おやじのつぶやき

おやじの日々の暮らしぶりや世の中の見聞きしたことへの思い

読書「ヒトラーに愛された女 真実のエヴァ・ブラウン」(ハイケ・B・ゲルテマーカー)東京創元社

2012-07-05 20:24:51 | 読書無限
 過去は、現在によって規定される、とか。回想は、その典型。今の自分の立場・環境・価値観などから言語化され、振り返られる。語られる歴史は、「物語」そのものだ、と冷ややかに捉える向きもある。
 この書。二人の自殺の直前、公にはタブーとされた二人の関係を示す資料が焼却されほとんど残されていない中、戦後の関係者の法廷での証言、記録などを駆使し、「真実」の姿を描き出そうとしている。
 中でも、戦後、ヒトラー・ナチズムに関係して厳しく追及された関係者(とくに身内)が、いかに我が身を利するために(無関係であったかを証明するために)事実を隠蔽してきたか、を具体的に追求していく。
 資料分析と発言・証言の背景を探る、きめ細かな探求がこの書の眼目。そうして、「真実」実像に迫る。スリリングな展開で読者を飽きさせない。
 一方で、絶対的な権力者の23歳年下の女性との恋愛関係の物語を通して、非人道的で破壊的な人物のヒトラーの人間的な側面を浮き彫りにした、といった評価につながるとしたら、筆者の思いとは別になってしまうだろう。
 エヴァ・ブラウンの、ヒトラーとともにナチスドイツの栄耀栄華をほしいままにし、やがて没落していく姿を描きながら、エヴァがホロコーストまで引き起こしたヒトラーの反ユダヤ主義と思想的にも行動的にも無関係の存在ではなかったことを明らかにしていくことで、ナチスドイツを率いたヒトラーの非人道性を明らかにしている。
 
「愛人にひどい役を担わせたのはヒトラー本人だ。はからずもそのことであきらかになるのは、エヴァの無力さよりも、成り上がり者の不安と底の浅さだ。権力と無力のはざまに囚われつつ最後には決然と行動したエヴァ。はかなくはあるが、決して犠牲者ではなかった。」
                                                     (本文末尾の一節より)
本書中の写真。                                                      

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