伊藤正雄氏に
「作文の鬼」という短文があり、
副題は「神戸女子大学就任の辞」でした。
「私の講義には一切大学ノートを用ひず、
四百字原稿用紙に筆記すべしといふことである。
絶えず原稿用紙に親しみ、その正しい使ひ方を
知ることが、文章の創作に向ふ第一歩だと思ふ
からだ。また毎時間必ず小型の国語辞典を持参
して、分らぬ字や言葉は、即座に辞書を引くこと
を励行する。字引に馴染むことが、正しい文章を
書く不可欠の前提だからである。・・・」
(「引かれ者の小唄」p57~58)
この本には、「詩を書く」という短文もあります。
そちらも引用。
はじまりは
「いつも二月になると憂鬱になるのは、
卒業論文の審査といふやつだ。・・
ことに苦手なのは現代詩の論文である。
・ ・質問のネタに困る。ただ幸ひなことに
(?)今の学生は例外なく文章がまづい。
到る所に誤字があり、筋の通らぬことを書く。」
こうはじまる4頁ほどの文を
カットして最後を引用。
「卒業論文に現代詩を選んだ学生の
口頭試問には、次のような訓辞を垂れるのを
常としてゐる。『詩を書くという言葉は
使はぬ方がよろしい。詩を作ると言ひなさい』。
彼らは半ば納得したかの如く、半ば不満を
禁じ得ぬものの如く、悄然として去って行く。
どうも現代詩人は、歌を忘れたカナリアの如き
奇形児に思はれてならない。だが、これほど
現代詩アレルギーの自分の体質の方が変態なの
ではないかと、いささか心細いのも事実である。」
(p46~49)
ちなみに、両方とも昭和48年頃の文でした。
さてっと
大学の国文の教師であった
伊藤正雄氏の文なので、それらしい箇所も引用。
「若い者には若い者の言葉があるべきだが、
過去の伝統を理解し、先人の知恵に学ぶだけの
用意がなければ、健全な国民文化の発達は
望めまい。そこに国語教育の重要な使命がある。
今の大学生は、不幸にしてそれだけの言葉や文字
の基礎訓練を受けぬままで入学して来る。かうした
学生をつかまへて、われわれ教師は何を講義したら
いいのか。・・・・
一面からいへば教師天国である。・・・今はノレンに
腕押しだから、格別勉強しなくても、結構お座敷の
勤まる有難い御時世となった。だが客種が悪いと、
こちらの芸も廃る恐れを免れない。」
(p41~42)
はい。こういう古本は、人気がないのか、
あんまり出回っていないようです。
うん。私みたいに、お小言を頂戴したい方、
そんな方には、うってつけの本(笑)。
「作文の鬼」という短文があり、
副題は「神戸女子大学就任の辞」でした。
「私の講義には一切大学ノートを用ひず、
四百字原稿用紙に筆記すべしといふことである。
絶えず原稿用紙に親しみ、その正しい使ひ方を
知ることが、文章の創作に向ふ第一歩だと思ふ
からだ。また毎時間必ず小型の国語辞典を持参
して、分らぬ字や言葉は、即座に辞書を引くこと
を励行する。字引に馴染むことが、正しい文章を
書く不可欠の前提だからである。・・・」
(「引かれ者の小唄」p57~58)
この本には、「詩を書く」という短文もあります。
そちらも引用。
はじまりは
「いつも二月になると憂鬱になるのは、
卒業論文の審査といふやつだ。・・
ことに苦手なのは現代詩の論文である。
・ ・質問のネタに困る。ただ幸ひなことに
(?)今の学生は例外なく文章がまづい。
到る所に誤字があり、筋の通らぬことを書く。」
こうはじまる4頁ほどの文を
カットして最後を引用。
「卒業論文に現代詩を選んだ学生の
口頭試問には、次のような訓辞を垂れるのを
常としてゐる。『詩を書くという言葉は
使はぬ方がよろしい。詩を作ると言ひなさい』。
彼らは半ば納得したかの如く、半ば不満を
禁じ得ぬものの如く、悄然として去って行く。
どうも現代詩人は、歌を忘れたカナリアの如き
奇形児に思はれてならない。だが、これほど
現代詩アレルギーの自分の体質の方が変態なの
ではないかと、いささか心細いのも事実である。」
(p46~49)
ちなみに、両方とも昭和48年頃の文でした。
さてっと
大学の国文の教師であった
伊藤正雄氏の文なので、それらしい箇所も引用。
「若い者には若い者の言葉があるべきだが、
過去の伝統を理解し、先人の知恵に学ぶだけの
用意がなければ、健全な国民文化の発達は
望めまい。そこに国語教育の重要な使命がある。
今の大学生は、不幸にしてそれだけの言葉や文字
の基礎訓練を受けぬままで入学して来る。かうした
学生をつかまへて、われわれ教師は何を講義したら
いいのか。・・・・
一面からいへば教師天国である。・・・今はノレンに
腕押しだから、格別勉強しなくても、結構お座敷の
勤まる有難い御時世となった。だが客種が悪いと、
こちらの芸も廃る恐れを免れない。」
(p41~42)
はい。こういう古本は、人気がないのか、
あんまり出回っていないようです。
うん。私みたいに、お小言を頂戴したい方、
そんな方には、うってつけの本(笑)。
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