「青田買い」を究極まで突き進めると、「種籾(たねもみ)買い」になる。
つまり、世襲、あるいはより広い意味で言うと「イエ」を判断基準とした採用が行われることになる。
いわば「ゲノム買い」であり、おおざっぱに言うと、その人物の資質などではなく、「血筋」で採用を決めるやり方である。
今もそうなのかもしれないが、民間企業でこの種の採用が露骨に行われていたのは金融機関である。
試しに、石破茂首相(石破 茂(いしばしげる)オフィシャルブログ:旧三井銀行)と岸田前首相(旧長銀時代の失敗は血肉に、岸田首相「人生に無駄なものない」:旧日本長期信用銀行)の前職を見てみるとよい(ちなみに、私は人事部長面接で、「家族全員の職業」を聞かれた。)。
官公庁も例外ではなく、特に外交官の世襲率は尋常ではないレベルである。
明治期から薩摩藩出身者による事実上の寡占状態にあったが、それと似た状況がいまだに続いており、「四世」まで発生する有様らしい。
「外交官には、二世どころか三世、四世というケースもざら。
では、なぜ、外交官は世襲されやすいのだろうか?
最大の理由は「外交官試験」だといわれる。
中央省庁のキャリア組のなかで、外交官だけは特別扱い。試験は外務省内で行われる。
つまり外交官を選ぶのは外交官というわけで試験官が受験者の身内や知り合い、という場合もある。」
この悪名高い「外交官試験」は2001年に廃止されたのだが、その前から既に行き詰っていた。
30年ほど前のこと、東大法学部の学生課(?正式名称は忘れたが、学生の進路情報を担当している部署)を、外務省の人事担当者が訪ね、こう質問したらしい。
「外交官試験を受ける東大法学部生が激減しています。原因は何でしょうか?」
学生課(?)の担当者は、こう答えたようである。
「『丙案』の導入で、法曹を目指す学生が増えているからではないでしょうか?司法試験一本に絞り、留年せずに卒業する学生も増えています。」
「丙案」というのは、「優先合格枠制度」 のことである。
司法試験の受験回数の制限(西野法律事務所)
「過去に「優先合格枠制度」がありました。「丙案」と呼ばれていました。
平成8年の司法試験から、論文式試験合格者の約7分の2を受験期間3年以内の者だけから決定する制度が開始され、平成11年より約9分の2になり、平成16年に廃止されています。
平成8年の司法試験から、論文式試験合格者の約7分の2を受験期間3年以内の者だけから決定する制度が開始され、平成11年より約9分の2になり、平成16年に廃止されています。
公務員試験と異なり、司法試験に定年制はなじみません。
現実に実施されたことはありません。
ただ「採用側」が、比較的若い人を司法試験合格者としたいという意思は一貫しているようです。
現実に実施されたことはありません。
ただ「採用側」が、比較的若い人を司法試験合格者としたいという意思は一貫しているようです。
裁判所と検察庁は、あまり歳をとっている人の採用には消極的です。
例えば、期が上で年齢が下の裁判官と、期が下で年齢が上の裁判官とを、同じ合議体に入れたくはないのです。」
例えば、期が上で年齢が下の裁判官と、期が下で年齢が上の裁判官とを、同じ合議体に入れたくはないのです。」
学生課(?)の分析によれば、それまでは外交官になっていた人材が、「丙案」の導入により、法曹(裁判官、検察官)を目指すようになったということのようなのだ。
”若くて優秀な人材”の採用を巡る「クソな競争」において、外務省は裁判所・検察庁に負けたということらしい。
だが、その裁判所も、実は「ゲノム買い」の例外ではなかった。