オウム捜査で神奈川県警に手を焼いた検察 影落とす共産党幹部宅盗聴事件 村山 治(むらやま・おさむ)
「その検事たちにとって取り調べの「座標軸」になったのが、東京地検次席検事で検察側の捜査本部長である甲斐中辰夫の言葉だった。甲斐中は実行犯に対する本格的な取り調べが始まる前に若手検事を集め、一席ぶった。
最終的に死刑判決を受けた複数の実行犯から供述を引き出すことになった検事(現検事正)によると、概ね以下のような趣旨だった。
「この事件は、思想犯だ、君たちがいままでやってきたようなわいせつとか、強盗とか、殺人とか、営利目的で個人の欲望のためにやる犯罪とは違う。自分(甲斐中)は、昔、学生運動家や過激派を被疑者として調べた経験からいうと、彼ら(実行犯)は宗教、学生運動は左翼思想だが、非常に似ている。まじめで、真剣に世の中のことを考え、社会のことを考えて、人を救うことを考えている。それを理解してあげること、しかし、やったことは間違っていると説得すること。暴力団とか、普通の犯罪者と同じように、頭から、おまえがやっていることは悪いことだ、とやってもかみ合わない。彼らがどういう思想で、どういう考えで そこに至ったのか。それを理解して取り調べないといけない」」
私も、かつて公安事件の弁護を担当したことのある人と一緒に刑事弁護を行ったことがあるが、公安事件の弁護方針には驚く。
彼らは、国の司法作用に服することをそもそも良しとしないので、裁判というセレモニーを否定しにかかるのである。
具体的には、
・起訴状に対しては事細かに求釈明を行う。
・罪状認否は否認又は黙秘。
・書証に対してはすべて不同意。
などというものである。
捜査段階では、オウム事件がそうであったように、「完全黙秘」だから、警察・検察としてはやりにくいことこの上ない。
大きな違いは、公安事件の場合、被疑者・被告人のバイブルはおそらく「資本論」だったろうが、オウム事件ではそれが「虹の階梯—チベット密教の瞑想修業」(中沢新一ら)だったということである。
「その検事たちにとって取り調べの「座標軸」になったのが、東京地検次席検事で検察側の捜査本部長である甲斐中辰夫の言葉だった。甲斐中は実行犯に対する本格的な取り調べが始まる前に若手検事を集め、一席ぶった。
最終的に死刑判決を受けた複数の実行犯から供述を引き出すことになった検事(現検事正)によると、概ね以下のような趣旨だった。
「この事件は、思想犯だ、君たちがいままでやってきたようなわいせつとか、強盗とか、殺人とか、営利目的で個人の欲望のためにやる犯罪とは違う。自分(甲斐中)は、昔、学生運動家や過激派を被疑者として調べた経験からいうと、彼ら(実行犯)は宗教、学生運動は左翼思想だが、非常に似ている。まじめで、真剣に世の中のことを考え、社会のことを考えて、人を救うことを考えている。それを理解してあげること、しかし、やったことは間違っていると説得すること。暴力団とか、普通の犯罪者と同じように、頭から、おまえがやっていることは悪いことだ、とやってもかみ合わない。彼らがどういう思想で、どういう考えで そこに至ったのか。それを理解して取り調べないといけない」」
私も、かつて公安事件の弁護を担当したことのある人と一緒に刑事弁護を行ったことがあるが、公安事件の弁護方針には驚く。
彼らは、国の司法作用に服することをそもそも良しとしないので、裁判というセレモニーを否定しにかかるのである。
具体的には、
・起訴状に対しては事細かに求釈明を行う。
・罪状認否は否認又は黙秘。
・書証に対してはすべて不同意。
などというものである。
捜査段階では、オウム事件がそうであったように、「完全黙秘」だから、警察・検察としてはやりにくいことこの上ない。
大きな違いは、公安事件の場合、被疑者・被告人のバイブルはおそらく「資本論」だったろうが、オウム事件ではそれが「虹の階梯—チベット密教の瞑想修業」(中沢新一ら)だったということである。