山梨百名山から見る風景

四方を山に囲まれた山梨県。私が愛して止まない山梨の名峰から見る山と花と星の奏でる風景を紹介するページです。

カモメっちの花保護作戦  平成29年5月31日

2017年06月01日 | 番外編
 年々数を減らしているように見える御坂山塊某山の空飛ぶランだが、一部盗掘もあったと聞くが昨年見に行った様子では踏み倒しも目立っていた。それよりももっと深刻なのはこの山の環境の変化である。10年ほど前に初めて訪れたこの山は直下の斜面がお花畑になっていて、カイフウロやアザミ、タムラソウ、ミヤマオダマキなどがたくさん咲いていたはずである。しかし、今ではテンニンソウのはびこる斜面と化し、さらにそのテンニンソウまでが鹿に食べられている。レンゲショウマも数を減らし、大群落があったユキザサも姿を消してしまった。そして始まってしまったのが下草が減少することによって起こる山肌の乾燥化である。シカの食害を受けている山のほとんどがこのような環境の変化を受けているであろう。この山はまだ笹が繁殖していないから良いものの、もし笹がはびこり始めるとあっという間に笹薮の山と化し、もはや植生の復元は困難となってしまうだろう。

 そのような山の環境の変化によってラン科植物は共生する菌の衰退を招き数を減らすこととなってしまう。今回のカモメっち保護作戦は根本的にはこの環境の変化に対応できるものではない。しかし、少ない範囲でも囲ってあげることによって、その場所だけでも食害から逃れることができ、人の踏み荒らしにも対応できるかも知れない。個人でできることはわずかではあるが、それでもやらないよりはやったほうが遥かにましだろう。本年4ヶ所目の保護柵設置に向かう。


    本日の荷物。1.5mポール30本と保護ネット約50m、ペグ20本、その他設置用の小道具類。


    ミツバツツジが満開だが、今年は花付が悪いようで、まともに咲いていたのはこの木だけだった。


    下草がわずかしか生えず山肌が乾燥したこの環境が花の衰退する大きな原因になっていると考えている。


    このデコボコはイノシシの掘り返した痕跡。いつ花のある場所がやられるかわからない。


    昨年設置した保護ロープだが、一応の効果はあるようで、葉がだいぶ出ている。


    もうすぐ咲きそうなカモメっち。


    しかし、群落内に出来てしまったこの踏み跡は改善する兆しが無い。

 今回保護ネット設置の予定個所は2ヶ所である。7~8か所に分散して群落を形成しているこの花だが、とてもではないが一人で囲いきれるものではない。とりあえずは株数が比較的多く、昨年の踏み跡が目立った2か所を囲うことにする。


    予定地に到着。ここには50株ほど葉が出ている。


    数株はもう数日のうちに咲きそうである。


    3時間弱の作業で設置完了。


    さらにもう1ケ所。しかしこちらはタイムリミットとなってしまい、作業は不完全のまま下山となる。

 午後から出かけたこの作業は、時間との戦い、夕方7時から自然保護グループの会合が入っていて行事の打ち合わせのために出席しなければならない。移動時間を考えると5時半がタイムリミットだ。さらにもうひとつは・・・襲い来るブヨの群れとの戦い。防虫スプレーを再三服と肌にかけたがほとんど効果無く、ヤマヒル対策に持っていたアルコールスプレーを群れに向かって吹きかけたが全くひるまない。10ヶ所以上食われまくった。6時まで作業を行ったが終えることが出来ず、ネットを仮止めした状態で作業を終え下山となった。会合には40分遅刻で出席することとなってしまった。


    ショウマの葉がたくさんあるが、無事に咲いてくれるかどうか?


    ルイヨウボタンは数を増やしているが、実はこの植物は鹿があまり食べない。


    ツルシロカネソウも激減している花のひとつ。

 不完全な作業なので花の咲く頃に再訪して作業を完了させる予定である。これでこの2カ所に限っては食害からも人の踏み荒らしからも逃れることは可能であろうが、根本的な山の植生の変化には全く対応が出来ないわけで、あくまでもこの作業は一時凌ぎのものということになる。根本的には山頂付近を広範囲に保護柵で囲って植生の再生を待つしか無いだろう。6月開催される予定のこの山の植物観察会には役場の職員も参加するらしい。案内役と講師を仰せつかっているので、植生の変化と保護の重要性をアピールすることが出来ればと思っている。
コメント (2)
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