山梨百名山から見る風景

四方を山に囲まれた山梨県。私が愛して止まない山梨の名峰から見る山と花と星の奏でる風景を紹介するページです。

花咲く北岳(1日目)  平成20年7月19日

2008年07月23日 | 南アルプス
 平成20年7月19日 天候晴れ

 2週間前は風邪のためキタダケソウを見に行けず悔しい思いをした。2週間過ぎてもまだ治りきらず、咳と痰が続いている。しかし、歩くにはあまり支障なさそうなので連休を利用して2泊3日で農鳥岳まで行く計画を立てた。同行するのは山梨百名山残り7山あまりの植田さんと登山初心者の当院事務員の斉藤さん。斉藤さんは1泊しかできないとのことなので、翌日一人で広河原まで下山してもらう、はずだった。

    大樺沢沿いに咲くミヤマハナシノブ

 さて、6時半病院集合で私の車で芦安駐車場に移動。既に車は満杯に近く、いちばん端の第八駐車場に車を止める。7時40分のバスに乗り、9時に広河原を歩き始めた。コースは一番安全な二俣から右俣を登るコース、北岳肩の小屋に宿泊させてもらう。連休で混雑が予想されるので、寝る場所が無い時のことを想定してツエルトとマット、シュラフカバーを持っていった。植田さんはトレーニングだと言ってテント、マット、シュラフと完全装備で登る。いつもの通りの花を楽しみながらの亀足ペースで歩く。大樺沢沿いにはミヤマハナシノブが咲き元気をつけられる。心配していた雪渓は二俣の下、距離にして200mほどで、しっかりと踏み固められておりアイゼンは装着せずに登れた。その先の左俣はハシゴ下まで雪渓が続き、アイゼンなしではちょっと危なそうだった。

    大樺沢から見る北岳と左俣の雪渓

 二俣に12時半到着、昼食をとる。陽射しが強く、結構熱い。いよいよ右俣の急登、さらにゆっくりしたペースで登る。途中にキバナノアツモリソウが咲いているところがあると聞いていたので、教えてもらった場所を念入りに探したがとうとう見つけることはできなかった。午後2時半ごろに草スベリの分岐に到着、そのあたりはちょうど満開のシナノキンバイのお花畑になっていて事だった。登山中に抜きつ抜かれつしていた若者3人のグループともすっかり仲良くなり、打ち解け会って肩の小屋を目指す。

    右俣上部のシナノキンバイのお花畑


    肩の小屋直下のミヤマシオガマ

 小太郎尾根分岐の稜線に抜けると景色は一変、目の前に大きな山容の仙丈岳と格好良い甲斐駒ヶ岳が姿を現す。花もシナノキンバイからハクサンイチゲ、ミヤマキンバイ、ミヤマシオガマなどのお花畑に変わる。小屋まであとわずかだが、フル装備で来た植田さんはかなりばてているようだった。私も高度を上げるごとに咳がひどくなり、呼吸が苦しくなってきた。そして午後5時、目指す肩の小屋に到着した。

    肩の小屋直下のお花畑。夕陽に映える。


    テント場は満杯状態。

 小屋では夕食の準備の真っ最中だった。受付を済ませると、小屋主の森本さんが私の名前と顔を見て、「あれっ、前にも来たことあるよねー」という話になり、嶺朋クラブの名を告げると、ビールと女性にはコーラをサービスしてくれた。私もずいぶん有名になったものだとちょっと自己満足する。一緒に登ってきた若者3人組も好ポジションにテント場所を確保し、さっそく設営にとりかかっていた。記念に私たちのパーティーとともに小屋の前で思念撮影をした。6時を過ぎてもまだ日は高く明るい。小屋の直下のお花畑が見事だったので私は三脚を担いで撮影に出かけたが、その頃から咳がだんだんとひどくなってきた。仙丈岳の左側に沈んで行く夕陽が実にきれいで、小屋裏の石垣の上に三脚を立てて何枚も写真を撮った。咳はさらにひどくなり、呼吸が苦しいほどになる。小屋に戻ると夕食に呼ばれていたらしいのだが、撮影に夢中で全く気付かなかった。私たち3人組は遅れて、食事を出してもらったが、植田さんは寝不足と疲れで一口も食事をとることなくシュラフに潜り込んで早々に眠りについた。私は咳で苦しく、酸素缶で酸素を吸いながら食事をとるという異常事態になる。咳止めの薬を持ってきたはずだったのだが見つからず、奥の手で高山病対策に持っていたステロイド剤を内服。呼吸が整うと咳もしだいに治まってきた。高度3000mあたりから空気が薄くて呼吸が荒くなるため、風邪で過敏になっている気道を刺激して咳が止まらなくなるらしい。この時点で明日の農鳥岳行きは断念し、斉藤さんとともに下山することにした。

    途中で一緒になった3人組と記念撮影。水野君と内山君…だったかな?すみません、忘れました。


    仙丈岳に沈む夕陽  雲が湧き上がり、実にきれいな夕陽だった。

 小屋は混雑していたが、1階のいちばん端のスペースに寝かせてもらい、かなりゆったりしたスペースで寝ることができた。といっても、最近夜中の撮影に凝っている私は外の様子が気になってしょうがない。8時過ぎ、外に出て9時半まで月を眺め、2時間ほど寝て今度は深夜1時半から北岳山頂に昇った月を撮影する。一旦横になったが寝付けずに3時半、再び外に出る。既に夜明けを山頂で迎える人たちが準備し、登っている人たちもいた。結局そのまま夜明けを迎えてしまうことになる。(2日目に続く)

