すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

参冊参校参稽(六)

2023年02月13日 | 読書
 まさに軽読書の見本のような参冊だった。でもそれぞれに味わいもある。


『上野千鶴子のサバイバル語録』(上野千鶴子  文春文庫)

 編集者が選んだ語録とはいえ、まえがきに書くように「女であることを愛してもらいたい、女でよかったな、と思ってもらいたい」と意図して発信してきた著者が、鉄砲でも撃ち込むようなテンポに仕上がっている。撃ち込まれる相手であろう男の一人としては、やられっぱなしだ。14「男はどちらかと言えば、自分を実力以上にかさばらせて見せたい動物だ」はお見事。15で「男性のすてきな年齢の取り方」とあり、それは「おばさん化」だと記す。いつぞや知り合いに「女性目線」と称されたことがある自分としては、少し救いがあるかな。その他、「家族」「親」という視点はまさに実弾だった。




『死ぬまでボケない1分間“脳活”法』(帯津良一×鳴海周平  ワニブックスPLUS新書)

 健康オタク自認者としては数か月に一度はこの類を読む。どうでもいい内容の本も多いが、これはなかなかお薦めである。医師とエッセイストの対談を進めながら、「からだ」「食」「心」それぞれの「調え方」として、具体的な方法を27項目挙げていく。齢相応に冒頭にある「末端を意識する」が参考になった。現実に数日前から始めている。そしていくらか睡眠に好影響も感じている。まあ、こういう思いこみがとても大事で、いいと感じ、信じて続けていく…これが諸々の健康を自分に活かす原則ではないか。だから飽きて換えてもよしとしながら、またぞろ健康本を買い、ピピッとくる方法を見つけよう。


『すべての神様の十月』(小路幸也  PHP文芸文庫)

 十月という設定があるのかなと思ったが読み取れなかった。神無月と掛け合わせたのだろうか。内容はそれなりに楽しめ、「動かない道祖神」の正体やお釜に宿る九十九神など短編ドラマにもなりそうに思えた。単行本では載っていない最終章の「迷う山の神」を書き下ろして文庫にした形だが、これがなかったらさぞかし中途半端だったろうなと感じた。冒頭で登場し、それぞれの章で話題になったりする「幸せな死神」の行方が落ち着かないからだ。それにしても「おまけ」に当てた「御蒔け」の字は見事。神様はかくあるべしということを、一言で言い切った。