映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

読書術と加藤周一1

2011-01-11 21:15:35 | 
正月明けて会社に出勤する時、いつもながらの通勤で何を読もうかと思った。

ふと考えて、小谷野敦の「バカのための読書術」を手に取った。何度か読んでいる本である。この人は確かに本を読んでいる。ちょっと変わったところはあるけれど、おもしろい。
小谷野敦の「読書術」をたまたま立ち読みしていたら、お勧めの本の一つに伊藤整の「氾濫」があった。映画評はこのブログでもコメントしている。佐分利信が主演であった。今現在、ほとんど絶版で売っていない本であるが、私の好きな本の一つである。軽いノリだが、こういうとき自分と波長があったと考えて、購入することにしている。
ちなみにその日家に帰って新聞を読んだら、芥川賞の候補に小谷野敦の名があった。偶然に驚いた。

そんな本を正月からパラパラ読んで今年読む本をピックアップしようと思った。
読んでいると、加藤周一の「読書術」の本のことを書いてあった。
いわゆる戦後知識人を嫌う小谷野敦加藤周一には一目置いている。

この本には思い入れがある。転居、転勤してもずっと書棚にある本がある。読書について書かれた本は
かなり読んだが、2冊だけ絶対にしまい込んだり処分したりしない本がある。加藤周一氏の「読書術」小泉信三先生の「読書論」である。2冊とも何度読んだかわからない。いずれも主要部分にマーカーがしてある。
基本的にはフセンをつけて読む方だ。その方がいざというときに処分できる。
でも本当に惚れ込んだ本は、きたなく使ってマーカーがしてある。その一つである。

高校2年にさかのぼる。
それまでは家の近所に住んでいたショートショートの星新一を読んだり、五木寛之の本を楽しんでいたりした。それでも人よりは本は読んでいる方だった。
席替えで自分の席の前に座った奴がいた。1年のときは別のクラスであった。長距離をやけに早く走って、校内マラソンでも上位に入る男だった。勉強も学年で10番以内の秀才であった。こっちは麻雀好きの柔道部員。もうこのころには主将となっていた。でもぐうたら高校生だった。
そんな彼が席を後ろに向いて話しかけてきた。「この問題ってわかる?」数学の積分の問題だった。2年の一学期が終了するころだったが、授業は積分まで進んでいた。容器から流れ出す水の量を計算する問題だったと鮮明に記憶している。しこしこやった。というよりも彼の方が自分よりも勉強ができる。そんな彼がこっちを試したのであろうか?こういうときは気合が入る。解けた。
でも彼はちゃんと答案をつくっていた。そんなの聞かなくてもいいのに。。。
その前の中間テストの世界史の点数が90点以上で自分が先生に名前を呼ばれた。まさに体育会系の自分がいい点数を取ったので驚かれた記憶がある。小学校のときから歴史が好きだったから、他は無理でもこれだけは頑張ろうと思ったのである。

そのことも彼が話しながら「今度家に遊びに行っていい。」といわれた。
品川の自宅はいつも雀荘のようになっていたぐうたら高校生のたまり場であった。
そこに彼が来た。
好きな音楽を聴きながら、本の話になった。自分の書棚を見せた。本は確かにいっぱいあるが、読んでいない本も多い。エロ本も山ほど。親父の書棚からかっぱらってきた本もある。その中に加藤周一の「読書術」があった。まさに親父の本だ。その本を彼はすでに読んでいた。
そしてこの本の通りに読書を進めていると言った。一年の夏休みに芥川竜之介を全部残らず読んだばかりでなく、そのあと夏目漱石も全部読んだと。。。。驚いた。
自分も加藤周一の「読書術」を読んでみようと思った。実にわかりやすくためになる本だった。スタートはそれが始まりである。その後30年以上たち100回以上この本読んだろう。
自分が年間200冊以上コンスタントに読むようになったのも彼とこの本のおかげである。

その後彼は元来の理系の才能を発揮して京大へ行った。受けた後東京に戻って絶対落ちたよと言っていた。発表すら見に行かなかったら、入学手続きの資料が大学から彼の家に届いた。当時京大は点数を公表していて、かなりの高得点だった。東大受けても楽に行けたであろう。もの好きで京大へ行った。
高校の最後には高木貞冶の「解析概論」を熟読理解していた。理系の天才系にはありがちのひらめきがあった。読書家の彼は歴史系が欠けていると思って僕に声をかけたのかもしれない。実は全然そんな力は持っていないのに。。。そのまま学者になるかとも思っていたが、大学で自殺未遂をした。これは驚いた。
校舎の階上から飛び降り、大変な大けがをした。これは自殺だったと思う。それでも病棟で「解析」の本を読んでいた。大学院に行き、そのあと民間の会社に行った。これが大間違いだったと思う。そうでなかったら、その後本当に自殺するなんてことなかったのにと。

今日そんなこと思い出した。加藤周一と高校の同級生が妙にダブった。
加藤周一の「羊の歌」読みたくなった。
コメント
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