山梨百名山から見る風景

四方を山に囲まれた山梨県。私が愛して止まない山梨の名峰から見る山と花と星の奏でる風景を紹介するページです。

甲斐駒ヶ岳の展望台、駒薙  平成21年4月29日

2009年05月08日 | 南アルプス
 平成21年4月29日 天候晴れ

春らしい暖かな陽射しとなったこの日、以前から行きたいと思いつつもなかなか行けなかった鞍掛山と、さらにその向こうの大岩山手前、駒薙という場所に行ってみることにした。山梨百名山には入っていない山なのでご存じ無い方が多いかも知れないが、この場所は日向山からさらに西側に延びる尾根にある山で、昭文社の地図では点線になっているルートだ。道標も何もないが、踏み跡とテープはついているらしい。
 朝6時前に自宅出発したが、日向山登山口から歩き始めたのは7時になってしまった。通常は日向山山頂を越えてその向こうの尾根伝いに行くのだが、以前に錦滝側の途中にテープと細い踏み跡らしきものがあるのを確認しておいたので、時間短縮のため今回は錦滝側からルートを直登することにした。もうひとつ、錦滝に日が射し込むのは午前中なので、滝とそこに自生するユキワリソウを見て行くという目的もある。40分ほど歩いて錦滝到着、良い具合に春の陽射しが差し込んでいる。ユキワリソウは咲いてはいるがまだ満開ではなく、滝の右側にちらほらと咲いていた。2年前に見た時よりもさらに数が減っているような印象を受ける。単に今年がはずれ年なだけならば良いのだが、絶滅しないことを祈るばかりだ。

    尾白川錦滝


    錦滝の崖に咲くユキワリソウ

 ここから先は急斜面となり、かなり急傾斜の階段やロープ場もある。以前は崩落している場所があってかなり歩きにくかった印象があるが、ルートが若干変わったのか、それとも整備したのか今回はさほど歩きにくさは感じなかった。雁ヶ原まであと20分くらいのところで左手の尾根に取り付く細い踏み跡とぼろ切れのようなテープが巻かれている。そこを登って尾根まで行くと、そこには明瞭な道がついていて、雁ヶ原から延びる尾根を左にトラバースするようにして細い道がつながっている。15分ほど行くとコルの部分で雁ヶ原から来る尾根道に合流し、向こうには白州の盟主、雨乞岳のどっしりした山容とその直下の水晶薙が見えるようになる。

    雁ヶ原側からの尾根道との合流点.向こうに見える山は雨乞岳.

 さて、ここから先が本番だ。鞍掛山手前にあるピークまではかなりの急登となる。低い笹原の中で何本かに踏み跡が分かれ、わかりにくい場所もあるのだが、あたりを良く見回すと赤テープがついているので、さほど迷うこともなく歩くことはできる。これといって危険な個所もない。中腹で振り返ると眼下に日向山の雁ヶ原が白く見える。樹林帯の切れ間から鳳凰山が見える場所があるが、林を抜けて左側がガレた場所まで抜けると、一気に甲斐駒ヶ岳の堂々とした山容が見えてくる。谷から鋭くそそり立つその勇姿はこの山域ならではの景色だ。ここを過ぎて再びツガの林に入ると、間もなく鞍掛山山頂に到着する。看板も何も立てられていない林の中の平坦な山頂だ。テープがつけられていて、左手を見ると明瞭な踏み跡があり、鞍掛山展望台に行くルート、そのまま右寄りに進むと、本日目指す駒薙から大岩山への道となる。

    中腹から振り返って見る日向山と雁ヶ原


    鞍掛山手前から見上げる甲斐駒ケ岳.左手の林のピークが鞍掛山展望台・


    鞍掛山山頂.看板も何も無い.展望台側と大岩山側の二方向に道が分かれ,それぞれテープがつけられている.

