山梨百名山から見る風景

四方を山に囲まれた山梨県。私が愛して止まない山梨の名峰から見る山と花と星の奏でる風景を紹介するページです。

富士山剣ヶ峰に昇るアイソン彗星 毛無山地蔵峠  平成25年11月16日

2013年11月17日 | 山梨百名山
 予想されていた光度よりも2等級ほど暗く推移しているアイソン彗星。予定では今頃肉眼でも確認できるくらいまで明るくなっているはずだったのだが、未だ5等から6等級の明るさで、性能の良い双眼鏡でなければ見えない明るさだ。しかし、200㎜以上のズームレンズを使えばもう撮影可能な光度になっているはずだ。赤道儀で追尾せずに風景を含めて1カットに収めたい。富士山頂を舞うアイソン彗星を捉えるため、アストロガイドとカシミール3Dの2つのソフトを使って彗星軌道と通過時間を綿密に計算する。その結果、11月16日(土)未明4時、毛無山地蔵峠で富士山剣ヶ峰付近、翌17日(日)は毛無山山頂付近で同時刻に山頂やや右寄りを通過することがわかった。天気予報では16日は晴れ、17日は午後から崩れそうな微妙な予報だ。テント泊で3日間入山していれば2度楽しめるわけだが、どうしてもやらなければならない仕事が入ってしまったため難しくなってしまった。そこで、勝手知ったる毛無山、深夜から登って撮影することにした。好条件となる16日の未明を狙って、毛無山地蔵峠に向かう。

 夕方7時半に寝て11時半に起床。夕食を食べて深夜12時に自宅を出発する。コンビニに寄ったり、ガソリンを積んだりとやっているとあっという間に時間は過ぎ、麓の毛無山駐車場到着は深夜1時半になってしまう。1時50分出発、地蔵峠までは昼間で2時間ほどの行程、さらに展望台まで10分かかるので、時間的にかなり厳しい。渡渉が4回ほどあるので足元に十分注意しながら夜道を急ぐ。水場のある場所まで休憩せずに歩き、1時間半で到着。小休憩しその先の急登を息咳切って登り、1時間55分で地蔵峠に到着した。展望台には4時5分前に着き、ギリギリ時間に間に合った。沈みかけた月に照らされた富士山が肉眼で確認できる。まずは17‐55㎜広角レンズで3カット撮影、まだ彗星は登っていなそうだ。70-300㎜ズームレンズに変えて最大300㎜で富士山頂を撮影してみると、2カット目で剣ヶ峰の左脇に緑色の光が写る。さらにもう1カット、今度は明らかに緑色の光、尾はあまり伸びていないように見えるが、明らかに彗星だ。5秒以上の露出をかけると星が流れて写ってしまうため、Iso感度とシャッタースピードを変えながらひたすら撮る。

    地蔵峠から見る夜富士


    剣ヶ峰に緑色の光が現れる。


    剣ヶ峰に昇るアイソン彗星


    まだ尾はあまり成長していないように見える。


    どんどん富士山から離れて行く。ズームを変えて撮影。


    そろそろ月が沈んだ頃か?富士山が暗くなる。


    富士山の脇にもうひとつの光が現れる。おとめ座のスピカ、1等星。


    おとめ座スピカとアイソン彗星

 ズームレンズでは追えない位置まで彗星は富士山から離れてしまい、広角レンズに変更する。こちらのレンズは星空撮影のために購入した全域F2.8の明るいレンズで、こちらのほうが星は明るく写ってくれる。彗星は小さくなってしまうが、こちらのレンズのほうが彗星の尾は良く写るように思える。

