鹿の保護柵でこの山が囲われて3年ほどになるだろうか。今年の大雪で柵がだいぶ破損し、修理が大変だったという話を耳にした。昨年は6月下旬にこの山を訪れ、キンポウゲがだいぶ咲いているのを見たが、まだ植生の再生というには程遠い状態だった。今回は山岳レインジャー調査のためにこの山を訪れることとなり、しかもリーダーという大任を仰せつかった。昨年の状況から想像するに、おそらくはあまり見るべきものは無いだろうと全く期待はしていなかった。しかし・・・!
今回のコースは昨年新しく出来上がった池の茶屋からアヤメ平に至る新ルートをどんなものなのか歩いてみることにした。参加メンバーは5人だったが、池の茶屋の駐車場に到着するとそのすぐ後ろから櫛形山登頂回数がもうすぐ300回という同じ山岳会所属の秋山さんが友人を連れてやって来た。今回の山行には都合で行けないはずだったのだが、予定が変わってたまたまこちらのコースにやって来たら我らレインジャーメンバーとばったり出くわしたのだ。櫛形山を知り尽くしたこの方がいれば鬼に金棒、この山に咲く花についても知り尽くしており、50年もこの山に登っていて、山の変化も花の咲いていた場所も知り尽くしている。あとはこの方の後ろに付いて行くだけだ。

コース入り口に立つ案内板。赤い新ルートを行く。

南アルプス展望台までは車椅子でも行けるように設計されている。

植生保護ネットが張られた斜面。いずれは青々とした草が茂ることだろう。

道脇の林の中にあったセンジュガンピ。

北岳展望台に到着。

この日はあいにくの天気。北岳は見えない。

小さな花、タニギキョウ。

ヨツバムグラ?

ゆっくり歩いて1時間ほどで休憩所に到着。
1時間ほどで休憩所に到着した。高度計は1,950mあたりを指していたが、この先のモミジ谷まではぐっと高度差200m以上の下りになる。モミジ谷からまた200mほど登り返して、高度1,900mほどのアヤメ平に至るが、道は大変良く整備されておりさほどの急登も無い。休憩所から2時間ほど歩いてアヤメ平に到着した。案内板のコースタイムでは2時間半だが、そこを3時間かけて歩いたことになる。

休憩所下に咲いていた赤みがかったイチヤクソウ。

モミジ谷まではぐっと標高差200m以上下る。

たくさん生えていた、なんだかわからない葉っぱ。

ミヤマカラマツ

アヤメ平直下はサルオガゼの森。

この山では消滅したと思っていたヒメムヨウランに出会えた。

種になりかけているヒメムヨウラン。

保護柵の張られたアヤメ平に到着。柵の中と外の植生の違いに注目。

保護柵の外。徹底的に鹿に食べつくされている。

保護柵の中。ミヤマキンポウゲやタカネグンナイフウロなどの花がたくさん咲く。
保護柵で囲まれたアヤメ平の草地を歩いて驚いた。昨年とはかなり違った風景が広がっている。キンポウゲがたくさん咲いているがそれに混じってタカネグンナイフウロ、ミヤマオダマキがたくさん、そしてテガタチドリとキソチドリが驚くほどたくさん咲いていた。ラン科の植物が増えてきたということは草地が元気を取り戻して保湿が保たれてきたということだ。レインジャー調査の特権でロープの中の草地に入らせてもらい、中を調査してみると、もう枯れて絶えただろうと思っていたあの草の葉も見つけることができた。

復活、ミヤマキンポウゲ。9年前の初めてこの山を訪れた時の景色に近くなってきた。

テガタチドリはあちらこちらにたくさん咲いている。

キソチドリ。草地が元気を取り戻した証拠。

最初はトンボソウかと思ったが、茎に葉がついており、やはりキソチドリ。トンボソウの葉は根元に2枚葉が出る。

キンポウゲの中にテガタチドリが混ざる。

完全に鹿が排除できたわけでは無いようで、ヤナギランはことごとく食べられていた。

ノコギリソウ

もうすぐ咲きそうなコウリンカ

キバナノヤマオダマキ大群落

大株のギンリョウソウ

茎と葉に毛が生えているこの葉はきっとあの草。あと数年で咲いてくれそうだ。
アヤメ平の避難小屋前で昼食をとり、他に数か所の調査を行って裸山に向かう。途中の登山道周辺の草地は花の無い草地と化していたが、保護柵が設置されている裸山の柵の中をのぞき込んでまたまたビックリ。昨年とは全く違う光景が広がっていた。アヤメが増えてはいるが、それ以上に驚いたのはびっしりと生えたテガタチドリの多さだ。これほどたくさんのテガタチドリが生えた草地は見たことが無い。柵の無い反対側の斜面とは全く違う景色で、明らかに植生が回復している。保護柵の効果がいかに絶大なものか、そしてかつての櫛形山がいかに植生豊かな山だったかをうかがい知ることができる。

