風が無く穏やかな青空が広がったこの日、午後になっても甲府盆地からすっきりとした南アルプスと八ヶ岳の山並を望むことができた。冬とは言え、風が吹かずにこれほど空気が澄んでいる日は珍しい。時間は午後1時を過ぎたが、近場の山ならば今からでも登れそうだ。富士山を眺めるなら御坂山塊が良いが、黒岳は先週行った。車を走らせながら行く先を考え、登山口に一番早く到着できそうな釈迦ヶ岳に行くことにする。
先週は林道で苦労したが、数日間暖かい日が続いてアイスバーンが解けていることを期待したのだが、またしても途中で車がバックしているところに出くわす。先行していた車が昇れずにチェーンを装着しているところだったそうで、あきらめて戻って来たそうだ。その先は相変わらずのアイスバーンの坂だ。少し加速して坂に侵入する。アクセルを踏むとタイヤがスリップするが、止まったら最後バックして戻るしかない。ポンピングアクセルでなんとか登り切り、釈迦ヶ岳の登山口に到着した。車を回して路肩に止めようとしたが、これがまた大変なことになる。切り返してバックした際にハンドル操作不能となり、車が斜めになった状態でわだちをズルズルと車が滑って落ちてしまう。ハンドルも効かず、態勢を立て直すこともできずに斜めのままで20mほどバックしてようやく氷の解けた路面となり、そこで車を回して路肩に止めた。登山よりもスリルのある運転となってしまった。
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アイスバーンの道。車の後方20mほど先から斜めになったまま車が滑り落ちてきた。
そんなことがあって、出発は午後2時40分ごろとなってしまった。登山口からしばらくは登山道になっている林道歩きだが、ここもアイスバーンになっていて歩きにくいため軽アイゼンを装着した。ところが、10分も歩かないうちに日当たりの良い場所になり、そこは雪が解けて無くなっていた。コンクリートの道を歩きにくいアイゼンを装着したままテクテクと歩く。稜線までは雪はまばらにある程度だったが、積もった落葉の下には氷の塊が埋もれていた。
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登山道となっている林道もアイスバーンの道。アイゼン装着するがすぐに雪は無くなる。
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林道から見上げる釈迦ヶ岳。上にも雪は少なそうだ。
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斜面の雪はまばらだが・・・
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積もった落葉の下には氷の塊がゴロゴロしていた。
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1時間ほどで稜線に到着。
稜線に出ると再び雪が積もっていたがさほどの量では無かった。雪と岩のミックスをトレーニングのつもりで登るのを期待していたのだが、この先の岩場は日当たりが良く、全く雪は着いていなかった。1時間40分ほどかかって、午後4時20分、山頂に到着した。新しい踏み跡はあったが、既に誰もいない静かな山頂だ。
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ロープ1。
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ロープ2.いずれも雪無し。ちょっと残念。
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こんなところにサルオガゼ。
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山頂到着。もう日が陰り始めている。
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山頂から見る富士山
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山頂の夫婦地蔵。もうすぐ日没なのに富士山はすっきりと見えている。
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同上
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先週お邪魔した御坂黒岳
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夕暮れ迫る富士山
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夏は岩ゴロゴロの山頂も冬は雪で平らになって、テントを張って寝られる。(双子座流星群の時にここにテントを張って一夜を過ごしたことがある。)
日没迫る午後4時40分を過ぎた頃、風がぴたりと止んだ。西から湧いて来た雲がほとんど動かずに富士の裾で止まっている。時間が止まったかのようなこのひととき、自然と自分が一体化したようなこんな瞬間を皆さんは経験ことがあるだろうか?映像や言葉では表現できないようなこの感覚、これこそが私が山に登る一番の目的なのかも知れない。足元が明るいうちにさっさと下山、と思ったのだが、「もう少しゆっくりして行きなよ」と山の神様に引きとめられているようだった。
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残照の山頂と黒岳。左は三つ峠。
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南アルプスの左脇に赤い夕陽が沈んで行く。至福のひととき。
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南アルプス北部の山並。右から甲斐駒ケ岳、鳳凰山、北岳、間ノ岳、農鳥岳。
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展望台に場所を移動する。夕暮れの南アルプス。
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残照の富士山。この後少し風が吹き始め、富士山はあっという間に雲の中。
三脚を畳んでヘッドライトを装着し、5時10分過ぎに下山を開始する。尾根分岐点ですっかり日が暮れてヘッドライトを点灯する。林の中から見上げる空にはひときわ明るい木星が輝いていたが、それもすぐに雲の中に隠れてしまった。6時5分、駐車場に到着。ポンピングブレーキを踏みまくって加速しないように運転し、無事帰宅できた。
先日甲府駅前の焼鳥屋で以前から顔見知りの方と隣り合わせで話をする機会があった。その方も時々山に登っている人だが、ひょんなことから妖精の住む森の話になった。これはスライド上映会の時にこのテーマで厳冬の大室山ブナ林の中にテント泊して撮影に熱中した時の話だったが、本当に妖精か山の神様が住んでいるような空間に入ったことがあるというような話をしたところ、その方も山の林の中、神社の森の中でそんな経験をしたことがあるといことだった。時間が止まっているような、恐れつつも温かさがある空間、妖精とも魔物とも神様とも違う何かがいる、というよりも包まれている感覚というのが同じ見解だった。きっと、読者の皆さんにも同じような感覚を体験している方がいらっしゃるのではないだろうか?ちなみに単独で入山した時しかこの感覚を味わったことが無い。
