素晴らしい天気と眺望に恵まれた甲斐駒ヶ岳山頂,下山するのがもったいないような景色だ.無事に予定した撮影を終えて休憩していると鋸岳側の登山道を登って来た9人ほどのグループが山頂にやって来た.そういえば数日前に立ち寄った甲府駅前の喫茶店で1泊2日で釜無林道から鋸岳を超えてテント泊し,甲斐駒を超えて黒戸尾根を下山するという学心会という山岳会の山行があると聞いていた.予想では黒戸尾根7合目あたりで抜かれるだろうと思っていたのだが,まさか・・・とメンバーの顔を見に行くと,まさに学心会の人たちだった.前日は鋸岳を超えて中の川乗越でテント泊したそうで,まだ9時前だというのにもう甲斐駒ケ岳まで登りついてきた.足が速いとは聞いていたがまさかここまで速いとは驚いた.山頂での記念撮影を買って出て先に黒戸尾根を下山し始めるが,9合目まで着かないうちにあっという間に追い抜かれた.
9合目の鉄拳が刺さる岩を入れた景色は黒戸尾根の中でも屈指の撮影場所であるが,残念ながら到着したころには既に雲が湧き富士山は隠れてしまっていた.その先の急傾斜の鎖場は初心者にとってはかなり厳しい場所だろう.そろそろ足に疲れがたまっている頃だろうから,カメラマンの三脚は私が担ぐことにする.念のため10mザイルを携帯してきたが,ザイルを出さずになんとか鎖場を通過して8合目の御來迎場に到着した.雲がかかって見えなくなっていた甲斐駒ケ岳だったが,8合目ではなんとか姿を現してくれた.

黒戸尾根側の山頂神社.さて,下山開始.

神社のところに咲いていたシラネヒゴタイ(キク科トウヒレン属).よく似たタカネヒゴタイとの違いは頭花の数が1~2個で総苞が黒いこと.

ただの岩・・・ではなくて石仏.

9合目,左に鉄拳の刺さる岩がある.黒戸尾根の中で屈指のビューポイント.残念ながら富士山は雲に巻かれてしまった.

9合目の急傾斜鎖場.無事に通過できた.

ミヤマアキノキリンソウ(キク科アキノキリンソウ属)とトリアシショウマ(ユキノシタ科チダケサシ属).

ミヤマダイモンジソウ.向こうにちらりと甲斐駒ケ岳が見えたが映らず.

ミヤマダイモンジソウ(ユキノシタ科ユキノシタ属). ダイモンジソウとの違いは葉や花茎に毛が無いこと.

ミヤマダイコンソウ(バラ科ダイコンソウ属)

同上

8合御來迎場.なんとか甲斐駒ケ岳が見えてくれた.

下に見えるこんもりした山が黒戸山.下山はまだ始まったばかりだ.

七丈小屋テント場付近に咲いていたミソガワソウ(シソ科イヌハッカ属).花が大きくラショウモンカズラかと思ったが,葉の形,花期とも違う.
11時半七丈小屋に到着し,昼食となる.持って行ったアルファ米の牛丼を作って食べるが量が足りないのでパンやソイジョイなどを食べて補う.12時過ぎに七丈小屋を出発し,順調に行けばここから6時間あれば下山できるだろうと見ていたが,そうは行かないのが登山である.5合目までは鎖場やハシゴ場が連続する急峻な道が続く.カメラマンの膝を心配していたがガクガクで力が入らないという状況にはなっていないようだ.5合目小屋跡から黒戸山への辛い登りを過ぎ,4合目の刃利天狗という神社を撮影して本日の予定していた撮影場所は全てクリアである.休憩していると,黒戸尾根を日帰りして下山してきた滋賀県からやって来た若者が私たちと合流して一緒に下山してくれることとなった.

甲斐駒ケ岳は信仰の山で,黒戸尾根はかつての巡礼の道である.随所に石碑や石仏,鉄拳が置かれている.

鉄拳

石碑

5合目にある神社

石碑とセリバシオガマ(ハマウツボ科シオガマギク属).

