百醜千拙草

何とかやっています

週末の出来事、今後の研究資金事情など

2011-09-06 | Weblog

週末いろいろありました。

遠来の友人が学会帰りに寄ってくれました。波瀾万丈の学会旅行紀を聞かせてもらった上、晩飯をおごっていただいてお土産までいただきました。とても楽しかったです。

土曜日は結婚式でした。この年になって十歳も年下の人の式に、友人として招かれるのはうれしいものです。披露宴の後半はDJが入ってなつかしい60-80年台の曲を中心にディスコタイムとなりました。上着を脱ぎ捨てて踊り狂っている70以上かと見受けられた小柄な老人が愉快なので誰なのだろうと思っていたら、何と新郎の父でした。人が幸せそうにしているのを見るのはいいものですね。

日曜日、子供のサッカートーナメント。レフリーの度重なるアンフェアな審判に監督と選手(13歳)が激怒して怒鳴り合うという珍しいハプニング。善戦するも、引き分けで最終戦に進めず。これまでも、レフリーの依怙贔屓のいうのは何度かありましたが、選手である子供がレフリーに喰ってかかるのを見たのは初めてで、子供たちも成長してきているのだなと頼もしく思ったり。

某そこそこの有名雑誌から論文レビューの依頼。私もこの雑誌レベルを第一目標にしています。この雑誌はこれまで二度、挑戦しましたが、二度ともエディターのレベルで落とされました。このレビュー依頼の論文はよく知っている日本のT大のグループからです。有名雑誌からの論文レビューの依頼の少なからずがこのグループからなので、多分、向こうが私をレビューアに指定してくるのでしょう。知り合いの贔屓目ではないですけど、このグループからの論文はレビューするのも比較的気が楽です。いつもかなりのレベルの仕上がりで、ポイントが大抵きっちり押さえられているので、スラスラと気分よく読めます。

世の中には、途方にくれるような本当にどうしようもない論文が多数あって、そういう論文も少なからずレビューせざるを得ないわけですが、正直、ハラが立つことも少なくありません。その点、出来のよい論文のレビューは得をしたような気持ちになります。このグループからの論文に関してはこれまで採用拒否の推薦をしたことはありません。

しかし、結果がすべての研究界とはいえ、やはり、天下のT大の研究室が、マンパワーを使って高レベルの論文を量産しているのを横目で見ていると、多少は嫉妬を感じますね。私のところは、資金も乏しく、労働力は私を入れて2.5人ですから。彼らは建前上は二つのグループですが、人とリソースを融通し合い、ほぼ一体化したグループとして論文を出してきます。彼らのやりかたを見ていると、昔の「護送船団方式」と呼ばれ、官民一体となって貿易を推進してきた高度成長期の日本を思い出させます。その点、欧米の研究スタイルは個人主義的だと思います。中には「Factory style」と呼ばれる分業制の大研究室もありますが、それは例外でしょう。研究を業績(出版)主義で見てしまうと、分業制の方が効率がよいのは間違いないでしょうが、おそらくそうなると、人のトレーニングや研究の柔軟性という点で問題があること、分業制にするにはそれだけのグラントを取って来ないといけないわけですが、なかなか複数のグラントを常時維持することは難しいことなどの理由で、個人主義的研究スタイルをとる研究室が多いのではないかと想像します。

最近のNatureでは、今後厳しくなっていくであろうアメリカの研究資金の先行きを踏まえて、対応策を検討する委員会についての記事。結論は、結局ムダを省きリソースを共有して、少ない金を効率よく分配するという社会主義的解決策が提案されたというようなことが述べられていました。当然ながら、研究資金は力のあるところが競争で取って、そうでないところは淘汰されてしまえば良い、という競争原理、市場原理主義的提言は行われませんでした。それが研究界全体の利益を考えた場合の良識というもので、当然だと思います。リソースが少なくなってきたときに、強い少数を優先的に残すという選択をかけた場合と、多様性を重視して広く浅くリソースを回すという選択をした場合と、長期的視野に立ってみれば、どちらがよりプラスかは自明ではないかと思います。マトモな研究者を育て上げるのに最低十年はかかります。前者の現時点では生存力の強いものだけを残し、多数を斬り捨てれば、状況が変わって異なる技能が必要とされるようになった時にすばやい対応ができません。目先のカネにつられて優秀な頭脳が金融業などのバクチ稼業に流れてしまったのが、現在アメリカの衰退の原因ではないかと私は思っております。研究界も同様の愚を犯すべきではありません。いずれにしても、研究資金が研究のスタイルやアウトプットを変えるのはどうしようもないことです。中国は二昔前の日本のように怒濤の勢いで、研究論文を出版してきています。どうしても研究資金とレベルは国の経済力に比例しますから、今後は中国の台頭、アメリカと日本のレベルダウンは避けられないのではないかと思います。

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