    広角17㎜で撮影。うっすら彗星と尾が見える。


    ズームをかける。うっすらと彗星の尾が延びる。


    5時15分、薄明が始まる。彗星は次第に夜明けの空に消えて行く。


    南西側の空に輝いていた木星(いちばん上)と冬の大三角形・オリオン座


    5時35分、彗星はもう見えない。

 彗星が見えなくなったところで撮影を止めて撮影危惧を片付ける。毛無山山頂は踏まないつもりだったのだがまだ時間は十分にあるので、山頂を目指すことにする。地蔵峠展望台からさらに20分ほど登ったところにもう1ヶ所の展望台がある。そちらまで登って日の出を迎える。6時32分、富士山の中腹から朝日が昇る。

    地蔵峠から20分ほど登ったところにあるもうひとつの展望台。岩の上に三脚を立てて撮影。


    富士山の中腹からオレンジ色の朝日が昇る。


    山上はもう冬の様相。眼下には身延の町をおおう霧、その向こうには真っ白に雪化粧した南アルプスが見える。


    雪の残る毛無山稜線。


    アルプス展望台から見る雪化粧した南アルプス連邦。


    霜の降りた毛無山山頂

 急登の登山道を登ると傾斜が緩くなり、さらに山頂を目指して道を進むと25分ほどで麓との合流点に到着する。稜線は数日前に降ったと思われる雪がところどころ残っていた。アルプス展望台に立ち寄って真っ白に雪化粧した南アルプス連山を堪能した後、毛無山山頂には7時50分到着した。すっきり見えていると思っていた富士山だが、なんとなくモヤがかかって霞んで見える。朝食をとって休憩する。

    毛無山山頂から見る富士山。なんとなく霞んでいる。


    山頂の標柱と富士山

 8時30分、まだ誰も登り着いて来ない時間に下山開始する。8合目あたりから続々と登山者とすれ違う。そして7合目下あたりでミスター毛無山さん、ことK田さんが若者2人を引き連れて登って来た。どうやら駐車場で出会った若者のガイドをしながら登って来たようだ。ジョウロウホトトギスの時は大変お世話になり、クサノオウバノギクもこの方と出会わなかったら見つけることはできなかった。凄い人と知り合いになることができて、本当に幸運である。

    8合目上の展望台から見る富士山


    5合目下のレスキューポイントから見る林越しの富士山。雲が巻き始めた。


    晩秋の不動の滝

 5合目下のレスキューポイントと不動の滝展望台で休憩した他はひたすら下り、約2時間で駐車場に到着した。


 なかなか光度が上がらず、撮影のテンションもモチベーションもなかなか上がらなかったが、とりあえず撮れることは確認できた。ようやくスイッチが入った気分である。これから太陽に向かってどんどん高度を下げるとともに光度を上げるであろうアイソン彗星。今後の変化に期待する。


    偶然写った獅子座流星群とのコラボ
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黄葉の観音峠から金ヶ岳へ  平成25年11月9日

2013年11月17日 | 八ヶ岳・秩父山系
 前日八丁峠短絡ルートから曲岳に登った際に、山頂裏側(金峰山側)のカラマツ黄葉が素晴らしかった。そこでこの日はこのカラマツ黄葉の眺めがいちばん楽しめそうなルート、観音峠から金ヶ岳南峰に至るルートを歩いてみることにした。紅葉ハイシーズンで大混雑する茅ヶ岳・金ヶ岳山塊にあって、このルートは地図上破線の急登ルートになっており、歩く人が少なく静かな山歩きが楽しめる。中腹にある船首岩という展望台は観音峠から奥秩父山塊に至る山並の紅葉を存分に楽しむことができる絶景地である。

 朝8時観音峠に車を止めてスタートする。止まっているのは私の車だけだった。天候は曇り、富士山の眺望は期待できなそうだ。電波塔の脇を通り抜け、鎖場を2本越えて岩を登ると、30分ほどで船首岩に到着する。