先週は林道で苦労したが、数日間暖かい日が続いてアイスバーンが解けていることを期待したのだが、またしても途中で車がバックしているところに出くわす。先行していた車が昇れずにチェーンを装着しているところだったそうで、あきらめて戻って来たそうだ。その先は相変わらずのアイスバーンの坂だ。少し加速して坂に侵入する。アクセルを踏むとタイヤがスリップするが、止まったら最後バックして戻るしかない。ポンピングアクセルでなんとか登り切り、釈迦ヶ岳の登山口に到着した。車を回して路肩に止めようとしたが、これがまた大変なことになる。切り返してバックした際にハンドル操作不能となり、車が斜めになった状態でわだちをズルズルと車が滑って落ちてしまう。ハンドルも効かず、態勢を立て直すこともできずに斜めのままで20mほどバックしてようやく氷の解けた路面となり、そこで車を回して路肩に止めた。登山よりもスリルのある運転となってしまった。
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アイスバーンの道。車の後方20mほど先から斜めになったまま車が滑り落ちてきた。
そんなことがあって、出発は午後2時40分ごろとなってしまった。登山口からしばらくは登山道になっている林道歩きだが、ここもアイスバーンになっていて歩きにくいため軽アイゼンを装着した。ところが、10分も歩かないうちに日当たりの良い場所になり、そこは雪が解けて無くなっていた。コンクリートの道を歩きにくいアイゼンを装着したままテクテクと歩く。稜線までは雪はまばらにある程度だったが、積もった落葉の下には氷の塊が埋もれていた。
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登山道となっている林道もアイスバーンの道。アイゼン装着するがすぐに雪は無くなる。
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林道から見上げる釈迦ヶ岳。上にも雪は少なそうだ。
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斜面の雪はまばらだが・・・
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積もった落葉の下には氷の塊がゴロゴロしていた。
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1時間ほどで稜線に到着。
稜線に出ると再び雪が積もっていたがさほどの量では無かった。雪と岩のミックスをトレーニングのつもりで登るのを期待していたのだが、この先の岩場は日当たりが良く、全く雪は着いていなかった。1時間40分ほどかかって、午後4時20分、山頂に到着した。新しい踏み跡はあったが、既に誰もいない静かな山頂だ。
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ロープ1。
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ロープ2.いずれも雪無し。ちょっと残念。
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こんなところにサルオガゼ。
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山頂到着。もう日が陰り始めている。
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山頂から見る富士山
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山頂の夫婦地蔵。もうすぐ日没なのに富士山はすっきりと見えている。
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同上
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先週お邪魔した御坂黒岳
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夕暮れ迫る富士山
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夏は岩ゴロゴロの山頂も冬は雪で平らになって、テントを張って寝られる。(双子座流星群の時にここにテントを張って一夜を過ごしたことがある。)
日没迫る午後4時40分を過ぎた頃、風がぴたりと止んだ。西から湧いて来た雲がほとんど動かずに富士の裾で止まっている。時間が止まったかのようなこのひととき、自然と自分が一体化したようなこんな瞬間を皆さんは経験ことがあるだろうか?映像や言葉では表現できないようなこの感覚、これこそが私が山に登る一番の目的なのかも知れない。足元が明るいうちにさっさと下山、と思ったのだが、「もう少しゆっくりして行きなよ」と山の神様に引きとめられているようだった。
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残照の山頂と黒岳。左は三つ峠。
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南アルプスの左脇に赤い夕陽が沈んで行く。至福のひととき。
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南アルプス北部の山並。右から甲斐駒ケ岳、鳳凰山、北岳、間ノ岳、農鳥岳。
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展望台に場所を移動する。夕暮れの南アルプス。
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残照の富士山。この後少し風が吹き始め、富士山はあっという間に雲の中。
三脚を畳んでヘッドライトを装着し、5時10分過ぎに下山を開始する。尾根分岐点ですっかり日が暮れてヘッドライトを点灯する。林の中から見上げる空にはひときわ明るい木星が輝いていたが、それもすぐに雲の中に隠れてしまった。6時5分、駐車場に到着。ポンピングブレーキを踏みまくって加速しないように運転し、無事帰宅できた。
先日甲府駅前の焼鳥屋で以前から顔見知りの方と隣り合わせで話をする機会があった。その方も時々山に登っている人だが、ひょんなことから妖精の住む森の話になった。これはスライド上映会の時にこのテーマで厳冬の大室山ブナ林の中にテント泊して撮影に熱中した時の話だったが、本当に妖精か山の神様が住んでいるような空間に入ったことがあるというような話をしたところ、その方も山の林の中、神社の森の中でそんな経験をしたことがあるといことだった。時間が止まっているような、恐れつつも温かさがある空間、妖精とも魔物とも神様とも違う何かがいる、というよりも包まれている感覚というのが同じ見解だった。きっと、読者の皆さんにも同じような感覚を体験している方がいらっしゃるのではないだろうか?ちなみに単独で入山した時しかこの感覚を味わったことが無い。