バルチック3国のリトワニアとポーランドに囲まれたカリーニングラードはロシア本国から孤立したロシア領の飛び地です。バルト海に開けた重要なロシア海軍の基地のあるところです。その歴史を検索してお読みになると領有権が色々な国へ移動したことが分かります。カリーニングの歴史を知るとヨーロッパ人の領土に対する激しい抗争のいきさつが分かります。下にWikipedeaから借りた現在の風景写真を示します。
このロシアのカリーニング州は1255年からドイツの騎士団が領有する国で、19世紀にプロイセン王国が出来てから、1946年まではドイツ領でした。ケーニッヒベルグと呼ばれていました。第一次大戦後、周囲がポーランド領になり、ケーニッヒベルグはドイツの飛び地になったのです。下に当時の風景写真をWikipedeaのカリーニングラードの項目からお借りして示します。
国家間で領土の領有権を争う場合、感情論だけでは解決しません。軍事力占領の他に、文化的支配と経済的支配など種々の支配方法があるのです。感情論だけで、形式的な領有権を主張して日本の領土と思い込み、自己満足するのが日本的なやりかたです。その考え方はどうもヨーロッパ人と随分と違うようです。
ヨーロッパ人は軍事占領はかりそめの領有権。そして経済的支配と文化的支配が完成したときに固有の領土権が確立すると考えているようです。かねがね、そう思っていましたら、昨夜偶然にもBBCのバルチック3国とロシアの飛び地のカリーニング州の観光・紀行番組をテレビで見ました。観光番組として作られたので美しい町並みやのどかな海岸風景が半分です。しかし、バルチック3国とカリーニング州の何処に行っても、その地方の固有の領土権は何処にあるかという問題を探る旅行記でもあるのです。町で会った多くの人にインタビューをしています。領土権が何処にあるかを直接聞いたりはしません。貴方はソ連の文化が好きでしたか?自分の国の文化はロシアとは違いますか?ソ連時代には生活は良かったですか?などどさり気なく聞くのです。この町の美しい建物はどれですか?というような質問に混ぜて聞くのです。本音の答えが返ってきます。
この番組の結論を言います。ソ連はバルチック3国を軍事占領し、経済的支配をしていたが、文化的支配に失敗した。従って独立した。一方、カリーニングラードは軍事占領、経済支配、そして文化支配も完成しているのでロシアの固有の領地になってしまった。BBCのこのテレビ番組を見ると視聴者がおのずとそのように考えるような編集になっているのです。ドイツ領だったケーニッヒベルクは人類の歴史から消えて無くなったのです。
中国はチベットの文化的支配に成功していません。日本は尖閣諸島の巡視艇による防衛には成功しましたが、住民が居ないので、完全な領有権の主張が弱いのです。一方北方4島はロシアがカリーニングラードと同じような政策を取り出しました。日本はその意味を軽く考え過ぎています。日本の大臣が北海道から国後島を見に行くなどという行為は無駄な事です。選挙民の感情へ訴えるだけです。
このように冷静に考えてみると領土問題で感情的になる必要が無いことがお分かり頂けると思います。国家とは何でしょう?その領土から遠方に住んでいる人間にとって、そんなに重要なものでしょうか? 人間とは何処から来て、何処へ行くのでしょうか?昨夜見たBBCのテレビ番組はそのような事を考えさせる観光番組だったのです。
日本のテレビの観光番組に領土問題を考えさせる内容が織り込まれていません。美味しいものの情報が多すぎます。何故か日本の将来が心配になります。貴方は日本の将来が心配になりませんでしょうか?
今日も皆さまのご健康と平和をお祈り申し上げます。藤山杜人