山梨百名山から見る風景

四方を山に囲まれた山梨県。私が愛して止まない山梨の名峰から見る山と花と星の奏でる風景を紹介するページです。

尾白川錦滝のユキワリソウと尾白川上流のクモイコザクラ  そして帰り路、えらいことに・・・

2014年05月20日 | 南アルプス
 この季節は恒例になっている錦滝のユキワリソウ。いつもならば日向山登山とセットなのだが、今回はもう6~7年も前に一度だけ訪れ、偶然に発見したクモイコザクラがその後どうなっているのか見に行ってみることにした。時間的・体力的な余裕があれば上流の噴水滝あたりまで行ってみたいのだが、ちょっと難しそうだ。

 仕事を片付けて矢立石の日向山登山口に到着したのは11時半。人気の高い日向山だけに駐車場は当然満車だが、ゲート近くの道脇になんとか止めることができた。まずは錦滝に向かう。


    林道脇に車がずらりと並ぶ日向山登山口の矢立石。


    林道がら望む新緑と甲斐駒ケ岳


    尾白川錦滝。雪の影響か滝壺周辺には木の枝が散乱している。

 40分ほどで錦滝に到着し、三脚を出して存分に撮影する。この滝に陽が当たるのは午前中なので、お昼過ぎのこの時間に行くと既に日蔭になってしまい、ユキワリソウの色がいまひとつになってしまう。ここはやはり午前中が良い。


    滝の脇に咲いたユキワリソウ


    200mm望遠レンズを今回は持って行った。


    斜め横側に移動して撮影


    200mm望遠レンズは三脚でしっかり固定してもなかなか撮影が難しい。


    滝の流れとユキワリソウ

 錦滝で30分ほど時間を費やし、時間は午後1時になってしまう。この日は日向山に登らずそのまま真直ぐ林道を進み、林道の終点まで行く。途中落石したところもあるが、通行するには全く問題無い。


    大きな岩が崩落している。ところどころ道は荒れている。


    鞍掛橋。一つ目のトンネルを過ぎるとすぐ先にあり、下に深い谷を望む。これが鞍掛沢と思っていたがそうではなかった。


    2つ目のトンネル。入り口が崩落している。


    黒戸尾根の黒戸山が間近に見えるようになる。


    林道終点。この先が崖のような激下り。


    崖のような激下り。長いロープにつかまりながら下りる。


    河原に降り立つ。ここに来る人は沢登りのスペシャリストか釣り人くらい。一般の登山者はまず来ない。


    谷の向こうに見えるのは鞍掛山の尾根。

 尾白川上流の谷に降り立ったのは午後2時、ほぼ予定通りだった。谷を少し遡上して対岸の岩壁を見ると、以前訪れた時と同じように、あるいはその時以上にたくさんのピンク色の花がついている。クモイコザクラだ。ほとんど人が入らない谷、しかも動物が近付けない岩壁に咲くその花は、人害も動物の食害も受けること無く静かに咲いてくれている。


    対岸の岩にピンク色の花が散在している。


    尾白川上流に咲くクモイコザクラ。かなりたくさん咲いている。


    200mm望遠レンズで捉えたクモイコザクラ

 ここまではきわめて順調だった。帰り時間を考えてギリギリ3時半まで遡上しようと思い、上流に向かうがすぐに大きな淵に突き当たってしまう。手前で渡渉すれば通過は難しくないが、膝あたりまで水に入らないと渡渉できなそうだ。強引に右側(左岸)の岩を越えて淵の上まで行ってみたが、やはり足を濡らさずに遡上することは困難だ。ここであきらめて引き返すことにする。そして、左足だけ犠牲にして、下流の浅いところで渡渉してクモイコザクラの咲く対岸の岩壁まで行くことにする。


