山名を隠してもこの記事を読まれている方のほとんどはこれがどこの山かはわかっていることと思う。ここ数年間で著しく変貌を遂げているこの山の植生の変化と、それに対してどのように対応して行けばよいのか、まだ全くの手探り状態である。今年2ヶ所の保護柵を設置したものの、その程度でこの山に咲く貴重な植物の保護が出来るとは到底思っていない。しかし、現状がどうなっていてこれから起こりそうな変化は何なのかを周知しておくことはこれから先の保護活動を行って行くうえで必要不可欠なことだと考える。今回は山梨県山岳連盟自然保護グループ主催で、私の提案による観察会と勉強会が開催された。
以下は今回の勉強会で配布した資料である。
~食害による植生の変化とカモメランへの影響について考える~
山梨県山岳連盟 自然保護グループ
かつては山頂付近に豊かなお花畑が広がっていた御坂山系某山であるが、鹿の食害によりカイフウロやタムラソウ、ユキザサなどの多くの植物が激減し、鹿の好まないヤブレガサやマルバタケブキなどが増殖する森に変わりつつある。その結果山肌の乾燥化を招き、ここ数年でカモメランは減少の一途をたどっている。


平成24年8月19日撮影。山頂付近は豊かな草地が広がっていた。


平成24年8月19日撮影。カイフウロやシュロソウ、レンゲショウマなどが咲いていた。
平成28年6月撮影。全ての森がこうではないが、鹿の好まないヤブレガサが大繁殖している。

この山に咲くカモメラン

踏み荒らしが目立つため昨年保護ロープを設置した。

通常のカモメラン。全体的にピンク色をしている。

この山固有のカモメラン。上部の萼片が白、唇弁に濃い紫色の斑点が入る。
今年はカモメラン保護のために自主的に2ヶ所保護柵設置を行った。鹿の食害と人の踏み荒らしからはある程度保護できるかも知れない。しかし、根本的にはもっと広範囲に保護柵を設置し、鹿の食害による山肌の乾燥化を防ぎ植生の回復を待たなければ、この稀少なランを含めた植物の保護は困難であろうと考えている。部分的な保護柵は一時凌ぎの効果しか期待できないだろう。 (資料:自然保護グループ ヨッシー作成)
広い駐車場のあるこの山の麓に集合する。私を含めて18名という多くの参加者が集まってくれた。資料を配布し、今回の観察会の趣旨について説明する。そして出発。

参加者のほとんどは山岳レインジャーの方々だった。

昨年の画像を見直すと奇妙なマムシグサが写っていたので今年も出会えるだろうと思っていた。ユモトマムシグサ。こちらの山にもあった。

カモメラン自生地に到着。花のすぐ左脇は鹿の食害を受けた植物の茎。ショウマ類か?

上弁が若干ピンク色がかっているが、この山に見られる唇弁に濃い紫色の斑が入るタイプ。

柵で囲った場所。昨年は1株しか咲かなかったが今年は3株咲いてくれた。昨年は踏み跡が目立ったが、今年はなんとか保護できている。

ここは固有タイプがほとんど。70㎜望遠だと少し距離が足りない。

誰かが木で隠してくれたらしいが、その木の下敷きになってしまっていたカモメラン。このようなことをしなくても良いようにしてやりたい。

結構咲いているように見えるが、花数は激減している。

先日ロープを張り直したが効果が無いようで、また新たな踏み跡が出来ている。柵を設置することに決める。

唇弁の濃いものも混在している。
途中のショウマ類はさらに葉の数を減らしており、あっても小さな葉が多くて花を咲かせるには不安なものが多かった。咲く前に鹿に食われる危険性もある。そして、さらに勢いを増して増殖しているのがヤブレガサである。あの大きな葉の下に入ってしまった植物は、日光を浴びることが出来なくなりやがては衰退して行く運命にあるのだろう。実際にヤブレガサの下にあったカモメランの群落が今年は葉も出ずに激減していた。
山頂付近で昼食をとり下山する。この山の植生変化を見ていただくにはバリアンスルートが最適である。なにせそこの尾根に生えているのはヤブレガサばかり、ショウマもあるにはあるが、元気が無く、さらに山肌も乾燥している。そのような山の変化を見せながら、沢筋に下りてみた。

沢筋はまだましかも知れない。ツルネコノメソウ群落。

テバコモミジガサとゴミを回収して歩いてくれた参加者。

コンロンソウ?

この山では久しぶりに見かけるラショウモンカズラ。数株だが咲き残っていた。
バリアンス尾根を下りて周回し、駐車場に戻る予定だったが、日没にはまだ時間があるので近くの休憩所がある森の中を散策して解散となった。
今回のこの山の現状は参加者の皆さんは十分に理解していただけたことと思う。今のところ考えられる最善の策は山頂付近を広範囲に保護柵で囲んで必要ならばヤブレガサやテンニンソウなどの草を除去して植生の回復を待つことであろう。山肌の乾燥化はラン菌の活性を低下させてしまい、カモメランが減少する最大の原因になっているのではないかと考えている。個人の力や山岳連盟で広範囲に保護柵設置を行うことは困難であり、行政の力を借りるしか無いであろう。しかし、それを待っている間にも花たちはどんどん衰退して行くわけで、今私たちに出来ることと言えば狭い範囲でも良いので柵で囲ってあげることくらいだろう。今年は2ヶ所しか囲えなかったが、来年はみんなで囲いに来ましょうということで話がまとまった。少しずつではあるが、観察から保護の方向に向かって転換出来てきたように思う。