4合目刃利天狗神社.
若者は足を捻挫したそうで,足の遅い我々に付き合って下山してくれることとなった.刃利天狗の先にある刃渡りの難所は天候に恵まれてスリップする心配はほとんど無く,簡単に通過できた.時間よりも疲れに配慮しつつ,40分~50分に一度のペースで休憩しつつ,ピッチを上げることなく歩くがさすがに初心者のカメラマンは辛そうである.足の裏が痛いというので見てみると豆が出来始めているところだった.絆創膏を貼って応急処置をする.さらに1時間少々歩いたところで今度は反対の足裏と小指が痛いという.見てみると小指のところは豆がつぶれて皮膚が剥げてしまっている.これでは痛くて歩けない.カテリーパッドという大き目の絆創膏を貼りテープで固定する.反対側も予防的に同じ処置を施すが,これだけでは痛みは治まらないだろう.履き慣れていない登山靴がまだ足に馴染んでいなかったようだ.同行してくれた若者がストックを1本貸してくれ,ダブルストックでなんとか騙しながら下山することとなるが,このダブルストックが意外と効果があったようでその先は比較的順調に歩くことが出来た.
横手との分岐を過ぎたところで時間は6時半を過ぎ,ヘッドライトを装着する.暗闇を歩くのには慣れている私だが,人を連れて歩くことはあまり無い.持参したGPSで位置を確認しつつ,足元に注意を促しつつ黙々と下山し,すっかり暗くなった7時15分,竹宇駒ヶ岳神社に到着した.無事に下山できたことを感謝して神社に手を合わせた.
下山途中でいくつか珍しい植物に出会うことができた.

シダにしてはちょっと変わった葉だなと思っていたら花が咲き残っていた.八ヶ岳でしかお目にかかったことが無かったオサバグサ(ケシ科オサバグサ属).

これほどたくさん咲いているのは初めて見た.コイチヨウラン(ラン科イチヨウラン属).

コイチヨウラン

いちばん驚いたのがこれ.茎が茶色い二葉蘭,ミヤ・マ・フタバ・ラン(ラン科フタバ・ラン属).

角度を変えて.

こちらが図鑑に載っている黄色っぽい花の株.
想定していた以上に大変な山行となってしまった甲斐駒ケ岳だったが,予定していた映像はおそらく撮影に成功したことと思う.私のほうとしても,コフタバ,タカネ,ミヤマと3種類のコフタバラン属に出会えた充実した山行となった.日本に5種類あるコフタバラン属のうち4種類に出会えたこととなり,残りは姫だけになった.山梨県内で姫に出会うのは難しいかも知れないが,隣の県まで足を延ばせばさほど出会うのは難しくないだろう.来年でも会いに行ってみよう.
9合目の鉄拳が刺さる岩を入れた景色は黒戸尾根の中でも屈指の撮影場所であるが,残念ながら到着したころには既に雲が湧き富士山は隠れてしまっていた.その先の急傾斜の鎖場は初心者にとってはかなり厳しい場所だろう.そろそろ足に疲れがたまっている頃だろうから,カメラマンの三脚は私が担ぐことにする.念のため10mザイルを携帯してきたが,ザイルを出さずになんとか鎖場を通過して8合目の御來迎場に到着した.雲がかかって見えなくなっていた甲斐駒ケ岳だったが,8合目ではなんとか姿を現してくれた.

黒戸尾根側の山頂神社.さて,下山開始.

神社のところに咲いていたシラネヒゴタイ(キク科トウヒレン属).よく似たタカネヒゴタイとの違いは頭花の数が1~2個で総苞が黒いこと.

ただの岩・・・ではなくて石仏.

9合目,左に鉄拳の刺さる岩がある.黒戸尾根の中で屈指のビューポイント.残念ながら富士山は雲に巻かれてしまった.

9合目の急傾斜鎖場.無事に通過できた.

ミヤマアキノキリンソウ(キク科アキノキリンソウ属)とトリアシショウマ(ユキノシタ科チダケサシ属).

ミヤマダイモンジソウ.向こうにちらりと甲斐駒ケ岳が見えたが映らず.

ミヤマダイモンジソウ(ユキノシタ科ユキノシタ属). ダイモンジソウとの違いは葉や花茎に毛が無いこと.

