山梨百名山から見る風景

四方を山に囲まれた山梨県。私が愛して止まない山梨の名峰から見る山と花と星の奏でる風景を紹介するページです。

三ツ峠の富士山と花たち  平成29年6月18日

2017年06月20日 | 山梨百名山
 6月17日の勉強会終了後、三ツ峠山荘ご主人の中村さんを交えて花談義があった。その中には花にたいへん詳しく保護活動も熱心にされている著名な方も含まれていた。私自身がこれからやろうとしていることの先駆者のような方々である。最も印象的だったのは植物を保護の名のもとに自分の売名行為や利益のために利用してはならないということだ。私自身、そのようなつもりで記事を書いているわけでは無いのだが、記事をネット上に掲載すること自体がそのような行為になってしまっているのかも知れない。ネット上に記事を書くことの難しさを感じさせられた。談義は深夜10時ごろまで熱心に行われ、翌日のこともあるのでお開きとなった。

 その後部屋に行って参加メンバーと談義し、寝たのは11時半ごろだった。翌朝はあまり天候が良く無さそうだったが、目覚まし時計を3時半にセットする。目が覚めたのは3時15分、外を見ると雲海が広がっている。4時に起き出して外に出ると、空は曇っているものの富士山が雲海の上に浮かんでいた。朝食は7時ごろと聞いていたので、その前に富士山の撮影と花を見て回るためにカメラと三脚を担いで山頂に向かう。


    雲海に浮かんだ富士山。。今回はEosM2に11‐22㎜の新調したレンズを装着して撮影したが、水平照準が装備されていないためにずれている。


    山頂直下から見る富士山。


    三ツ峠山山頂に到着した頃には雲が湧き始め、富士山は隠されてしまった。


    わずかな雲の切れ間から見る富士山。前景のミツバツツジはもう終わっている。


    ヤマツツジと富士山。今度は富士山が姿を現さず。


    三ツ峠山頂。標柱が新しくなったが、標高が記されていない。

 花を観察しながら別ルートで三ツ峠山荘に戻る。


    シロバナフウリンツツジが満開。


    ムラサキツリガネツツジは散り始め。


    アオチドリ。1本しか見つからない。


    数を減らしているノビネチドリは柵で囲われた。


    そしてこの花。昨年は1株だったのに今年は2株咲いた。


    しかも元気いっぱい、色鮮やかだ。この花にとっての三ツ峠の環境の良さを物語っている。


    そしてこちらの花も元気に咲いていた。


    アマドコロと雲海

 三ツ峠山荘に戻るともうすぐ食事になりそうだったが、折角富士山が姿を現してきたので、展望台に行ってみることにする。


    アヤメと富士山


    新緑のカラマツと富士山


    展望台から見る富士山

 展望台から戻ると、ちょうど食事が始まったばかりだった。朝食にしてはボリュームたっぷりのおかずに美味しい御飯、山に登ったのにきっと体重が増えて下山することになるのだろう。

 この日は山岳連盟のメンバーが9時ごろに清掃登山にやって来る予定だったので、そちらのメンバーに入れてもらって清掃活動を行う予定だった。草刈り鎌も持参してきた。しかし、宿泊組のメンバーは既に前日清掃活動を行っておりこの日はあまり人が行かない尾根を途中まで下りてみると言っている。どうするか迷ったが、宿泊組に同行して尾根を歩いてみることにした。尾根の途中にはイワカガミの群落があったが花は終わっていた。


    あまり人が入らない尾根にはイワカガミの群落があった。花は既に終わっていた。


    咲き残っていたイワカガミ


    ツルシロカネソウ


    途中の岩に咲いていた白いラン

 人が入らない尾根ではあるが鹿はだいぶ入り込んでいるようで、ショウマ類の葉がだいぶ食害に遭っていた。カモシカが住んでいてニホンジカは比較的少ないと言われている三ツ峠であるが、少なからず鹿の食害はあるようだ。やはり花を保護するためには保護柵かメッシュの囲いが必要であろう。人の手を加えることに賛否あるかも知れないが、花数が増えていることから推察すると花たちにとってこの環境が快適であることは間違いない。

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自然保護委員会レインジャー活動のため三ツ峠へ 勉強会その2  平成29年6月17日

2017年06月20日 | 番外編
 平成29年6月17日から18日にかけて三ツ峠山荘に宿泊して自然保護委員会主催の山岳レインジャー活動(清掃登山)および勉強会が開催され、講演させていただいた。テーマは以下の2点である。

