和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

しっちゃかめっちゃか。

2022-02-21 | 本棚並べ
「いじわるばあさん」全6巻(朝日新聞出版・2013年)が
古本で届く。新書と単行本との間のサイズの大きさでした。
表紙カバーと厚さは、手にした感じが新書のような本です。
その各1ページに、四コマ漫画が、ひとつ。
さあ、これからゆっくりと読んでゆきます。
というか、見てゆきます。


そうそう、6巻といえば、私がワクワクしながら、
小説らしきものをはじめて読んだのは
司馬遼太郎の『坂の上の雲』。単行本で全6巻でした。
あれが小説を楽しみながら読み通した最初かもしれないと、
しばらく思っておりました。

「『坂の上の雲』なんて、あれ一体小説ですか、なんですか。」
( p77谷沢永一著「人の器量を考える」PHP )
と指摘されて、ハッとしました。
な~んだ。これ小説じゃないから、私は楽しく読めたんだと、
思いました。自分の小説嫌いを思うと、納得してしまいます。

ここは、興味深いのでその前から引用していきます。

「翻って、司馬遼太郎の『菜の花の沖』にはロシアの話が出てくる。
延々と続く。あの連載の時、あとで聞いたのですが、
今日来た原稿はまだロシアか、まだロシアか、まだ嘉兵衛は出てこないか、
といって産経の学芸部が頭を抱えたというぐらい、
しっちゃかめっちゃかをやるわけでしょう。
『坂の上の雲』なんて、あれ一体小説ですか、なんですか。
・・・・・」(p77)

こんな箇所もあります。

「『坂の上の雲』では、
子規の人物についてはかなり書かれていますが、
秋山兄弟については書けていない。つまり、
卑近な意味での人物の内面像です。
そういう点には、ほとんど興味を持っていないかのようですね。
飯を食うところぐらいで、何を考え、どんなふうに
生活していたのいか。などはばっさり切り捨ててあります。」(p58)

また、谷沢さんは坪内逍遥の『小説神髄』の一句を指摘します。
その一句を、日本近代小説が依怙地になって守ってきた戒律でした。
そこを、あっさりと離脱したのが司馬さんだと説明します。

『小説神髄』の一句とは
『小説の主脳は人情なり、世態風俗これに次ぐ』でした。
これを司馬さんはどうしたか、谷沢さんは続けます。

「小説はどう書いてもいいのだ、と考えるだけではなく、
その実作によってあっさりと離脱独立したのが、
司馬さんの小説なんです。・・世の批評家がとまどっている間に、
圧倒的多数の読者が司馬文学を支持した。
司馬は小説の定義を丸ごと変えてしまった、
という意見は私の根幹的な主張です。」(p32)

この本をめくっていると、この谷沢さんが、
『司馬さんの悪口』へ言及する個所がありました。
はい。悪口とは聞き捨てならない。
そこは引用しておかなきゃ。

「『韃靼疾風録』は、最後になんで
  このようなものを書いたのか、なかなかわからなかった。

 あれ、日本人の悪口を初めて書いた小説なんですね。
 明(みん)王朝最後の皇帝の下にいた馬鹿官僚たちを罵っているが、
 それはけっしてチャイニーズを罵っているんじゃなしに、
 日本人を頭に置いているのです。 」(p35)

谷沢さんは、あとの方で『日本の官僚』の指摘もしておりました。

 「とにかく内に強くて、外に弱いというのが、
  これが日本の官僚の終始一貫した性格です。」(p188)


え~と。古本の「いじわるばあさん」6巻本が届いた
という話からはじまったので、最後は長谷川町子さんの
『サザエさん うちあけ話』から、この個所をまた引用します。

「・・・単細胞の親子は、陽気に、くったくなく暮らしました。

夕食のあとなど、おぜんのお茶わんについた米粒の干からびるにまかせ、
二時間でも三時間でも、芸術論、宗教論、服飾だんぎ。
くだって人のウワサへと発展します。
豆、食い食い人の悪口いうを、
荻生徂徠センセイも娯楽の一つにかぞえています。・・・」

谷沢永一著「人の器量を考える」(PHP・1998年)は
まえがきで谷沢氏が、書いておりました。

「・・この本は、世間一般での雑多な話題をことのほか
 好む変り者のふたりが、片方は相手につぎつぎと質問し、
 片方はこれまたあれこれ話題を跳躍させながら・・・
 興にまかせて語り続けた世間学の記録なのである。
             平成9年12月        」(p4)

うん。ここから「いじわるばあさん」へと結びつきそうな箇所。
短いので、そこを引用しておわります。

「江沢民が、あれだけ軍備拡張し、南沙諸島へも出ていってる国で、
 日本に軍国主義復活の恐れあり、ということを平気で言います。
 そういう国に対しては、同じ論法で言わなければダメです。」(p189)

いじわる韓国さん。いじわる中国さん。いじわるロシアさん。
さて、これから読もうとしているのが『いじわるばあさん』。

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2 コメント

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Unknown (びこ)
2022-02-21 16:36:09
今日の記事も、とても勉強になりました。

私は、以前は、歴史嫌いだったのでしたが、司馬遼太郎の小説を読んで歴史好きになれたかもしれません。特に秋山兄弟のことは『坂の上の雲』を読んで初めて知りましたから司馬遼太郎には感謝しています。
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なかなか。 (和田浦海岸)
2022-02-21 16:46:09
こんにちは。びこさん。
コメントありがとうございます。

はい。「いじわるばあさん」へ行くのに、
なかなか、意地悪してつながりませんが、

びこさんも『坂の上の雲』を読まれた
ようなので寄り道もそれなり悪くなし。

ということにしておいてください。
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