安曇野ジャズファンの雑記帳

信州に暮らすジャズファンが、聴いたCDやLPの感想、ジャズ喫茶、登山、旅行などについて綴っています。

田淵行男著 「黄色いテント」(山と渓谷社)

2019-04-19 20:03:29 | 読書

田淵行男記念館で写真展を観た際に「黄色いテント」(山と渓谷社)という本を購入しました。田淵行男さん(1905年~89年)は、山岳写真家として、また、高山蝶や雪形など博物学的研究に業績を残された方ですが、写真集などが多く、これは唯一のエッセー集です。元は1985年に発行されていますが、再編集され、2018年に文庫として刊行されたものです。

   

内容は、登山の道具やテントの設営から、山岳写真、高山蝶、動植物、山の不思議な出来事、山小屋、雪形など幅広いテーマを扱っています。フィールドは日本アルプスが中心ですが、7年も通った北海道大雪山や、浅間山、南アルプスなども登場します。

高山蝶の生息地として上高地の重要性に言及はしていますが、北海道の山に行くようになってから、日本アルプスの俗化に嫌気がさして、日本アルプスは好まなくなったようです。戦後は、登山がレジャー化したのでやむを得ないとはいえ、槍ヶ岳や穂高岳などへ向かう行列を見れば、著者の気持ちはわからないではありません。

雪形(ゆきがた)という言葉は、昭和59年に初めて広辞苑に収録され、「山腹の雪の消え具合によってできる形」と記載されたとこの本にあります。現在では普通に使っている言葉ですが、広辞苑に掲載され市民権を得るのに田淵さんの業績が貢献しているのを初めて知りました。

現在の登山は、山頂を目指すのが一般的で、行程を明確にし、登山届も山域により提出しています。著者の山行は、そういうのとは対極にあるもので、写真を撮ったり、動植物を観察したり、必要ならその場にテントを張って翌朝の写真を撮るなど、山や自然との付き合い方が本当に親密なもので、その点も感銘を受けました。

田淵さんがフィールドとした蝶が岳や常念岳は、行ったことがないので、是非上りたいと本書を読んでいるうちに痛切に思わされました。山や自然が好きな方には、これはかなり面白い本です。

【本書のページから】 

 

【田淵行男記念館】

住所:長野県安曇野市豊科南穂高5078-2
電話:0263-72-9964
ホームページ:tabuchi-museum

   

写真展のチラシ

正面から

記念館の横は、わさび畑になっています。

2週間ほど前の様子です。今は、満開か、それを通り越しているかもしれません。