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勝負は、足腰に極まる

2022年03月28日 | 雑記帳
 当初は、一人横綱の仕上がり具合と新大関の動向が注目された春場所。結果的に「荒れた」というより「面白かった」15日間となった。千秋楽まで優勝の可能性を残した三人の力士はもちろん、奮起を促された大関陣も結果的に優勝決定戦へ向けて、盛り上がる演出をしてくれたような存在であった。結末も良かった。


 若隆景と高安の勝敗を分けたのは、足腰の強さと言っても過言ではないだろう。もちろん身体上のそれでもあるけれど、「足腰」を辞典で引けばわかるように「基礎的な活動力」を指していて、それは精神的な面も多分に含まれる。上半身が繰り出す力で勝負の優劣は動くが、それを支える足腰こそが最後に決定づける。


 今場所はまさに力士個々の勝敗数がそれを裏付けていた気がする。楽日に勝ち越しを決めた数人の力士、阿炎、豊昇龍、遠藤などもぎりぎり踏ん張れたのも「足腰」にあるはずだ。それを15日間どう維持できるか、稽古で何をどう意識し続けるかに関わっているのは間違いない。「強い力士」の鍛錬法に興味が湧く。



 さて、今場所もっとも印象深かった一コマ。それは三日目、琴の若と石浦の取組だった。勝負は琴の若の速い一方的な攻めで決した。今場所の急激な成長が分かる一戦だった。土俵下に落とされた石浦がどこかを痛めたらしく、立ち上がれずしばらくうずくまった。これに対してNHK解説者舞の海は、こう言い放った。


 「これはいけない。ああいう場面があるといい相撲を続けていた場内が一気に冷え込む」。ネット上ではこの非情な発言が疑問視、批判されている。それらの趣旨を十分理解しつつ、一大相撲ファンとして舞の海の発言に力士としての美学を認めた。大相撲文化は「弱みを見せない」「言わぬが花」が基底にあると思う。