 時間は11時を回っている。鞍掛山展望台も立ち寄りたかったのだが、この先のルートがどうなっているのかわからないので、ここは真っ直ぐに駒薙側に進む。いったん下ると、途中に山梨の森百選に選ばれている美しい天然のカラマツ林がある。登り返すと、尾根の途中から雪が多くなり、アイスバーンの上に5cmほど積もっている。アイゼンは持ってきていなかったが、傾斜が緩かったのが幸いしてところどころ木につかまりながらではあるが歩くことはできた。

    鞍掛山のカラマツ原生林.山梨の森百選のひとつ.


    雪の残る尾根道


    林の切れ間から見る甲斐駒ケ岳

 12時半、目指す大岩山手前のピークにたどり着いた。このあたりは10cmほどの積雪あり、もちろん新しい踏み跡はない。駒薙とはいったいどこなのだろうか?山頂は樹林帯の中で、切れ間からなんとか甲斐駒ヶ岳が見えるだけだ。大岩山側の斜面を、ツガ林をかき分けて探るが展望の効く場所は見つからない。山頂周辺も同様だ。ややあきらめかけてルートを戻ろうとしたところ、鞍掛山側の西側斜面に明るく透けているような場所が目に付いた。踏み跡も何もないが、そちら側にルートをはずれて行ってみると・・・あった!白砂の広がる展望地、駒薙だ。まさに絶景地、甲斐駒ヶ岳と鳳凰山が並んでそびえ立って見える。さらにその左には、本日は霞んで見えないが、富士山の姿も見えるはずだ。切り立つ深い谷、そして残雪の裏甲斐駒ヶ岳、これぞまさに求めていた景色だ。

    駒薙と大岩山,その向こうのゴツゴツした山並は鋸岳.


    陽春の甲斐駒ケ岳と鳳凰山


    そそり立つ甲斐駒ケ岳

 のんびりしたかったが、ルートは長い。午後2時までには下山開始しなければ夕暮れにつかまってしまう。できれば日向山にも立ち寄って行きたい。1時50分下山開始、ひたすら戻るが、急斜面の笹原の中で案の定道に迷った。踏み跡を真っ直ぐに進んで行くと、その先は踏み跡が無くなり、急斜面の谷になっていた。振り返ると、50mほど戻ったところに赤テープがついている。そこまで戻ってあたりを見回すと、道は左に曲がっていてその先にまた赤テープ、そこまで行くと明瞭な道が再び現れた。やはりこの道は夜中に歩くには難しそうだ。コルの分岐点まで約2時間で到着することができた。日向山で数人の人が話をしている声が聞こえる。道を真っ直ぐ進み、日向山に向かうが、登ってきた巻き道よりも雁ヶ原からの尾根道の方がはるかに細尾根の悪路で歩きにくかった。

    日向山雁ヶ原

 午後4時、雁ヶ原到着。確か富士山が見える場所が1カ所あると聞いていたので、それと思わしき雁ヶ原の岩の上に登ってみた。そこには祠が立ててあり、振り返ると鳳凰山の遙か左下に霞んだ富士山の姿が見えた。山頂に移動すると、以前に立てられていた日向山の古びた看板は朽ちてしまったのか、もう無くなっていた。ここからの八ヶ岳の展望は素晴らしい。日向山らしい風化花崗岩の白砂を前景に入れて写真を撮る。

    日向山の白砂と八ヶ岳


    日向山山頂と甲斐駒ケ岳

 さて、日もだいぶ西に傾いた。下山だ。林道まで下りれば日が暮れても問題なく歩けるので、錦滝側の急斜面を下りることにする。山頂から約40分で錦滝に到着、テクテクと林道を歩き、ちょうど午後6時に車に到着した。良い場所を見つけることができて、満足な山行となったが、今回はあくまでも下見だ。狙っているのは朝日の射し込む雪のついた甲斐駒ヶ岳、それと・・・次回この山を訪れた時のお楽しみに。
コメント (2)
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