 1.山梨県絶滅危惧ⅠA類の植物の現状
 2.稀少植物保護への取り組み

 テーマ1については前述した通りで、テーマ2の「稀少植物保護への取り組み」について述べる。

 山岳連盟のレインジャー活動とは、登山者の保護や救助が目的ではなく、稀少植物の調査と保護のための登山者の指導が目的である。そのためには植物の知識が必要であり、現地での観察会だけでなく研修会も開催されている。山岳レインジャー活動の植物調査は定経路(同じルートの植物を毎年調査する)と探索路(ルートの指定無く指定された山域を調査する)の2種類があり、山梨県山岳連盟に所属していてレインジャー活動に協力していただける山岳会に振り分けられる。今年は合計で50数回の出動が予定されている。主に1泊2日で調査に行く高所山岳地帯が主体であるが、近年は日帰りでの中・低山のレインジャー活動や自然保護委員会主催の勉強会も多く開催されるようになった。しかし、今のところはまだ調査が主体で保護活動まではなかなか手が回らないのが現状である。

 しかし、調査と観察を行っている間に無くなってしまう植物も多々あるわけである。山岳レインジャー活動で調査したものは報告書を記載して自然保護委員会でとりまとめたうえ、山梨県緑自然課に届けられる。その調査書を元に山梨県の行政の判断で保護に乗り出すかどうかが検討されるわけであるが、予算や時間等の都合でなかなか出来ないでいるのが現状である。しかし、危機的な状況にあり優先順位の高い植物については直接山岳連盟から働きかけて早急な対処が行われることがある。そのひとつがホザキツキヌキソウである。この花は昨年6月に自然保護グループの観察会が行われた後、富士川町や南アルプス市に山岳連盟から直接依頼してその年の秋には保護柵で囲われることとなった。しかしそのような事例は稀であり、現状では行政にお願いしてもなかなか動いてくれないことが多い。

 そこで今年から始動したのが、私的に行う保護作戦、保護ネット張りである。ブログ上では既に掲載済みであるが、4月から4つの山に小さな範囲ではあるが保護ネットを設置した。その効果はいかなるものかを今回の講演で発表させていただいた。以下の3つの作戦について今回述べさせていただいた。

 1.茅ヶ岳オキナグサ保護作戦
 2.湯村山キラキラキンラン保護作戦
 3.秘密の花咲じじい作戦


 ①茅ヶ岳オキナグサ保護作戦

 茅ヶ岳のザレ地に限局的に咲くキンポウゲ科オキナグサ(山梨県絶滅危惧Ⅱ類)は、平成24年ごろから花芽のみ食害に遭っているのが観察されていたが、平成26年の山梨県を見舞った記録的な大雪の後2年間は食害は観察されなかった。しかし昨年(平成28年)の4月下旬に訪れてみると、花芽どころか新芽の葉までが食べられており、とうとう一株も花を咲かせることなく終わってしまった。秋に再訪してみると、とりあえずは葉だけは出たようだ。3年間このような状況が続くと消滅してしまう可能性が高い。そこで今年、食害から守るために保護柵の設置を行った。


    茅ヶ岳のオキナグサ 平成27年4月撮影


    記録的な豪雪に見舞われた翌年の平成27年は食害に遭わずかなりの数の花が咲いてくれた。


    ところが昨年(平成28年)4月に訪れてみると、葉が少し出ているだけで花芽は全く見当たらない。


    良く見てみると、葉の根元から食べられていた。


    今年(平成29年)4月、保護ネットを自主的に設置する。


    地盤が固くポールの固定が悪いため、後日金属杭を持って行き固定し直した。5月連休中に作業を終えた。

 さて、保護柵の効果はどうだったであろうか?例年ならば花の満開を迎えている5月連休までネット張り作業がかかってしまったが、今年は花期が2週間ほど遅れてくれたおかげで花はまだ咲いていなかった。5月中旬、柵の効果を確認に訪問してみる。


    今年(平成29年)5月中旬に訪問。咲いている。葉の食害も全く受けていない。


    空に向かって嬉しそうに咲いている茅ヶ岳のオキナグサ。


    花数はだいぶ減ってしまっているが、ひとまずは咲かせることが出来た。保護ネットによる囲い込み作戦はひとまず成功である。

 茅ヶ岳オキナグサ保護作戦はひとまず成功した。しかし課題はたくさんあり、だいぶ減ってしまったこの花を復活させることが出来るのか、ネットの強度にはかなりの問題があり、雪の積もる冬の間に倒れてしまう可能性が高い。来年も修復に訪れる必要がある。


 ②湯村山キラキラキンラン保護作戦

 湯村山は甲府市の市街地からほど近い位置にあり、道が整備されていて地元の老人たちをはじめ、ハイキングやトレランの人たちもたくさん集う入り易い山である。それゆえにキンランをはじめとする種々の植物の盗掘や花摘みが後を絶たない。先日見た花がもう無くなっているというのは日常茶飯事で、特にキンラン、ギンランは目に見えて数を減らしている。保護のために今年5月、囲い込み作戦を展開した。


    湯村山のラン科キンラン(山梨県絶滅危惧ⅠB類)。


    湯村山には他にも稀少植物が咲く。ラン科エビネ(山梨県絶滅危惧Ⅱ類)


