どっどどどどうど どどうど どどう
青いくるみも吹きとばせ
すっぱいかりんもふきとばせ
どっどどどどうど どどうど どどう
「風の又三郎」の冒頭、人口に膾炙されたオノマトペです。熟さず、まだ枝にしっかりついている果実を吹き飛ばすほどの激しい風を、即座に連想させる、又三郎の登場の場面。リズミカルで口ずさみたくなります。このように宮沢賢治の作品には、いたるところでオノマトペが絶妙に用いられているのは周知のこと。擬声語、擬態語、擬情語。見事に作品の中に取り込まれています。
筆者は、言語学専攻。主にオノマトペに関する研究をしている方。その立場から宮沢賢治ワールドに挑戦した書です。
日本語は、英語などのヨーロッパ言語に比べると、オノマトペに富んだ言語だと言われます。感覚的、情緒的ですが、もっとも主観的でありながら、それを聞く人に読む人に表現をより豊かに伝える(ある種の共感を呼ぶ)働きを持っています。
表現上の言葉の「あや」というものを超えた訴えかけを人に与える(時には、人間の言語を操れない動物たちにも)ものがあるようです。文書作法上の「修辞法・レトリック」というような括りを超える不思議な魅力。「公」の文書にはほとんど用いられない表現で、まさに「個」的な表現だからでしょうか。
宮沢賢治は、そうした日本語特有のオノマトペを自在に創作し表現できた人であることを、筆者はそのオノマトペに一つ一つ当たりながら分析し法則を探っています。「言語論」はすぐれて「構造論」でもあるという実践的な立場が、明確です。
・別の子音に変えるとーツェ鼠はプイッと中に入って、むちゃむちゃと半ぺんをたべて・・・
・「い」を「え」に変えるとージョバンニは、しばらく蛍のように、ぺかぺか消えたりともったりしているのを見ました。
わずか二つの例をあげましたが、他にも、宮沢作品について微々入り細に入り分析し、さらに、森羅万象、宮沢賢治の五感(官)によって表現される、不思議な独自のオノマトペの世界に迫っています。心の動きの一例としてある「もう誰だって胸中からもくもく湧いてくるうれしさに笑い出さないではいられない・・・」などには、なるほどと宮沢賢治の表現に同化してしまいそうです。
もう20年以上前、高校演劇、「銀河鉄道の夜」を元とした構成劇で、背景音・効果音をすべて役者みんなの声(オノマトペ)で行うという試みを観たことがあります。軽便鉄道の汽車の響き「ホー、フツフツ、ホー、フツフツ」たしかこんなオノマトペがあったと思います。
青いくるみも吹きとばせ
すっぱいかりんもふきとばせ
どっどどどどうど どどうど どどう
「風の又三郎」の冒頭、人口に膾炙されたオノマトペです。熟さず、まだ枝にしっかりついている果実を吹き飛ばすほどの激しい風を、即座に連想させる、又三郎の登場の場面。リズミカルで口ずさみたくなります。このように宮沢賢治の作品には、いたるところでオノマトペが絶妙に用いられているのは周知のこと。擬声語、擬態語、擬情語。見事に作品の中に取り込まれています。
筆者は、言語学専攻。主にオノマトペに関する研究をしている方。その立場から宮沢賢治ワールドに挑戦した書です。
日本語は、英語などのヨーロッパ言語に比べると、オノマトペに富んだ言語だと言われます。感覚的、情緒的ですが、もっとも主観的でありながら、それを聞く人に読む人に表現をより豊かに伝える(ある種の共感を呼ぶ)働きを持っています。
表現上の言葉の「あや」というものを超えた訴えかけを人に与える(時には、人間の言語を操れない動物たちにも)ものがあるようです。文書作法上の「修辞法・レトリック」というような括りを超える不思議な魅力。「公」の文書にはほとんど用いられない表現で、まさに「個」的な表現だからでしょうか。
宮沢賢治は、そうした日本語特有のオノマトペを自在に創作し表現できた人であることを、筆者はそのオノマトペに一つ一つ当たりながら分析し法則を探っています。「言語論」はすぐれて「構造論」でもあるという実践的な立場が、明確です。
・別の子音に変えるとーツェ鼠はプイッと中に入って、むちゃむちゃと半ぺんをたべて・・・
・「い」を「え」に変えるとージョバンニは、しばらく蛍のように、ぺかぺか消えたりともったりしているのを見ました。
わずか二つの例をあげましたが、他にも、宮沢作品について微々入り細に入り分析し、さらに、森羅万象、宮沢賢治の五感(官)によって表現される、不思議な独自のオノマトペの世界に迫っています。心の動きの一例としてある「もう誰だって胸中からもくもく湧いてくるうれしさに笑い出さないではいられない・・・」などには、なるほどと宮沢賢治の表現に同化してしまいそうです。
もう20年以上前、高校演劇、「銀河鉄道の夜」を元とした構成劇で、背景音・効果音をすべて役者みんなの声(オノマトペ)で行うという試みを観たことがあります。軽便鉄道の汽車の響き「ホー、フツフツ、ホー、フツフツ」たしかこんなオノマトペがあったと思います。