随分以前から近所に簡素で美しい住宅がありました。芸術作品のような家です。庭樹と塀と屋根が渾然一体になった木造建築です。2年ほど前に、勇気を出して設計者を訪問し、取材を申し込みました。御忙しい方ですが、2時間ほどお話を聞きました。一級建築士の原田智章氏で建築計画事務所を開いています。上野の芸大の建築学科を出て、恩師の経営するアトリエでチーフ・エンジニアを10年以上務めたのちに独立したそうです。今日は久しぶりに最近の作品のお話を聞くために建築計画事務所を訪問しました。
左の写真が建築家の原田さんです。工学院大学の先生もしていらっしゃいます。その下の写真は事務所の室内風景です。
今日は九州に最近完成した素晴らしい住宅のお話を聞いてきました。その作品のことについては来週ご紹介いたします。その代わり、以下に、2008年12月10日にこのブログで掲載した記事を再録いたします。美しい材木を生かした作品の写真をお楽しみ頂ければ嬉しく思います。
====2008年12月10日掲載記事の抜粋======
お話の中心は施主の予算内で如何に美しく、住み心地の良い家を作るか?という問題でした。芸大卒だけに従来に無い独創的な建築美を作ることに情熱を持っています。しかし施主とは何度も、何度も話し合って建築美と建築コストと住み心地の関係の最善のバランスを追求するそうです。日本の杉や檜を使った全木造の体育館や公共の建物や住宅を作ってきました。まだお若いのにいろいろな建築デザイン賞もとっています。
多くの作品の写真を見せてくれました。飾り構造をそぎ落とした茶室のような印象です。しかし北欧の固い針葉樹で作った家具の機能的な美しさも備えています。日本の「侘び寂び」の伝統美とヨーロッパの家具や建築の機能美が深く溶けあって一種独特な造形芸術作品になっています。
その繊細な美しさはブログでは表現出来ない。無理に掲載すると原田さんの建築美にキズを付けてしまう。そんなメールを送りました。
ここに紹介する2枚の写真を添付してメールが返ってきまた。「写真から設計者のメッセージが伝わらなければ設計者の責任です。どうぞご自由にお使い下さい。」という返事でした。
初めの写真は大分県中津江村の注文で山頂に作ったあずま屋です。屋根板はまだ乗っていない段階の写真です。「200海里の森つくり」という水源涵養事業の一つです。
道が無くて車や重機の上がれないところです。ボランティアの人々が材木を持って登ってくみ上げられるように設計してあります。材料は村内の間伐材だけです。材料1本が人間一人で持って上がれる重さに切りそろえてあります。それらを通しボルトで組み上げた構造になっています。周りの山の景観に調和した建築物になっています。施工は平成15年10月19日でした。
次の写真は大分県中津江村の村営住宅です。全て木造で間伐材を使っています。一家の室内を広々させるために柱を無くしました。2階と屋根の重さは外壁で受けています。美しい形状の木造螺旋階も、高い天井も全て磨いた檜です。住んでいる人が毎日見る天井や階段が優しい美しさにあふれています。住み心地が良い筈です。この村営住宅は平成15年度の大分県の豊の国木造建築賞(ユニーク構造賞)を受賞しています。
原田さんの最近の注文主は東京近辺が多いようです。美しい家を合理的なコストで建てようとしている方は原田さんへご連絡してみて下さい。(終わり)