上の写真は冬の雑木林です。これを眺めながら気を静めて、下の文章をお読みください。
前回の記事、中国人蔑視・韓国人蔑視へと急変する日本人の精神的風土の中で私は以下のように書きました。
・・・最近、中国人や韓国人を蔑視し、悪しざまに言う人が急に増えてきました。
新聞、雑誌はそれほどでもありませんが、ネット世界では戦前の極端な蔑視言葉が飛び交っています。
ネット社会には報道規制がありませんので、それが現在の多くの日本人の本音と考えられます。
汚すぎる言葉を使わずに、その言わんとすることを以下に列記します。
(1)日本固有の領土の尖閣諸島や竹島の領有を主張する中国人や韓国人は理不尽すぎ、国際常識もわきまえない馬鹿者達だ。
(2)毒入りの食品や欠陥製品を日本人へ売りつける彼らは絶対に信用できない。
(3)戦前、日本が朝鮮を領土化したり満州国を作ったことは彼等のためにして上げた正しい政策であった。
(4)近代化が遅れて軍備の不十分だった中国へ侵攻したのは当然のことである。
欧米諸国は同じことを行っていたではないか。
それを今更、日本を非難してもしょうがないではないか。そんな恨み節など聞いていられない。
(5)靖国神社参拝で大騒ぎするのは間違っている。日本はもう一度、「軍事大国」になり、中国人や韓国人に馬鹿にされないようにする決心をすべきだ。
(6)中国人や韓国人が喧嘩を売るなら、いつでも買ってやる。日本の自衛隊は近代化されていて強いんだぞ。
などなどです。
私の尊敬する友人たちや、多くの若い人達が、最近、上に書いたようなことを言うのです。
私はここ数年で日本人の精神的風土が急速に変わりつつあると肌で感じています。
誤解しないで下さい。ここで私は聖人君子ぶりを発揮して、この急変はいけないことだなどと説教するつもりは毛頭ありません。・・・
今日は説教でなく、この急変で失うものと得るものを冷静に比較してみたいと思います。
失うものの代表例は下に示したような日本がこうむる経済的損失です。
(1)中国と韓国との貿易額が伸び悩み、貿易で得られる利潤を失う。
(2)中国に展開している数千の日本の会社や工場ので働く中国人の士気が低下し企業の営業利益や工場の操業利益が下がる。士気だけが低下するのではなくいろいろなトラブルが起き正常な企業活動が妨害される。
(3)中国や韓国から日本へ来る観光客が激減し、観光地のホテルや旅館が大打撃を受けている。
上の(1)と(3)は日本の新聞でよく報道されています。しかし(2)はあまり顕著な形で起きないのでニュースになりません。しかし中国にある日本の会社の工場で実際に働いていた人の話を聞くと大変な状況になっているのです。
失うものは経済的損失だけではありません。
中国人や韓国人は感情的には日本人に反発していますが、理性の上では尊敬もし、信頼しているのです。
明治維新をして、欧米の植民地にもならず、東洋人の名誉を守った民族として理性の上では尊敬しているのです。その尊敬と信頼を完全に失しなってしまうのです。
さて失うものは分りましたが、得るものは何でしょうか?
精神的に得るものは、快感です。他人を蔑視し、他人の悪口を言うと大部分の人は快感を感じます。優越感で幸せになります。
これは万国共通の心理なのですから非難しても仕方のないことです。
最近の多くの日本人はこの境地にあるのです。
その上、中国人や韓国人を蔑視することで経済的に得する人々も出てくるのです。
蔑視すれば、敵愾心も出て来ます。当然、軍備増強の考えが自然と湧いてきます。軍事産業に関連した会社の利潤が増大します。
それが刺激になって日本の産業全体が活性化し始めます。
アベノミックスは日銀の金融緩和だけではないのです。
公共事業の投資の拡大、企業の事業税の減少、個人消費増大への各種政策、
武器輸出と軍備強化による軍需産業の利潤拡大などなど複雑多岐にわたっているのです。
そして安倍総理の政治目標の一つには日本人が再び自信を持って経済成長を再開することなのです。そのためには世界の首脳達を訪問し、外交を推進し、日本の大国ぶりを国民へ見せることも重要なのです。
これが彼が言う、「日本を取り戻す!」ということなのです。
その方法の一部に中国人・韓国人へ対する蔑視感情を利用しているのです。蔑視感情を増大させ、それを利用しているのです。新聞も同調しています。
中国人や韓国人を蔑視するかしないかは人それぞれです。個人の自由です。
あなたはどうするかは他人へ言う必要などありません。
どちらにしても日本の自然の風景は下の八ヶ岳の写真のように年年歳歳変わりません。人の心だけは時代とともにめまぐるしく変わってゆくものです。無常という言葉を連想しながらこの稿の終わりと致します。
それはそれとして、今日も皆様のご健康と平和をお祈り申し上げます。
後藤和弘(藤山杜人)