先日、長野市の水野美術館の展覧会で、平松礼二さんの「月光の曲」という絵を見て、構図や色使いが素晴らしいと思ったのですが、その平松さんが書いた新書が近くの書店にあったので、購入して読んでみました。
平松礼二さんは、50歳のときにパリのオランジェリー美術館でモネの「睡蓮」を見て衝撃を受け、印象派の勉強も行い、モネのモチーフをベースに『ジャポニズム』という日本画のシリーズを描いている日本画家で、フランスやドイツでも展覧会が開催されている人気作家です。
(目 次)
はじめに モネが日本に恋をした。
第1章 モネとの出会い
第1章 モネとの出会い
第2章 印象派とジャポニズム
第3章 画家の眼から見た「モネの魅力」
第4章 ”モネ、ときどきゴッホ”鑑賞法
第5章 日本画はなぜ世界に通用しないのか
紀行エッセイ 印象派をめぐる旅
おわりに 百年後は世界に認められたい。
(感 想)
日本の浮世絵がフランスの印象派に影響を及ぼしたという事実はよく知られていますが、それを具体的かつ詳細に記述してあり、浮世絵はじめ日本の文化がすごいものであることを実感させられました。また、第3章や第4章では、モネの絵に対する情熱や技量が傑出したものであることも改めて知ることができます。
長野市には日本画専門の水野美術館があるので、年に何回か観に行きますが、日本画のモチーフや色彩は似たものが多く、画一的で飽きがくることもあります。ある程度仕方ない面はありますが、第5章にあるように、派閥がある限りはそういった事態は続くのではないかと残念な思いもします。
著者は、日本の美術教育が西洋画に偏り、日本画を教えることがないと嘆いていますが、日本画家自体がもっと声を上げなければいけないし、子供が見たくなるような『日本画』を生産することが大事ではないでしょうか。本書で取り上げているフランスの作品は、可愛く、癒やしあり、色彩の乱舞ありで、誰が見ても面白い。
平松礼二さんの絵は、この前の展覧会では輝いていました。こういった才能がどんどん出てくると日本画の世界も活性化するのでしょう。日本間も床の間もない住宅が多くなっている昨今、画題が新しく、画面も大きくなくて、壁に飾りたくなるような日本画の登場が望まれ、それをPRすることも大事だと考えました。
(本書に掲載されている平松礼二さんの作品の一部)