吉田光邦著「日本の職人像」(河原書店)には、
職人をめぐって、竹取物語・今昔物語・徒然草・宇治拾遺物語
古今著聞集・狂言・更級日記などをとりあげてゆきます。
そして江戸時代になると近世畸人伝・耳袋のあとに、
浄瑠璃が登場しておりました。そこを引用しておきます。
「・・庶民芸術といわれる浄瑠璃の主人公はことごとく商人ばかりだった。
庶民の代表は農でもなく工でもなく商人であった。
曽根崎心中の徳兵衛は醤油商平野屋の手代、
五十年忌歌念仏の清十郎は米問屋但馬屋の手代、
冥途の飛脚の忠兵衛は飛脚問屋亀屋の養子、
博多小女郎浪枕の小町屋惣七は京の商人、
心中天網島の治兵衛は紙商、
女殺油地獄の与兵衛は油屋、
心中宵庚申の半兵衛、八百屋お七の家はともに八百屋
という有様であった。・・・・・・
かの『日本永代蔵』『世間胸算用』『西鶴織留』などの
町人物を連作した井原西鶴の作品のなかで、
いきいきと活動するのはこれまた商人ばかりだった。・・ 」(p124)
「・・随筆類に偶然のように現われるもの以外には、
職人はあまり江戸文芸の立役者となることはできなかった。
立役者は武士か町人、町人のなかでも商人だった。・・・・
そして職人は裏長屋に住む人びとであり、
せいぜい落語の対象、笑の対象としかならなかった。 」(p123~124)
井原西鶴のあとに、吉田光邦氏が登場させるのが明治にはいって、
幸田露伴。つぎに長谷川伸。
うん。幸田露伴は、丁寧に作品を追って紹介してゆき、
長谷川伸は、わかりやすく職人像を浮き彫りにします。
次回は、長谷川伸が語られる箇所から引用してみます。
あれ。次回の予告になっちゃった(笑)。