急に気温が下がり、猫舌の私も温かいお茶など飲みたくなるが、先日ラジオでどこかの医者が、猫舌は熱いものを口中で冷ますのが下手なのだといっていた。猫舌でない人は、ハフハフやって空気を混ぜて冷やすのが上手いのだという。技術の問題だといわれても俄かには納得しがたい話である。 家族では亡くなった父が猫舌で、葬式で叔父がお茶を飲んでいるのを見て、猫舌は父方由来のものだと知った。母は猫舌ではなく、そもそもフーフーだハフハフだとやっている記憶がない。夕飯時、平然と炊き立てのご飯を食べる母を、スタートで出遅れる父と私は、神経の鈍い野蛮人を見るように眺めたものである。高校時代など腹ペコなのに食べられず、モーモーたる湯気に腹が立った。ハフハフもなにも、口に入れられないのだから技術もへったくれもないのである。いつしか私がウチワ、時に扇風機で冷ます役目になった。私は猫舌だけでなく、熱い風呂もダメだし熱い物も持てない。これも平気な母に笑われるのだが、手の皮がツラの皮と同じくらいの厚さなんだろうといってやる。 冷ますといえば昔から疑問なのは、熱いスープなどを飲む時、フーフー冷ましながら飲む。散々冷まして飲むことはなく、吹いては飲みを繰り返すが、杯に入った少量ならともかく、風が当たった部分は移動し混ざってしまうので、吹くたびに飲むほどの効果があるとは思えないのである。となると、むしろ唇の方を冷やしているのではないか、だったらスープに向ってフーフーする必要はない、ということになる。 この冷却効果に対する疑問は随分前からもっていた。人前でするのも、あまり格好の良いものとはいえないし。だったらフーフーしないで飲んでみて、冷却効果がたいしてないのかどうか試してみればいいだろう、ということになろうが、猫舌がそんなこと試すわけがない。
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