ラブジョイ彗星はピーク時4等級ほどだった明るさから現在は6等級ほどまで光度を下げている。双眼鏡でも見えにくくはなったが、未だ十分に撮影することは可能である。年末・年始の休み中に富士山からやや距離を置いた南部町の山から富士山の全容とともに撮影しようという計画は体調不良と根性が出ずに果たせなかった。おそらく、今回が最後のチャンスになるであろうと思う。強烈な寒波が押し寄せ、冬型の気圧配置となっておそらくは澄んだ星空が見られるであろう3連休を狙って、予告した通り天子ヶ岳に登る。
仕事を終わらせて午後出発し、田貫湖を出発したのは午後3時になってしまう。もう日の位置は低く、田貫湖には山の影が伸び始めている。長者ヶ岳を越えて天子ヶ岳に向かうが、長者ヶ岳までは道が良くてあまり遠く無かったと記憶していた。登山を始めたばかりの頃にテント泊の練習として初めてテントを張ったのが長者ヶ岳山頂である。ダイヤモンド富士になる日を狙って山頂泊したが、雲に遮られて富士山すら見えなかった。その次に訪れたのは南アルプス栗沢山で凍傷になり、治りかけたところでリハビリで登り、天子ヶ岳を周回して下りた。今回が3度目となる。重いテントを背負わずとも未明に山頂を目指すことも考えたが、そうするとおそらくは寒さに尻込みして登らなくなってしまう公算が高い。ならば無理してでも山頂泊を選択し、金曜日の午後から登ることにした。できれば長者ヶ岳山頂で夕暮れを迎えたいが、時間的に難しいかもしれない。

午後3時田貫湖湖畔を出発。駐車場にはもう山の影が下りる。

バンガローの中を抜けて稜線の東海自然歩道に抜ける。

まだ陽の残る樹林帯の中。

長い木の階段道。長者ヶ岳まではまだ2kmほどあり、意外と遠いことに気付く。
思ったよりも長者ヶ岳は遠く、林の中で夕暮れを迎えてしまう。富士山を見ると中腹に雲をまとい、今シーズンでは最高ではないかという凄い焼け方をしていた。展望地を探すが良さそうな場所が見つからず、止む無し、林の中で三脚とカメラを構える。長者ヶ岳山頂ならばきっと良い写真が撮れただろうが、残念。しかもデジタルカメラの特性で、赤系統の色があまり出ないのも残念だ。

中腹で夕暮れを迎えてしまう。

夕暮れの富士山。もっと真っ赤に焼けていたのだが、赤系統に弱いデジタルカメラは色が出ない。

長者ヶ岳山頂に到着したのは5時半過ぎ。もうすっかり真っ暗。

長者ヶ岳山頂から見る富士山

富士山の左上に輝く明るい星は木星。右側にはオリオン座が昇る。
長者ヶ岳山頂で30分ほど休憩と撮影の後、天子ヶ岳に向かう。ここから標高差120mほど下ってまた同じくらい登り返すと天子ヶ岳に到着する。気合を入れ直して夜道を出発する。幸いにして単独登山者の足跡がくっきりと残っており、それを追いかけて道を進む。月光に照らされた雪の稜線は白く光って美しく、空気が澄んで眼下の街灯りがひときわ鮮やかに見える。こういう景色を見ながら山中を単独で歩いていると、自分が森の中に同化され、自然の一部になったような感覚を覚える。1時間ほどで天子ヶ岳山頂に到着。月光に照らされた森が綺麗だったので、テント設営の前に森の情景をカメラに納める。

月光照らす天子ヶ岳の森

森の上に広がる月と星の情景

天子ヶ岳の森に昇るオリオン座

天子ヶ岳展望台から望む夜富士。富士山頂の上に輝くのは木星と双子座。
周辺をひととおり撮影し終えてからテント設営する。時間はもう7時半を回っていた。想定した以上に冷え込んでおり、テントの中でバーナーを焚いて暖をとり、夕食となる。外気温を腕時計の温度計で測ってみると、既に振り切っていて測定不能だった。氷点下10℃以下まで冷え込んでいるということだ。3シーズンシュラフにシュラフカバーでなんとかなるだろうと思っていたが予想以上に冷え込み、持ってきた服は全部着込んでホッカイロを張って寝るが、腰から腿のあたりが寒くてあまり眠れず、何度も目を覚ました。そして未明3時に起床する。バーナーを焚いて暖をとってから軽く食事を済ませ、3時半、激寒の外に出て三脚とカメラを構える。予想では彗星が姿を現すのは未明4時頃だ。
未明の富士山。右上に高く昇っているのは牛飼い座アルクトゥールス、富士山頂に小さく輝くのは彗星を探す目安となるヘラクレス座ラスアルゲティという星。

