が「わるい おおブタ」に攻撃され続けるが、最後には…という展開である。


 母親から離れた兄弟が、最初に作ったのがレンガの家、次はコンクリート、そして鉄骨と、「強者」に壊されていく筋は古典的ではあるが、方法なども含めて、お話自体は「3匹のこぶた」バージョンよりずいぶんと現代的になっている。他に登場する動物たちのやさしさや会話はリズミカルでテンポがあり、童話らしい。


 パターンをもった会話が繰り返されるので、登場人物の気持ちにそって声調を変えていくことで面白さが引き出されるだろう。絵は写実的で、表情も豊かなのでじっくり見せたい。多人数相手の場合は、先のページ冒頭を読んでからめくった方が場面が効果的に見えて印象づけられる箇所がいくつかある。見定めたい。




 さて最後に兄弟たちがつくる「家」によっておおブタは改心する。美しく甘い香りを放つモノによって実現する。象徴的には、堅い防御だけでは相手は心を開かないということか。現実の世界情勢は、絵本の世界にある真実とあまりにかけ離れてしまった。「おおブタ」を改心させる手立ては何かと考える読後感である。