ミヤマダイコンソウ(バラ科ダイコンソウ属)

同上

8合御來迎場.なんとか甲斐駒ケ岳が見えてくれた.

下に見えるこんもりした山が黒戸山.下山はまだ始まったばかりだ.

七丈小屋テント場付近に咲いていたミソガワソウ(シソ科イヌハッカ属).花が大きくラショウモンカズラかと思ったが,葉の形,花期とも違う.
11時半七丈小屋に到着し,昼食となる.持って行ったアルファ米の牛丼を作って食べるが量が足りないのでパンやソイジョイなどを食べて補う.12時過ぎに七丈小屋を出発し,順調に行けばここから6時間あれば下山できるだろうと見ていたが,そうは行かないのが登山である.5合目までは鎖場やハシゴ場が連続する急峻な道が続く.カメラマンの膝を心配していたがガクガクで力が入らないという状況にはなっていないようだ.5合目小屋跡から黒戸山への辛い登りを過ぎ,4合目の刃利天狗という神社を撮影して本日の予定していた撮影場所は全てクリアである.休憩していると,黒戸尾根を日帰りして下山してきた滋賀県からやって来た若者が私たちと合流して一緒に下山してくれることとなった.

甲斐駒ケ岳は信仰の山で,黒戸尾根はかつての巡礼の道である.随所に石碑や石仏,鉄拳が置かれている.

鉄拳

石碑

5合目にある神社

石碑とセリバシオガマ(ハマウツボ科シオガマギク属).

4合目刃利天狗神社.
若者は足を捻挫したそうで,足の遅い我々に付き合って下山してくれることとなった.刃利天狗の先にある刃渡りの難所は天候に恵まれてスリップする心配はほとんど無く,簡単に通過できた.時間よりも疲れに配慮しつつ,40分~50分に一度のペースで休憩しつつ,ピッチを上げることなく歩くがさすがに初心者のカメラマンは辛そうである.足の裏が痛いというので見てみると豆が出来始めているところだった.絆創膏を貼って応急処置をする.さらに1時間少々歩いたところで今度は反対の足裏と小指が痛いという.見てみると小指のところは豆がつぶれて皮膚が剥げてしまっている.これでは痛くて歩けない.カテリーパッドという大き目の絆創膏を貼りテープで固定する.反対側も予防的に同じ処置を施すが,これだけでは痛みは治まらないだろう.履き慣れていない登山靴がまだ足に馴染んでいなかったようだ.同行してくれた若者がストックを1本貸してくれ,ダブルストックでなんとか騙しながら下山することとなるが,このダブルストックが意外と効果があったようでその先は比較的順調に歩くことが出来た.
横手との分岐を過ぎたところで時間は6時半を過ぎ,ヘッドライトを装着する.暗闇を歩くのには慣れている私だが,人を連れて歩くことはあまり無い.持参したGPSで位置を確認しつつ,足元に注意を促しつつ黙々と下山し,すっかり暗くなった7時15分,竹宇駒ヶ岳神社に到着した.無事に下山できたことを感謝して神社に手を合わせた.
下山途中でいくつか珍しい植物に出会うことができた.

シダにしてはちょっと変わった葉だなと思っていたら花が咲き残っていた.八ヶ岳でしかお目にかかったことが無かったオサバグサ(ケシ科オサバグサ属).

これほどたくさん咲いているのは初めて見た.コイチヨウラン(ラン科イチヨウラン属).

コイチヨウラン

いちばん驚いたのがこれ.茎が茶色い二葉蘭,ミヤ・マ・フタバ・ラン(ラン科フタバ・ラン属).

角度を変えて.

こちらが図鑑に載っている黄色っぽい花の株.
想定していた以上に大変な山行となってしまった甲斐駒ケ岳だったが,予定していた映像はおそらく撮影に成功したことと思う.私のほうとしても,コフタバ,タカネ,ミヤマと3種類のコフタバラン属に出会えた充実した山行となった.日本に5種類あるコフタバラン属のうち4種類に出会えたこととなり,残りは姫だけになった.山梨県内で姫に出会うのは難しいかも知れないが,隣の県まで足を延ばせばさほど出会うのは難しくないだろう.来年でも会いに行ってみよう.