和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

『 言葉はてめえの食い物だもの 』

2023-03-31 | 詩歌
丸谷才一著「新々百人一首」の単行本古本を今日解体。
バラバラにわける。春・夏・秋・冬・賀~恋。
はしがき。時代順目次~和歌索引。以上7つに分け。
2023年3月31日は、「新々百人一首」の入刀記念日。

切断しながら、思い浮かぶ詩がありました。
長田弘が、長谷川四郎氏へ書いた詩でした。

    もちろん言葉。
    手羽肉、腿肉、胸肉の
    骨つき言葉であること。
    まず関節の内がわに
    サッと庖丁を入れる。
    いらない脂肪を殺ぎおとす。
    皮と肉のあいだを開く。
    ・・・・
    ・・・・

    油を沸騰させておいて
    じゅうぶんに火をとおす。
    カラッと揚げることが
    言葉は肝心なんだ。
    食うべき詩は
    出来あいじゃ食えない。
    言葉はてめえの食い物だもの。
    Kentucky Fried Poem じゃ
    オ歯にあわない。
   
    ぼくの伯父さん、あなたは
    今日どんな言葉を食べましたか?



ちなみに、この詩が長田弘詩集『食卓一期一会』(晶文社・1987年)に
はいったときは、『コトバの揚げかた』と題名がついておりました。
そして、詩集にはいったときには、言葉がかわっておりました。

はじまりは、『もちろん言葉。』が、『じぶんのコトバであること。』に

最後の2行、『  ぼくの伯父さん、あなたは
         今日どんな言葉を食べましたか? 』

これが   『  どうでもいいものじゃない。
         コトバは口福でなくちゃいけない。 』

にかわっておりました。ちょっと『揚げかた』をかえたようです。

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2 コメント

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Unknown (1948219suisen)
2023-04-01 03:31:45
そうですね。短歌はバラバラにしても大丈夫ですね。むしろバラバラにしたほうがひとつひとつの歌を鑑賞するのにはベターかもしれません。連作には連作のよさがありますが、しばしばお互いの歌に寄りかかってしまいますから、独立性が保てないという事態にもなりがちです。
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夏。 (和田浦海岸)
2023-04-01 09:58:38
おはようございます。水仙さん。
コメントありがとうございます。

四季をバラバラにすると頁数で、
何とも夏の歌が薄っぺらでした。

はい。一冊をバラバラにするだけで、
結局今回は読むまでにはいたらない。

せめて、このコメント欄でちょこっと。
夏の最初には順徳院(じゅんとくいん)

蝉の羽のうすくれなゐの遅ざくら
   折るとはすれど花もたまらず

これを掲げて文がはじまっておりました。
遅桜に関連して、俳諧が引用されてます。

京中のまだ見ぬ寺や遅桜  太祇

こうして丸谷才一氏は夏の部をはじめていました。

薄いページ数の夏で、私に思い浮かぶのは

 毒消し飲むやわが詩多産の夏来る  草田男

なんだか、短歌の手薄な裾野を開拓してゆく
俳句の開拓者魂を感じるような。

はい。4月になりました。
また、夏の横顔がちらり。
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