参加者の皆様、ご苦労様でした。来年は柵を設置に来ましょう。
以下は今回の勉強会で配布した資料である。
~食害による植生の変化とカモメランへの影響について考える~
山梨県山岳連盟 自然保護グループ
かつては山頂付近に豊かなお花畑が広がっていた御坂山系某山であるが、鹿の食害によりカイフウロやタムラソウ、ユキザサなどの多くの植物が激減し、鹿の好まないヤブレガサやマルバタケブキなどが増殖する森に変わりつつある。その結果山肌の乾燥化を招き、ここ数年でカモメランは減少の一途をたどっている。


平成24年8月19日撮影。山頂付近は豊かな草地が広がっていた。


平成24年8月19日撮影。カイフウロやシュロソウ、レンゲショウマなどが咲いていた。

平成28年6月撮影。全ての森がこうではないが、鹿の好まないヤブレガサが大繁殖している。

この山に咲くカモメラン

踏み荒らしが目立つため昨年保護ロープを設置した。

通常のカモメラン。全体的にピンク色をしている。

この山固有のカモメラン。上部の萼片が白、唇弁に濃い紫色の斑点が入る。
今年はカモメラン保護のために自主的に2ヶ所保護柵設置を行った。鹿の食害と人の踏み荒らしからはある程度保護できるかも知れない。しかし、根本的にはもっと広範囲に保護柵を設置し、鹿の食害による山肌の乾燥化を防ぎ植生の回復を待たなければ、この稀少なランを含めた植物の保護は困難であろうと考えている。部分的な保護柵は一時凌ぎの効果しか期待できないだろう。 (資料:自然保護グループ ヨッシー作成)
広い駐車場のあるこの山の麓に集合する。私を含めて18名という多くの参加者が集まってくれた。資料を配布し、今回の観察会の趣旨について説明する。そして出発。

参加者のほとんどは山岳レインジャーの方々だった。

昨年の画像を見直すと奇妙なマムシグサが写っていたので今年も出会えるだろうと思っていた。ユモトマムシグサ。こちらの山にもあった。

カモメラン自生地に到着。花のすぐ左脇は鹿の食害を受けた植物の茎。ショウマ類か?

上弁が若干ピンク色がかっているが、この山に見られる唇弁に濃い紫色の斑が入るタイプ。

柵で囲った場所。昨年は1株しか咲かなかったが今年は3株咲いてくれた。昨年は踏み跡が目立ったが、今年はなんとか保護できている。

ここは固有タイプがほとんど。70㎜望遠だと少し距離が足りない。

誰かが木で隠してくれたらしいが、その木の下敷きになってしまっていたカモメラン。このようなことをしなくても良いようにしてやりたい。

結構咲いているように見えるが、花数は激減している。

先日ロープを張り直したが効果が無いようで、また新たな踏み跡が出来ている。柵を設置することに決める。

唇弁の濃いものも混在している。
途中のショウマ類はさらに葉の数を減らしており、あっても小さな葉が多くて花を咲かせるには不安なものが多かった。咲く前に鹿に食われる危険性もある。そして、さらに勢いを増して増殖しているのがヤブレガサである。あの大きな葉の下に入ってしまった植物は、日光を浴びることが出来なくなりやがては衰退して行く運命にあるのだろう。実際にヤブレガサの下にあったカモメランの群落が今年は葉も出ずに激減していた。
山頂付近で昼食をとり下山する。この山の植生変化を見ていただくにはバリアンスルートが最適である。なにせそこの尾根に生えているのはヤブレガサばかり、ショウマもあるにはあるが、元気が無く、さらに山肌も乾燥している。そのような山の変化を見せながら、沢筋に下りてみた。

沢筋はまだましかも知れない。ツルネコノメソウ群落。

テバコモミジガサとゴミを回収して歩いてくれた参加者。

コンロンソウ?

この山では久しぶりに見かけるラショウモンカズラ。数株だが咲き残っていた。
バリアンス尾根を下りて周回し、駐車場に戻る予定だったが、日没にはまだ時間があるので近くの休憩所がある森の中を散策して解散となった。
今回のこの山の現状は参加者の皆さんは十分に理解していただけたことと思う。今のところ考えられる最善の策は山頂付近を広範囲に保護柵で囲んで必要ならばヤブレガサやテンニンソウなどの草を除去して植生の回復を待つことであろう。山肌の乾燥化はラン菌の活性を低下させてしまい、カモメランが減少する最大の原因になっているのではないかと考えている。個人の力や山岳連盟で広範囲に保護柵設置を行うことは困難であり、行政の力を借りるしか無いであろう。しかし、それを待っている間にも花たちはどんどん衰退して行くわけで、今私たちに出来ることと言えば狭い範囲でも良いので柵で囲ってあげることくらいだろう。今年は2ヶ所しか囲えなかったが、来年はみんなで囲いに来ましょうということで話がまとまった。少しずつではあるが、観察から保護の方向に向かって転換出来てきたように思う。

参加者の皆様、ご苦労様でした。来年は柵を設置に来ましょう。