    大きな淵に出る。膝下まで濡らさないと渡渉できない。


    左岸の岩を越えて淵の上まで行ってみたが、やはり濡れずに遡上することは困難。ここであきらめる。


    片足を犠牲にして対岸に渡る。いまにも崩落しそうな岩の下にクモイコザクラがたくさん咲いている。


    クモイコザクラ


    風に揺れるクモイコザクラ


    クモイコザクラ


    200mm望遠レンズで接写


    岩壁に咲くクモイコザクラ


 十分に撮影して満足して帰路に着く。時間は午後3時半を過ぎたばかり、明るいうちに楽勝で矢立石に到着できるはず・・・だった。谷に下りる時にロープの無くなった下部の部分が踏み跡少なく迷いそうだと思っていたのだが、帰りで見事にその心配が当たってしまう。登り口と思って登り始めたところ、ロープのあるはずの高度まで登ってもロープが見当たらない。行き過ぎたのか?上にトラバースしながら上流側に行くがそちらにはロープ無し。ならば下流側しかあり得ないので、急斜面を獣道を頼りにトラバースしながら登って行くが、それらしきものは見当たらない。やがて本物の崖のような斜面に突き当たってしまい。トラバース不能となってしまう。時間は午後4時、まだ日暮れには余裕があるが、なんとか5時までには林道に出たい。登るか、河原まで降りるか?急斜面は降りるほうが遥かに難しいので、この崖のような斜面は上を巻いて通過することにした。木の根っこや枝につかまりながらひたすら登る。標高は1,500mを越えて、既に林道から100m以上高い位置にいる。何故かこんな道の無いところでも、岩に赤ペンキが着いていたりして、どうやらかつては林業作業が行われていたらしい。
 急斜面を登り着くと平らな開けた場所に出た。そこからはやや緩い斜面となって尾根にたどり着いた。籔尾根だが、そのまま登って行けばおそらくは鞍掛山に至る尾根だ。方向を右に変えて尾根の急斜面を下りると、その先には隣の山とのギャップがあり、その谷間は急ではあるがなんとか下りられそうだった。またしても木の根や倒木につかまりながら急斜面を下りるが、なかなか林道らしきものが見えてこない。最悪の場合はツエルトでのビバークを考えながら下りて行くと、鈴の鳴る音が聞こえてきた。そして、下に林道を歩いて行く人の姿が見えた。しかし、安心するのはまだ早く、林道への最後の下降には身長の高さに近い岩壁があった。都合良く倒木があったので、これにつかまって岩壁を滑り落ちて通過し、ようやく林道に降り立った。時間は4時40分、楽勝で明るいうちに駐車場に戻れる時間だ。


    崖に近い急斜面をひたすら登り切ると、平らな所に出た。かつての林業作業の跡地のように見える。


    尾根まで登る。籔尾根だが、ここを登って行けば鞍掛山に至るはず。山梨県の某山岳会でここを登った人たちがいる。


    反対側の斜面を激下り。ザイルを持ってこなかったのは失敗だったが、こうなることは全く予想していなかった。


    林道に下り着く。下に人の姿が見える。倒木にぶら下がるようにして岩場を降りる。


    下って来た谷間を振り返る。籔歩きトレーニングの成果が出て、無事帰還。


 降り立ったところは尾白隧道というトンネルの上流側だった。後に地図で確認したが、この尾根は鞍掛山に至る尾根で間違いなかった。ちょっと取り付き口だけ下見してみようとは思っていたのだが、まさかルートを見失って尾根まで登ってしまうとは思わなかった。谷での落石に備えてヘルメットを持って行ったのが少しは気休めになった。林道をゆっくり歩いて午後5時50分、明るいうちに駐車場に到着できた。

 錦滝のサクラソウは今年の花付きは良いとはいえない。クモイコザクラは増えているように見えるが、ずいぶん前の事なので記憶が定かではない。毎年咲いてくれていることは間違い無さそうだ。ルートを見失いとんだことにはなったが、全く焦ることなく対処できるようになった自分が少しだけ成長したように思えた。
コメント (6)
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