200mmレンズで捉えた富士山頂。右に昇るのがラスアルハゲという星。同じ高さで左に彗星が姿を現すはず…と思ったら既に富士山白山岳の脇に彗星が登場していた。

富士山白山岳の上に姿を現したラブジョイ彗星

富士山頂を舞うラブジョイ彗星。かなり小さくなったように見える。

同上

62mmズームだともうほとんど見えないほどに小さい。

頻用する17㎜だとほとんど写らない。左手に昇って来たのはこと座のベガ。
彗星が富士山から遠ざかった頃に再び森の中に入ってみる。木星が北西の空に沈んで行くところだった。頭上には北斗七星と春の大曲線が高く昇っていた。寒さを忘れてすっかり撮影に没頭し、2時間もテントの外にいた。風が吹かなかったためか、あまり寒さを感じなかった。薄明の始まった5時半、テントの中に戻る。

天子ヶ岳の森の星空。中央低空に輝く明るい星が木星。

頭上に昇る北斗七星と春の大曲線

水平線が明るみ始め、薄明の始まった富士山
朝食をとって暖をとって夜明けを待つ。夕食の時に誤ってこぼした水がテントの隅でカチカチに凍りついていた。水平線が赤く染まって来たところで再びテントの外に出て日の出を待つ。昨日の夕暮れのように赤く染まるのを期待したが、この場所では日の出の角度が悪く、富士山の斜面にはあまり朝日が当たってくれなかった。

日の出前の富士山

日の出。この季節は天子ヶ岳からだと富士山に朝日が当たらない。
7時半、テント撤収し下山開始。ゆっくりと山を楽しみながら歩く。長者ヶ岳の先で田貫湖休暇村に下りる道があり、まだ歩いたことがなかったのでそちらを歩いてみた。こちらも整備の行き届いた道だった。これならば、夜中に歩くにも問題は無さそうだ。田貫湖のダイヤモンド富士は何度か撮影したが、まだ撮れていない山上からのダイヤモンド富士も見てみたいと思う。

朝の天子ヶ岳の森

長者ヶ岳から見る富士山

田貫湖湖畔から見る富士山

同上(いつもダブルダイヤモンド富士を撮影しているのがこのあたり。)
ラブジョイ彗星を追うのはおそらく今回が最後になると思う。山上からの撮影にこだわったが、結局富士山と一緒に最もまともに撮れたのは富士宮市白糸の滝付近から見上げたカットだった。貫ヶ岳、天子ヶ岳と2つの山上から彗星を狙ってわかったことだが、富士山の裏側にある御殿場から相模原、厚木、さらに川崎・横浜といった都会の町灯りが明る過ぎるために、山上から見るとその明りが富士山頂を越えて広がってしまっている。そのために、山の上から撮ると富士山頂付近の空の明るさに彗星の輝きが薄くなってしまっているようだ。むしろ見上げる富士山で光害の少ない空を狙ったほうが彗星は撮り易いのかもしれない。
仕事を終わらせて午後出発し、田貫湖を出発したのは午後3時になってしまう。もう日の位置は低く、田貫湖には山の影が伸び始めている。長者ヶ岳を越えて天子ヶ岳に向かうが、長者ヶ岳までは道が良くてあまり遠く無かったと記憶していた。登山を始めたばかりの頃にテント泊の練習として初めてテントを張ったのが長者ヶ岳山頂である。ダイヤモンド富士になる日を狙って山頂泊したが、雲に遮られて富士山すら見えなかった。その次に訪れたのは南アルプス栗沢山で凍傷になり、治りかけたところでリハビリで登り、天子ヶ岳を周回して下りた。今回が3度目となる。重いテントを背負わずとも未明に山頂を目指すことも考えたが、そうするとおそらくは寒さに尻込みして登らなくなってしまう公算が高い。ならば無理してでも山頂泊を選択し、金曜日の午後から登ることにした。できれば長者ヶ岳山頂で夕暮れを迎えたいが、時間的に難しいかもしれない。

午後3時田貫湖湖畔を出発。駐車場にはもう山の影が下りる。

バンガローの中を抜けて稜線の東海自然歩道に抜ける。

まだ陽の残る樹林帯の中。

長い木の階段道。長者ヶ岳まではまだ2kmほどあり、意外と遠いことに気付く。
思ったよりも長者ヶ岳は遠く、林の中で夕暮れを迎えてしまう。富士山を見ると中腹に雲をまとい、今シーズンでは最高ではないかという凄い焼け方をしていた。展望地を探すが良さそうな場所が見つからず、止む無し、林の中で三脚とカメラを構える。長者ヶ岳山頂ならばきっと良い写真が撮れただろうが、残念。しかもデジタルカメラの特性で、赤系統の色があまり出ないのも残念だ。