    ラン科ギンラン(山梨県絶滅危惧Ⅱ類)。いずれも盗掘と食害で近年著しく数を減らしている。


    本年(平成29年)5月、自主的に保護柵を設置する。これは棒の長さ1.5mの高いほうの保護柵。


    こちらは棒の長さ1mの低いほうの保護柵。

 高いほうの保護柵を2ヶ所、低いほうの保護柵4ヶ所設置し、合計8本のキンランを囲い込んだ。さて、その効果はどうだろうか?設置後1週間過ぎに見に行ってみる。


    高いほうの保護柵の中。囲い込んだキンランは無事で、もうすぐ花が散りそうである。


    一方、低いほうの保護柵は花が無くなっている。花が散ったのでは無さそうだ。


    囲われていない他のキンランを見てみると、同じようなことが起きていた。


    株の根元あたりを見てみると、花が摘まれて散乱している。盗掘を恐れて誰かが花を摘んだらしい。

 低い保護柵は人の手が容易に届いてしまうため、盗掘を恐れた誰かが保護のために花芽を摘んだらしい。株を持ち去られないためにはこの方法もひとつの手段かも知れないが、種を付けることなく花が終えてしまい世代交代が出来ないため、長い目で見ると花数を減らすことになってしまう。このようなことをしなくても良いような保護の方法を今後考えなければならない。隠して保護するのではなく、オープンな自然公園のようにするのもひとつの手段かと考えている。


 ③秘密の花咲かじじい作戦

 既に何度か記事をブログ上に書いているので、もはや秘密では無くなってしまっている。2年ほど前から始動した作戦である。
 ある写真家の先生からアツモリソウが咲く場所があるとの情報をいただき、平成24年6月、3株咲いているのを確認した。しかしその翌年から葉は出るものの花を咲かせなくなってしまい、さらにその翌年は弱弱しい葉を出すだけで全く花を咲かせる元気が無くなってしまった。そんな折、三ツ峠の清掃登山に参加する機会があり、あの保護地の中に咲くアツモリソウの元気なこと、それ以上にその素晴らしい環境に感動した。そしてこの花咲かじじい作戦が始動した。周辺のテンニンソウを取り除き木の枝を取り払って日当たりを良くしてやり、さらにはラン菌の活性を高めるような天然の肥料も散布した。平成27年の春には葉が出ているのを確認したがその年の秋には無くなってしまい、とうとう昨年(平成28年)には葉すら姿を見せなくなってしまった。花咲かじじい作戦は失敗したかと思ったのだが、手入れしていた場所を良く見ると鹿の食害により折角出てきた植物の葉が大部分食べられていたのである。植生再生のためにいろいろやって来たことは鹿の餌を増やしたに過ぎなかったということだった。そして今年の4月、まだ下草が生え出す前に保護柵の設置を行った。


    平成24年6月に見たアツモリソウ。今にして思えば、テンニンソウなどの共生しにくい植物に囲まれていて、悪条件の中に咲いていたと思う。


    おそらく保護されていない環境下で見ることが出来た最後の花と思われる。


    これも今にして思うことだが、花の色が薄く元気が無い。この時点で既に救助信号を発していたのだろう。


    その翌年の平成25年6月、3株の葉が出たが花は咲かせなかった。


    平成27年6月、弱弱しい葉を一株出したのみで、秋にはこの葉は無くなってしまっていた。


    平成28年6月、手入れしたにもかかわらず、とうとう葉すら出なくなってしまった。


    良く見てみると、鹿の食害でシュロソウの葉がほとんど食べられている。


    平成29年4月、まだ下草が生え出す前に保護柵を設置した。


    平成29年6月再訪してみる。保護柵の中は青々と草が茂っている。

 さて、今年(平成29年)4月に設置した保護柵の効果はどうなのだろうか?6月、期待と不安が入り混じりながら再訪してみると・・・!


    保護柵の中。食害は全く受けていない。そして良く見てみると・・・


    まだ弱弱しく、花を咲かせるのはずっと先になりそうだが、葉は出てくれた。

 昨年は食害に遭ったか、あるいは葉を出すだけの元気が無かったのかも知れない。しかし今年はなんとか葉だけでも出してくれた。とにかく嬉しかった。花咲かじじい作戦続行である。


 以上が今回三ツ峠山荘で行われた勉強会の要旨である。


 まとめ

 ・局所的な保護ネットは根本的な植生の回復は困難であろうが、短期間の保護には有効な手段である。
 ・行政が動くのを待っている間に稀少植物はどんどん減少してしまう。やれる範囲で保護すべきだと思う。これは保護ネットだけでなく、踏まれないように石や木で囲ってあげることも含めて、大切な保護活動だと考えている。
 ・山岳レインジャー活動も調査・観察から保護も考える時期に来ていると思う。これは自分自身を含めての戒めである。


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