裸山。左側の斜面はアヤメ平よりも先に保護柵が設置された場所。

保護柵の中はアヤメも再生しつつあるが、驚くほどのテガタチドリが咲く。

テガタチドリ、アヤメ、グンナイフウロ、キバナノヤマオダマキ、ヤマハハコなどが咲きほこる裸山の柵の中。

柵に囲われていない反対側の斜面とは対照的。保護柵の効果は絶大だ。

アヤメも少しずつ増えているように見受けられる。

明らかに再生されつつある櫛形山。これからが楽しみになってきた。
思いもよらなかったお花畑に感激した後、山頂を目指す。この先は大きなカラマツが林立する原生林が広がる。青々とした苔がだいぶ減退したように見えるが、それでもここの原生林は太古の自然の景色をそのまま伝えているようで凄い。

推定樹齢300年のカラマツ。秋山さん曰く、「50年前から樹齢300年の看板がついている」

櫛形山原生林

苔の生す森

櫛形山山頂で記念撮影。
櫛形山山頂から池の茶屋の駐車場までは約45分の行程だ。ずっと下りと思っていたが隣のピークに登り返しがあり、その上には櫛形山の三角点が立っていた。初めて歩いたこのコース、標柱点と三角点が別にあることを初めて知った。

池の茶屋側の登山道斜面を振り返る。かつてはこの草地も高山植物が咲き誇る凄いお花畑が広がっていたそうだ。

途中に富士山の展望地がある。

ハリブキと赤い実

池の茶屋付近の保護柵の中に咲いていたセンジュガンピ。

池の茶屋の小屋に到着。向こうが駐車場。
コースタイムでは1周5時間のところを7時間かけて歩き、3時半に池の茶屋駐車場に到着した。
私の中ではもはや死んだ山と思っていた櫛形山だったが、それは間違いで、保護柵の効果が現れて確実に山の植生が再生されていることを知った。おそらく数年後にはあの黄色い稀少種が咲いてくれることだろう。またひとつ、毎年通うことになりそうな楽しみな山が増えた。
今回のコースは昨年新しく出来上がった池の茶屋からアヤメ平に至る新ルートをどんなものなのか歩いてみることにした。参加メンバーは5人だったが、池の茶屋の駐車場に到着するとそのすぐ後ろから櫛形山登頂回数がもうすぐ300回という同じ山岳会所属の秋山さんが友人を連れてやって来た。今回の山行には都合で行けないはずだったのだが、予定が変わってたまたまこちらのコースにやって来たら我らレインジャーメンバーとばったり出くわしたのだ。櫛形山を知り尽くしたこの方がいれば鬼に金棒、この山に咲く花についても知り尽くしており、50年もこの山に登っていて、山の変化も花の咲いていた場所も知り尽くしている。あとはこの方の後ろに付いて行くだけだ。

コース入り口に立つ案内板。赤い新ルートを行く。

南アルプス展望台までは車椅子でも行けるように設計されている。

植生保護ネットが張られた斜面。いずれは青々とした草が茂ることだろう。

道脇の林の中にあったセンジュガンピ。

北岳展望台に到着。

この日はあいにくの天気。北岳は見えない。

小さな花、タニギキョウ。

ヨツバムグラ?

ゆっくり歩いて1時間ほどで休憩所に到着。
1時間ほどで休憩所に到着した。高度計は1,950mあたりを指していたが、この先のモミジ谷まではぐっと高度差200m以上の下りになる。モミジ谷からまた200mほど登り返して、高度1,900mほどのアヤメ平に至るが、道は大変良く整備されておりさほどの急登も無い。休憩所から2時間ほど歩いてアヤメ平に到着した。案内板のコースタイムでは2時間半だが、そこを3時間かけて歩いたことになる。