中腹で夕暮れを迎えてしまう。

夕暮れの富士山。もっと真っ赤に焼けていたのだが、赤系統に弱いデジタルカメラは色が出ない。

長者ヶ岳山頂に到着したのは5時半過ぎ。もうすっかり真っ暗。

長者ヶ岳山頂から見る富士山

富士山の左上に輝く明るい星は木星。右側にはオリオン座が昇る。
長者ヶ岳山頂で30分ほど休憩と撮影の後、天子ヶ岳に向かう。ここから標高差120mほど下ってまた同じくらい登り返すと天子ヶ岳に到着する。気合を入れ直して夜道を出発する。幸いにして単独登山者の足跡がくっきりと残っており、それを追いかけて道を進む。月光に照らされた雪の稜線は白く光って美しく、空気が澄んで眼下の街灯りがひときわ鮮やかに見える。こういう景色を見ながら山中を単独で歩いていると、自分が森の中に同化され、自然の一部になったような感覚を覚える。1時間ほどで天子ヶ岳山頂に到着。月光に照らされた森が綺麗だったので、テント設営の前に森の情景をカメラに納める。

月光照らす天子ヶ岳の森

森の上に広がる月と星の情景

天子ヶ岳の森に昇るオリオン座

天子ヶ岳展望台から望む夜富士。富士山頂の上に輝くのは木星と双子座。
周辺をひととおり撮影し終えてからテント設営する。時間はもう7時半を回っていた。想定した以上に冷え込んでおり、テントの中でバーナーを焚いて暖をとり、夕食となる。外気温を腕時計の温度計で測ってみると、既に振り切っていて測定不能だった。氷点下10℃以下まで冷え込んでいるということだ。3シーズンシュラフにシュラフカバーでなんとかなるだろうと思っていたが予想以上に冷え込み、持ってきた服は全部着込んでホッカイロを張って寝るが、腰から腿のあたりが寒くてあまり眠れず、何度も目を覚ました。そして未明3時に起床する。バーナーを焚いて暖をとってから軽く食事を済ませ、3時半、激寒の外に出て三脚とカメラを構える。予想では彗星が姿を現すのは未明4時頃だ。

未明の富士山。右上に高く昇っているのは牛飼い座アルクトゥールス、富士山頂に小さく輝くのは彗星を探す目安となるヘラクレス座ラスアルゲティという星。

200mmレンズで捉えた富士山頂。右に昇るのがラスアルハゲという星。同じ高さで左に彗星が姿を現すはず…と思ったら既に富士山白山岳の脇に彗星が登場していた。

富士山白山岳の上に姿を現したラブジョイ彗星

富士山頂を舞うラブジョイ彗星。かなり小さくなったように見える。

同上

62mmズームだともうほとんど見えないほどに小さい。

頻用する17㎜だとほとんど写らない。左手に昇って来たのはこと座のベガ。
彗星が富士山から遠ざかった頃に再び森の中に入ってみる。木星が北西の空に沈んで行くところだった。頭上には北斗七星と春の大曲線が高く昇っていた。寒さを忘れてすっかり撮影に没頭し、2時間もテントの外にいた。風が吹かなかったためか、あまり寒さを感じなかった。薄明の始まった5時半、テントの中に戻る。

天子ヶ岳の森の星空。中央低空に輝く明るい星が木星。

頭上に昇る北斗七星と春の大曲線

水平線が明るみ始め、薄明の始まった富士山
朝食をとって暖をとって夜明けを待つ。夕食の時に誤ってこぼした水がテントの隅でカチカチに凍りついていた。水平線が赤く染まって来たところで再びテントの外に出て日の出を待つ。昨日の夕暮れのように赤く染まるのを期待したが、この場所では日の出の角度が悪く、富士山の斜面にはあまり朝日が当たってくれなかった。

日の出前の富士山

日の出。この季節は天子ヶ岳からだと富士山に朝日が当たらない。
7時半、テント撤収し下山開始。ゆっくりと山を楽しみながら歩く。長者ヶ岳の先で田貫湖休暇村に下りる道があり、まだ歩いたことがなかったのでそちらを歩いてみた。こちらも整備の行き届いた道だった。これならば、夜中に歩くにも問題は無さそうだ。田貫湖のダイヤモンド富士は何度か撮影したが、まだ撮れていない山上からのダイヤモンド富士も見てみたいと思う。

朝の天子ヶ岳の森

長者ヶ岳から見る富士山

田貫湖湖畔から見る富士山

同上(いつもダブルダイヤモンド富士を撮影しているのがこのあたり。)
ラブジョイ彗星を追うのはおそらく今回が最後になると思う。山上からの撮影にこだわったが、結局富士山と一緒に最もまともに撮れたのは富士宮市白糸の滝付近から見上げたカットだった。貫ヶ岳、天子ヶ岳と2つの山上から彗星を狙ってわかったことだが、富士山の裏側にある御殿場から相模原、厚木、さらに川崎・横浜といった都会の町灯りが明る過ぎるために、山上から見るとその明りが富士山頂を越えて広がってしまっている。そのために、山の上から撮ると富士山頂付近の空の明るさに彗星の輝きが薄くなってしまっているようだ。むしろ見上げる富士山で光害の少ない空を狙ったほうが彗星は撮り易いのかもしれない。