先見力

　研修所の最終講義で、民事弁護の教官が言った言葉は、今でも強烈に耳に残っている。
「君らの就職先のボスは、最初の１～２回の起案をみれば、どれだけ君らが将来的に活躍できるかを見抜ける」
　サラリーマン社会の「常識」の逆であったから、私は大変驚いたものだ。
　だが、この言葉は真実だったと思う。例えば、エクスターンでやってくる学生の起案をみれば、その学生が司法試験に合格するかどうか、実務に出てどれくらい活躍するかどうかが、ほぼ正確に分かる。
　専門家の世界では、相手の実力が直ちに分かるということなのだろう。