生家では祖父と両親を見送った。
私の上にはきょうだいが4人いるのだが、生家に帰り住むことのなかった長男の死後、諸般の事情で私が生家を丸ごと引き受けた。
家の中を片付け始めたりすると、ほとんど総てが死んだ者たちの遺品。
捨ててしまうのをためらう物もたくさんある。
母の旧姓が書かれた品々が一つの箱に収められていた。
戸籍上は『ハツネ』なのだが、『初音』と書いたり『はつね』と書いたりしている。
三年菊組とあり、和裁や工作に使ったと思われる小道具や、絵や、何かの取ってのような物や、折れた櫛などなど。
上のきょうだいに見せる機会があるかも知れないので、一応保管することにする。
順序正しく最後に私が生き残ったら、その時点で廃棄処分してしまおうとは思う。
お先に逝くことになったら、済まないけれど、残った者が気の済むように思うがままにしたらいい。