和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

風を彫る。

2018-08-02 | 詩歌
暑いので、風が恋しくなります(笑)。

諫川正臣氏の詩を紹介。
長谷川昴氏の彫刻「風の子」をテーマにした詩のようです。

    風を彫る   諫川正臣
   
        長谷川昴先生に

 いたたまれなくなったとき
 少年はいつも裏山に登りました
 独りになりたかったのです

 裏山にはいつも風がありました
 麓に風のない日でも少しはありました
 風に吹かれていると心も静まります
 そのうち涙も乾きます

 目には見えない風ですが
 目をつぶれば肌に感じます
 そよぐ草木や雲の流れに風を見ます
 萎んでいた胸のうちがふくらんでいくようで
 山の峰を越えて行く雲は憧れでした

 いつからか
 目には見えない 風のようなものを
 かたちにしたいと思うようになりました
 ひたむきに 打ち込み 励み 腕を磨き
 やがて大樹となって夢をひろげます

 気といわれるものでしょうか
 人のなかにもたえず風が吹いています
 生きている証(あかし)のような
 さまざまな思いの風も

 木のなかに秘められた気を呼び起こそうと
 刻んで 問いかけ 刻んで 問いかけ
 木はふたたび生命をとりもどすのです
 鉈彫りの楠の木肌から大地の風が吹いてきます

 双手を突き出し
 風に向かって元気いっぱいの童子の像
 「風の子」
 かつての少年がそこにいました。


う~ん。
長谷川昴の彫刻「風の子」。
せめて、カタログでも見てみたいと
古本でデパートの展覧会のカタログを購入。
カタログの会期は1980年3月とあり、
日本橋三越本店画廊にてとあります。
まず、三越本店美術部の「ごあいさつ」から引用。

「鉈彫りの名手、現代木彫作家・・・
常に樟(くす)の木と相対座し・・・」

「ごあいさつ」の次には
谷川徹三の「長谷川さんの木彫」と題する文。
せっかくなので、その最初だけ引用しておきます。

「関東から東北にかけて数ある、鉈彫りと通称されている
仏像彫刻は、かつては何らかの理由で未完成のままに
終ってたものとされていた。それが今日では、
未完成なものでなく、その地方の文化の伝統を受けた、
特有の造形意志によるものとする見方が有力になって来ている。
・・・・長谷川さんはその鉈彫りの手法を現代に生かしている
数少ない彫刻家の一人である。・・・」


まあ、鉈彫り彫刻は、彫刻として、
ここでは諫川正臣氏の詩を引用したかったのでした(笑)。


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