和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

空也の痩(やせ)も寒の内

2020-01-27 | 京都
東京23区に積雪の予報。という、今日この頃。
京童(わらべ)たちと、京の冬を思い浮かべます。

高橋美智子さんの子どものころの、
京都の寒中托鉢が書かれた箇所がありました。

「寒(かん)に入ると、
あちこちで寒行事が始まります。

凍てつく朝、禅宗の坊さんたちが『ホーホー』と
行列していく寒中托鉢(たくはつ)は、
厳しい京の冬の街角に、何よりも
ぴったり似合う光景だと思います。

墨染めの衣に素足のわらじばき。
真っ赤になった指先を見るたびに、
子どもごころにわたしは
『修行てつらいもんやなあ、よう辛抱しやはる』
と感嘆する一方で、
その朗々と響く声、引き締まった顔つき、
シャンと背すじを伸ばして歩く青年僧たちの姿を、
『ええかっこうや』とも思いました。」
(p24「四季の京わらべ歌 あんなのかぼちゃ」)

こうして、
「子どもたちが寄れば、あたりかまわず
大声をはり上げる愛唱歌」がありました。

  坊(ぼん)さん 坊さん どこいくの
  あの山越えて お使いに
  わたしもいっしょに 連れてんか
  お前が来ると じゃまになる

  カンカン坊主 カン坊主
  うしろの正面 どなた

「『カンカン坊主』のところでは、
ちょっと坊さんに悪いなあと、
うしろめたさを感じましたが、
そんな気持ちをはじきとばすように、
かえって一だんと声をはり上げたものでした。」

さてっと、高橋美智子さんの文の最後を引用。

「子どものころからわたしは、『カン坊主』のことを
単純に『寒坊主』と思っていましたが、これは
空也(くうや)上人に始まる『鉢たたき』のことを、
京童たちがうたったものなのでしょうか。
鉦(かね)をたたき、念仏を唱えて歩く、
空也堂の僧たち・・・・・
立春も過ぎると、身を切られるような
寒風の中の寒中托鉢も終わります。」(p25)

今でも、寒中托鉢は京の街角で
おこなわれているのでしょうか?

現在のことは、わからなくっても、
歴史上の空也なら、わかります。
ということで、以下に空也について。

さとう野火著「京都・湖南の芭蕉」が
古本で300円でした(笑)。そこから引用。

「若くから・・・諸国を布教、尾張の国分寺で
得度し入洛。天暦2年(948)、叡山座主の
延昌から受戒、光勝という大僧名を与えられた。
このまま延暦寺にとどまれば、天台宗の
超エリートとして名を残す立場にあった。

しかし・・・比叡山を下りてしまった。
そこで、弟子たちが探すと、下京の雑踏の中にいて、
・・・・・山に帰らなかったという。時に天慶元年(938)、
35歳。その後は、飢えや病気に苦しむ民衆を救済する
ことに尽力し、空也の行動するところ民衆がぞろぞろ
とついて来た。市の聖(ひじり)といわれるゆえんである。

既成の宗教はすでに形骸化し
一部の貴族の奉仕に明け暮れていたのである。
後に、叡山で修行し宗祖となった
法然、親鸞らも同じ思いであったろう。」
(p150~151)

このあとに、芭蕉の句
『から鮭も 空也の痩(やせ)も 寒の内』
を具体的に説明しております。
うん。こちらも引用することに。

「この句について芭蕉は、
『心の味をいひとらんと数日腸(はらわた)をしぼる』
(「三冊子」)と。
『から鮭』は鮭のはらわたを取り
塩をふらずに陰干しにしたもの。
『空也の痩』は六波羅蜜寺の
空也上人像が浮かぶ。
念仏を唱える口から六体の
阿弥陀が現れる写実的な立像である。

布教で集めた浄財は
飢えに苦しむ人々に与え、
自らはこの姿だった。

この句をくりかえし読んでみると、
快いリズムがある。
『から鮭』『空也』『寒の内』と、
すべて破裂音のK音で連なっており、
心に響く韻律を構成している。・・・」
(p151)

うん。
京のわらべ歌と芭蕉の句。
『カンカン坊主 カン坊主』と
『から鮭』『空也』『寒の内』と

どちらも、心に響く韻律として
ありました。








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4 コメント

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坊さん坊さん (きさら)
2020-01-27 17:46:58
私は
子供の頃
お風呂に浸かって

ぼうさん ぼうさん どこいくの。。。
と歌いながら
タオルを湯につけて 空気を入れて
球状にして 
カンカンぼうず~ のあたりで
その空気の入った部分をぐしゃっと
つぶすのです。

大好きなお風呂遊びでした。
今日は 何十年ぶりに
やってみようかなあ~

返信する
神戸の坊ンさん。 (和田浦海岸)
2020-01-28 09:20:06
きさらさんの子どもの頃と
坊さんの歌とが結びつくのですね。

うん。たのしい。
さてっと、高野辰之編
「日本歌謡集成」。その巻12は
各地域の童謡などをあつめてありました。
その京都の箇所には
肝心な「坊さん坊さん」の
歌はみあたらないのでした。
もうすこし、めくっていると
神戸に、こんな歌がありました。

  坊ンさん 坊ンさん どこ行くの
  この橋わたって酢買ひに
  そんならわたしもつれしやんせ
  お前が行ったら邪魔になる

  このかんかん坊主のクソ坊主。

童謡の採集も、いろいろですね(笑)。
返信する
思い出しました (きさら)
2020-01-28 09:40:49
そういえば
私の覚えているのは

あの山こ~えて 傘買いに~

おまえが行くとじゃまになる

このカンカン坊主 くそ坊主 でした(笑)
(ここで ぐしゃっと タオルをつぶすのです。)

私の祖父は 愛媛県出身でしたから
どこのバージョンかわかりませんが。。。


返信する
か・か・く。 (和田浦海岸)
2020-01-30 08:55:37
「『から鮭』『空也』『寒の内』と、
すべて破裂音のK音で連なっており、
心に響く韻律を構成している。」

とありました。
芭蕉は、ひょっとしたら
かんかん坊主 くそ坊主
わらべ歌を聞いていたのかもしれ
ないなあと想像がひろがります。

その想像の延長に
きさらさんのお風呂遊びが
あったのかもしれません(笑)

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