安西水丸著「ちいさな城下町」を読みました。安西水丸(あんざい・みずまる)さんは、1942年東京生まれのイラストレーター、作家として活躍された方で、村上春樹さんの音楽関連の著書に挿絵(イラスト)を書いているので、ジャズファンにもおなじみだと思います。2014年に逝去されています。
2010年から14年にかけて、雑誌「オール読物」に連載されたものに、書下ろしを3編加え、20の城下町について書かれています。『ぼくの城下町の好みは十万石以下あたりにある。そのくらいの城下町が、一番それらしい雰囲気を今も残している』と記し、『なまじっか復元された天守閣などない方がいい。わずかな石垣から漂う、敗者の美学のようなものがたまらない。』として選択の基準やお城の好みを語っています。
通読して、安西さんの歴史に対する知識の深さに圧倒されました。いろいろな本を読んでいるのはもちろん、知識が体系化されているように感じます。城(城跡)のある街に旅に行った紀行記が主ですが、そこに、自分の生い立ちや人との交わり、城を作った藩や殿さまの歴史を加え、厚みのある文章が記されています。
イラストが添えられいて、これも読んでいく際の楽しみです。歴史好きの安西水丸さんを知るとともに、旅に出たい場所を探すのにも役立つ本で、いろいろな読み方ができる面白い本です。以下、僕の出かけてみたい町について、著者のイラスト入りページとともに記します。
村上市(新潟県)。安西さんは何度も出かけているようです。僕は行ったことがないので、是非でかけたい。
村上市の紹介イラスト。武家屋敷や鮭を吊るした家の軒先。村上には「〆張鶴」という日本酒があり、僕は新潟市に泊まった際に一度だけ飲んだことがありますが、すごく美味しくて、びっくりしました。安西さんももちろん触れています。
朝倉市(福岡県)。秋月藩という名前に惹かれるのと、吉村昭著「最後の敵討」(新潮文庫「敵討に収録)に描かれた物語の舞台となった場所でもあり、遠いけれど、一度出かけてみたい。
掛川市(静岡県)は、一度だけ訪れたことがあります。天守閣を築いたのが「山内一豊」であることが、この本に明確に記載されていたので、そのへんを踏まえて、再訪してみたい町です。
沼田市(群馬県)。沼田城は、真田氏の城として名高いのですが、まだ訪れたことがありません。上田城や松代城は、何度か訪れていますが、沼田にも是非行ってみたい。
沼田の近くには、「吹割の滝」があり、ここにも是非。著者は、『三方から河川が流れ落ちる姿は流麗だ。』と記しています。