ネット「日本の古本屋」で名前検索をしていると、
解説だけの本までも、検索にひっかかってくれて、
はじめて知る人の本の検索に私にはとても有難い。
たとえば、『 吉田光邦 』の名で検索すると、
中央公論刊「日本絵巻大成」の第8巻「年中行事絵巻」がひっかかる。
その最後の解説を吉田光邦氏が書いているとわかる。とっても有難い。
日本絵巻大成全20巻には、巻末解説をいろいろな方が書かれているけど、
吉田光邦氏が書いているのは、この第8巻のみ。この機会にさっそく読む
(のちに絵巻大成は、続編も追加されているようです)。
それはそうと、「日本絵巻大成」には、毎回の月報を宮本常一が書いており、
月報をまとめ、「絵巻物に見る日本庶民生活誌」(中公新書)として出てる。
中公新書のは、以前にたのしく拝見したことがありました。
はい。日本絵巻大成第8巻の月報から、今回は引用してみることに。
「・・・町家の前に門松が立てられている。・・・
興を覚えるのは、宮廷や貴族の門の前には立てられていない。
これは、民衆の間にのみ見られる習俗だったのだろうか。
門松は正月の神を迎えるための木ということになっており、
この絵巻では松が立てられているが、土地によっては
ツバキ・サカキ・シイなども用いられている。
東京都府中市では笹竹のみを立て、松は用いていない。
門松を立てるのは、日本のみではなく、中国の北部などにも見られ、
そこではモミを立てているようであり、中尾佐助氏の『秘境ブータン』
によると、ブータンでも門松を立てている。
ただし、これは二本ではなく数が多いようである。
日本では、門松のほかに、家の中に拝み松というのを立てるところが多い。
東北などでは広く、これを見ることができるが、もとは奈良・京都付近の
農家でもみなこれを立て、その松を拝み、その前で正月の酒を汲み交わした。
そうすると、キリスト教におけるクリスマスツリーとたいへん近いものになる。
これはモミ・ツガを主とするが、北欧の古い農耕儀式がキリスト教に結びついた
ものと故渋沢敬三先生は言っている。
これは優れた指摘であり、正月に松を立てることは、
どうやら広く世界各地に見られた習俗のようである。 」
( 「日本絵巻大成」第11回配本・第8巻 月報11の、p1 )
( 「絵巻物に見る日本庶民生活誌」中公新書では、p214∼217 )