「初春歌舞伎公演が幕を開けました。新国立劇場での歌舞伎公演も3回目を迎えます。今回の公演は、仇討ち物の傑作『彦山権現誓助剣』を通し狂言として上演しています。舞台写真とともに、公演の魅力をご紹介します。」
国立劇場・初春歌舞伎だが、国立劇場建て替えのため、ここ3年は「新国立劇場」で上演されている。
今年は花道を設置したということで、さっそく花道横の席をゲットした。
歌舞伎座よりも役者さんに近く(席もやや高くなっている)、おかげで私の人生では歌舞伎役者に最接近することが出来た時間となった。
演目は「彦山権現誓助剱(ひこさんごんげんちかいのすけだち)」で、仇討ものだが、これを通しで上演するのである。
「【1】剣術の達人が試合に負けた、そのワケは。
主人公の六助は剣術の名手であり、その実力は領主から仕官の誘いを受けるほど。しかしその申し出はなかなか受け入れられないので、「六助に勝った者には知行(ちぎょう:武士に支給された土地)を与え、召しかかえる(家来にする)」という触れ書きまで出ている。これに名乗りをあげたのは弾正(だんじょう)という男。大勢が見守るなか立会いが行われ、六助はこの試合に負けてしまう。しかしこの勝負、実は六助が弾正に勝ちを譲った八百長試合だったのだ。
六助は数日前に偶然、弾正と出会っており、「余命幾ばくもない母親のために孝行がしたいので、勝ちを譲って欲しい」とあらかじめ頼んでいたのだ。心優しい六助はその孝行心に感じ入り、約束通りわざと試合に負けたのだった。」
国立劇場の筋書は親切で、人物関係図(p7)をちゃんと入れてくれている。
この演目も、人間関係が入り乱れているので、人物関係図がないと、観ていて混乱しかねない。
主人公:六助は、剣術に優れており、それを剣術師範に吉岡一味斎に見込まれ、「八重垣流」の奥義を授かることとなった。
一味斎は、ゆくゆくは六助を、娘:お園に沿い合わせようと考えている。
お園は実の子ではなく、貰い子であるが、身分ある人らしい実の親への義理から、「吉岡家の相続はお園でなくてはならない」というのだ。
言うまでもないだろうが、この演目の最初のポイントは、
「当主候補はイエのゲノムを継承していない、しかも女性である」
というところである。
これは伝統的な歌舞伎の思考からは完全に乖離しており、目の玉が飛び出そうな設定である。
ところが、一味斎は何者かによって銃殺され(飛び道具による暗殺)、仇を討とうとした下の娘:お菊も、犯人の返り討ちにあって死んでしまう。
他方で、六輔の剣術の名声は増すばかりで、今や国主が「六助との試合に勝った者を500石で召し抱える」という高札を出す状況。
そこに現れた弾正が、実は一味斎とお菊を殺害した犯人だった。
「【2】突然現れた怪しい虚無僧。その正体は女性でしかも・・・!
六助は独身であるが、弥三松(やそまつ)という幼い子どもと暮らしている。この男の子は、ある日見知らぬ老人を助けたとき、その死の際に託された子なのだ。六助は不器用ながらも懸命に子育てをし、ここで匿っていると身寄りの人が気づけるよう、弥三松の着物を門口に掛けて暮らしている。
ある日、その着物に気づいた怪しげな虚無僧が、六助に向かって「家来の敵!」と言いながら斬りかかってくる。虚無僧が偽物だと見破っていた六助は余裕の体でかわし、さらには女性であると悟る。この不審人物の正体、実は弥三松の叔母であったのだ。素性がわかり安心した六助は、彼女にこれまでの経緯を一部始終説明する。それを聞いた女はこれまでと態度を一変、急にしおらしくなり「私はあなたの女房です」と申し出る。」
ある日、その着物に気づいた怪しげな虚無僧が、六助に向かって「家来の敵!」と言いながら斬りかかってくる。虚無僧が偽物だと見破っていた六助は余裕の体でかわし、さらには女性であると悟る。この不審人物の正体、実は弥三松の叔母であったのだ。素性がわかり安心した六助は、彼女にこれまでの経緯を一部始終説明する。それを聞いた女はこれまでと態度を一変、急にしおらしくなり「私はあなたの女房です」と申し出る。」