谷沢永一著「いつ、何を読むか」のなかに
『 俳諧表現の陰影(ニュアンス)を解き明かすのに・・ 』
ということで、指摘された言葉が印象に残ります。
『 句から句への移りに込められた連想の感得力 』(p222)
そこから、私に思い浮かぶのは、
鶴見俊輔著「文章心得帖」(潮出版社。ちくま学芸文庫)でした。
ここに、
『 一つの文と文との間をどういうふうにして飛ぶか・・・
この文間文法の技巧は、ぜひおぼえてほしい。 』
『 一つの文と文との間は、気にすればいくらでも文章を
押し込めるものなのです。だから、Aという文章とB
という文章の間に、いくつも文章を押し込めていくと、
書けなくなってしまう。とまってしまって、完結できなくなる。
そこで一挙に飛ばなくてはならない。・・・』(単行本p46)
うん。この鶴見さんの文は以前に読み気になっていました。
でも、『この文間文法の技法は、ぜひ覚えてほしい』と
いわれましても、さてどうすればと思っておりました。
それが、俳諧のなかにヒントがありそうな気がしてきました。
はい。『 句から句への移りに込められた連想の感得力 』。
こちらからなら、俳諧から『文間文法の技法』が学べるかも。
鶴見俊輔氏は『文章心得帖』のはじめのほうに
『 自分にはずみをつけてよく考えさせる文章を・・・ 』
という指摘をされております。
うん。こちらも肝心なことなので、丁寧に引用しておきます。
『 文章が自分の考え方をつくる。自分の考えを可能にする。
だから、自分にはずみをつけてよく考えさせる文章を書く
とすれば、それがいい文章です。
自分の文章は、自分の思いつきを可能にする。
それは自分の文章でなくても、人の書いた文章でも、
それを読んでいると思いつき、はずみがついてくる
というのはいい文章でしょう。
自分の思いつきのもとになる、
それが文章の役割だと思います。 』(p26)
はい。このテーマは興味深くって、
井上ひさし著「自家製文章読本」(新潮文庫)には、
わざわざ、『文間の問題』という章を、こしらえて、
鶴見俊輔氏の『文章心得帖』からの引用をしながら、
柳田国男の『遠野物語』からの引用をまじえながら、
文章にはずみがついてくる『自分の思いつきのもと』
が味わえるようになっております。
はい。このような視点から柳田国男の俳諧評釈を
読んでゆけば、私にも楽しめる気がしてきました。
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