    月光の奏でる夕景  明るい星は木星。


    北岳山頂に昇った月  午前2時ごろの風景。
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花咲く北岳(2日目)  平成20年7月20日

2008年07月23日 | 南アルプス
平成20年7月20日 天候晴れのち曇り

 朝3時半になるともう出発の準備をする人たちで山小屋は動きが活発になる。日の出を山頂で迎えるためヘッドライト装着して登って行く人たち、テント撤収して出発準備をする人たち、日の出の写真を撮るため三脚を構えて待つ人たち。山の朝は早い。私は天候と体調が良ければ山頂で日の出を迎えたかったのだが、雲がかかったすっきりしない空模様、相変わらず動くと咳が出始める体調、山頂はあきらめて肩の小屋前で日の出を迎えることにした。

   夜明け前の肩の小屋前。日の出を待つ人、山頂に登る人、動きが活発になる。


    朝の富士山

 雲海の上に富士山はみえるものの、最近多い霞がかった富士山。すっきりした富士山は標高3,000mの高さでもなかなか姿を見せてくれない。やがて鳳凰山の観音岳と地蔵岳の間から赤い陽が昇る。いつ見ても美しい日の出だが、しかし予想したとおり空はあまり焼けなかった。
 小屋に戻るとちょうど植田さんと齋藤さんが食事しているところだった。終了したところで準備し、朝5時、北岳山頂に向って出発。いつもの調子で山頂向けて登って行くと、あっという間に息が切れてゼーゼーし、咳と痰がひどくなる。2人には先に行ってもらい、登山道をちょっと脇に逸れて休憩すると・・・そこには雲海に浮かぶ富士山と、お気に入りの花、ミヤマオダマキの咲く岩肌の景色が待っていた。怪我の功名、思わぬ景色をカメラに収めることができた。その後も息が上がらないようにスローペース、休憩を交えながら山頂目指し、1時間10分かけて北岳山頂に到着した。

    北岳と雲  山頂に登る途中から見える富士山を被うように大きな雲が出始める。


    花と富士の饗宴  北岳に登る途中の稜線で撮影。

 山頂では昨日の若者3人組も休憩しているところだった。20分ほど休憩して記念写真をとり、農鳥岳を目指す植田さんとはここで別れ、齋藤さんと私はトラバース道のお花畑を見に一旦八本歯のコルの方向に下りる。トラバース道のキタダケソウが残っていないか、念入りに探したがあるのは葉っぱだけ、花は一輪も見つけることができなかった。わずか1ヶ月ほどしか見ることができないキタダケソウ、来年こそは再会したい。2年前の7月に訪れた時のトラバース道で見たシナノキンバイとハクサンイチゲのお花畑は本当に感動した。山の上にこんな楽園があるなんて思ってもいなかった。あの時、雪渓でカメラが濡れ、故障して撮影できなくなってしまったので、是非もう一度撮影に行きたいとずっと思っていた。ようやく訪れることができた花の北岳、やはり山頂からトラバース道周辺の花は凄い。若干シナノキンバイの数が減った気はするが、それでも見ごたえ十分だ。ゆっくり散策して、北岳山荘側の道を山頂向って登り返す。

    北岳山頂で見たブロッケン現象


    ハクサンイチゲのお花畑と間ノ岳

 ピッチを上げるとすぐに咳が出だすのでスローペースで登り返し、少しでも息が上がるとすかさず休憩。登山道をちょっと外れて休憩すると、そこにはまた間ノ岳の素晴らしい眺望が待っていた。これもまた怪我の功名。足が遅くて左右を見ながら歩くといろいろな花を見ることができ、体調不良で登山道を逸れて休憩すると良い景色にめぐり合う。この遅いペースが私にとっては武器になっているのだと勝手に思い込んでいる。山頂を経て11時、肩の小屋に到着した。

    ほころび始めたキンロバイと間ノ岳  トラバース道からの風景。


    イワベンケイ、雄花と雌花。


    残雪の間ノ岳カール  登山道をちょっと外れて休憩すると素晴らしい景色が待っていた。

 昼食をとり、荷物を詰めなおし、小屋主の森本さんと記念撮影をして12時、下山開始。バスは4時と5時15分だが、少し急げば4時に間に合いそうだ。右俣コースをやや急ぎ気味に下る。草スベリ分岐あたりのシナノキンバイはちょうど真上から日があたって昨日よりもさらにたくさん、鮮やかに咲き誇っているように見えた。良い臭いのする(?)ミヤマクロユリも咲いていた。順調に下山し、初心者の齋藤さんも全くトラブル無く、午後3時45分、広河原バス停に到着した。

    小屋主の森本さんと記念撮影。次は9月にまた伺います。


    草スベリのシナノキンバイ。見事!


    ミヤマクロユリ。鼻が曲がりそうな強烈な臭いがする。

 何度登っても、いつ登っても感動を与えてくれる北岳。地球温暖化と鹿の食害などによって年々狭くなっているお花畑。この美しい風景がこれからもずっと変わらずに引き継がれてゆくことを切に願う。そして、このレポートと写真を見て、一人でも多くの方が北岳を訪れてみたいと思っていただけたなら幸いである。
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