    観音峠から見上げる。正面はルート途中のピーク、金ヶ岳南峰はその右に平べったく見える山。左の木に隠れているのが茅ヶ岳。


    ルート途中にある首無し地蔵。本来の観音峠はここだったが、古(いにしえ)のルートは荒廃してしまっている。


    鎖場1。鎖が無くても登れるが、下りは使わないと下りにくい。


    鎖場2


    2本目の鎖を越えると南側の眺望が開ける。谷の紅葉と太刀岡山(左)、茅ヶ岳(右)。


    上に見える岩が船首岩。


    船首岩直下の登りはちょっと登りにくい。


    船首岩。成るほど、確かに船の舳先のようだ。向こうに見えるのは曲岳。

 船首岩はこのルート最高の展望地で、岩の上からの眺望も良いが足場が安定せず、その一段下にある岩の上のほうが安心して眺望を楽しめる。カラマツの紅葉が見頃を迎えており、金色の絨毯の頭だようだ。

    観音峠から奥秩父山塊側の紅葉。金色の絨毯。


    観音峠電波塔と金峰山


    こちらは南側の眺望。中央左寄りに霞んで見えているのが太刀岡山、その右上にうっすら富士山が見えていたのだが、写真では消えてしまった。


    見下ろすカラマツ紅葉


    瑞牆山と金峰山


    こちらは八ヶ岳

 この先は急傾斜と岩尾根が続く。ルートはしっかりしているが、やや歩きにくいところもある。さらに倒木で道がふさがれているところが1ヶ所あり、上側を巻いて通過する。

    残っていた紅葉


    奇妙な岩


    急登と鎖場


    さらに続く鎖場


    急登、足元注意


    見えてきた金ヶ岳


    こちらは茅ヶ岳。左側にうっすらと富士山。(トーンカーブを操作)


    倒木、この先も倒木数本あり、ルートが塞がれていた。上に巻く。

 金ヶ岳南峰への最後の急登を登り、茅ヶ岳からの道と合流する。数人の登山者がここで休憩していた。右に進んで金ヶ岳北峰に到着、時間は11時だった。4~5人の登山者が休憩していた。ここで昼食をとり、ゆっくり休憩する。空はさらに雲が増えだしたが、その雲の中に一時だけ富士山が姿を現した。

    茅ヶ岳からの道と合流。


    金ヶ岳北峰到着。時間は11時。真面目に歩けばこれほど時間はかかりません。


    西側(明野側)の谷の紅葉。もう終焉。


    茅ヶ岳の上に一瞬の富士山。

 紅葉ハイシーズンの前にやっておきたかった茅ヶ岳標柱整備だったが、時期を逸してしまった。今回ニスや黒ペンキ、紙ヤスリなど道具はザックの中に詰め込んできた。しかし混雑するこのシーズンだけに、山頂で標柱をいじっているほどの余裕があるのかどうか・・・。南峰から茅ヶ岳に向かう下りで20人ほどの団体とすれ違った。茅ヶ岳の混雑具合を聞くと、食事休憩するスペースが無くてこちらに移動してきたそうだ。そんな中でスプレーニスを散布したらそれこそ顰蹙(ひんしゅく)ものである。あきらめて南峰に戻り下山する。

 帰りは旧観音峠のお地蔵さんのところから東側にいにしえの道を辿って下りてみた。(西側は以前に下りたことがある。林道のかなり手前に下り付いてテクテクと長い林道を歩いた記憶がある。)なんとなく道っぽいのがあり、やがて明瞭な道に出たと思ったらその道はすぐに笹の藪の中に消えてしまった。適当に斜面を下りるとまた笹籔、しかし、その中を縫うように細い道が通っており、背丈ほどの笹をかき分けながらその道を辿ると・・・ポンと林道に飛び出た。10分ほど林道を歩いて観音峠の駐車場に到着した。おそらく、本来の古い道は笹が生い茂ってもう歩けなくなってしまっているのだろう。


 今回のルートは鎖場や急傾斜があるものの、金峰山や太刀岡山、富士山の眺望が存分に楽しめる眺望の良いコースである。ルートは整備されているとは言えないがあまり迷うところは無く、中級者ならば問題無く歩ける道である。人が少なく静かな山歩きが楽しめる私好みの道と言える。この日も出会ったのは一人だけだった。
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