休憩所下に咲いていた赤みがかったイチヤクソウ。

モミジ谷まではぐっと標高差200m以上下る。

たくさん生えていた、なんだかわからない葉っぱ。

ミヤマカラマツ

アヤメ平直下はサルオガゼの森。

この山では消滅したと思っていたヒメムヨウランに出会えた。

種になりかけているヒメムヨウラン。

保護柵の張られたアヤメ平に到着。柵の中と外の植生の違いに注目。

保護柵の外。徹底的に鹿に食べつくされている。

保護柵の中。ミヤマキンポウゲやタカネグンナイフウロなどの花がたくさん咲く。
保護柵で囲まれたアヤメ平の草地を歩いて驚いた。昨年とはかなり違った風景が広がっている。キンポウゲがたくさん咲いているがそれに混じってタカネグンナイフウロ、ミヤマオダマキがたくさん、そしてテガタチドリとキソチドリが驚くほどたくさん咲いていた。ラン科の植物が増えてきたということは草地が元気を取り戻して保湿が保たれてきたということだ。レインジャー調査の特権でロープの中の草地に入らせてもらい、中を調査してみると、もう枯れて絶えただろうと思っていたあの草の葉も見つけることができた。

復活、ミヤマキンポウゲ。9年前の初めてこの山を訪れた時の景色に近くなってきた。

テガタチドリはあちらこちらにたくさん咲いている。

キソチドリ。草地が元気を取り戻した証拠。

最初はトンボソウかと思ったが、茎に葉がついており、やはりキソチドリ。トンボソウの葉は根元に2枚葉が出る。

キンポウゲの中にテガタチドリが混ざる。

完全に鹿が排除できたわけでは無いようで、ヤナギランはことごとく食べられていた。

ノコギリソウ

もうすぐ咲きそうなコウリンカ

キバナノヤマオダマキ大群落

大株のギンリョウソウ

茎と葉に毛が生えているこの葉はきっとあの草。あと数年で咲いてくれそうだ。
アヤメ平の避難小屋前で昼食をとり、他に数か所の調査を行って裸山に向かう。途中の登山道周辺の草地は花の無い草地と化していたが、保護柵が設置されている裸山の柵の中をのぞき込んでまたまたビックリ。昨年とは全く違う光景が広がっていた。アヤメが増えてはいるが、それ以上に驚いたのはびっしりと生えたテガタチドリの多さだ。これほどたくさんのテガタチドリが生えた草地は見たことが無い。柵の無い反対側の斜面とは全く違う景色で、明らかに植生が回復している。保護柵の効果がいかに絶大なものか、そしてかつての櫛形山がいかに植生豊かな山だったかをうかがい知ることができる。

裸山。左側の斜面はアヤメ平よりも先に保護柵が設置された場所。

保護柵の中はアヤメも再生しつつあるが、驚くほどのテガタチドリが咲く。

テガタチドリ、アヤメ、グンナイフウロ、キバナノヤマオダマキ、ヤマハハコなどが咲きほこる裸山の柵の中。

柵に囲われていない反対側の斜面とは対照的。保護柵の効果は絶大だ。

アヤメも少しずつ増えているように見受けられる。

明らかに再生されつつある櫛形山。これからが楽しみになってきた。
思いもよらなかったお花畑に感激した後、山頂を目指す。この先は大きなカラマツが林立する原生林が広がる。青々とした苔がだいぶ減退したように見えるが、それでもここの原生林は太古の自然の景色をそのまま伝えているようで凄い。

推定樹齢300年のカラマツ。秋山さん曰く、「50年前から樹齢300年の看板がついている」

櫛形山原生林

苔の生す森

櫛形山山頂で記念撮影。
櫛形山山頂から池の茶屋の駐車場までは約45分の行程だ。ずっと下りと思っていたが隣のピークに登り返しがあり、その上には櫛形山の三角点が立っていた。初めて歩いたこのコース、標柱点と三角点が別にあることを初めて知った。

池の茶屋側の登山道斜面を振り返る。かつてはこの草地も高山植物が咲き誇る凄いお花畑が広がっていたそうだ。

途中に富士山の展望地がある。

ハリブキと赤い実

池の茶屋付近の保護柵の中に咲いていたセンジュガンピ。

池の茶屋の小屋に到着。向こうが駐車場。
コースタイムでは1周5時間のところを7時間かけて歩き、3時半に池の茶屋駐車場に到着した。
私の中ではもはや死んだ山と思っていた櫛形山だったが、それは間違いで、保護柵の効果が現れて確実に山の植生が再生されていることを知った。おそらく数年後にはあの黄色い稀少種が咲いてくれることだろう。またひとつ、毎年通うことになりそうな楽しみな山が増えた。