明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



日が暮れると急に冷え込んでくる。運送会社勤務のSさんは休日にもかかわらず洗車で一日。そういう決まりらしい。休みにやらされ後日チェックも入る。今ワックスを拭き取っているので5時には空くとのメール。Kさんからも連絡。どの店も一杯で、結局このメンバーで昨日と同じMということになった。 洗車中、隣からの水を頭から浴びたSさんは風呂に入って暖まってからくるという。 クリスマスイヴだからといって筋金入りの独身者同士。Kさん以外は寂しいのなんのと爪の先ほどもない。それにしても目の前の顔は見飽きている。Sさんが来たら、Kさんに寝たふりをしてもらうことにした。せっかく急いで来たのに寝ちゃったんですか?ということにしようと。私は学生時代は良くやったものである。酒を抱えた友人が、飲み会に着いたと思ったら、みなつぶれて寝ている。がっかりさせておいて乾杯。というわけである。特に久しぶりの友人だと、普通に顔を合わせるのが照れくさいのでやるのだが、付き合いが長い友人は、私のやることを知っているので、ひとしきり騙されたふりをしてから乾杯になる。 この寝たふりで失敗したのは、高校の試験中である。この日に寝ていたら母は鬼の形相で起こすのは間違いないのだが、その日に限って何故か毛布をかけられてしまい、そのまま寝てしまった。翌朝目が覚め後悔しても遅い。 Sさんが来たら合図することにすると、程なくSさん到着。「あれっまた飲みすぎ?」そこで私は見世物小屋の呼び込みの気分で、この62歳の男が、何の因果でここまで飲まずにいられなかったか講釈を始めた。顔を上げられないでいるKさんに、ここぞとばかりにいいたいことをいってやろうという企みもあった。ところが私が話し始めたらニコニコしながら起きてしまった。「えっまだ早かったの?」この人は間が悪いというより、物事には“間”というものがある、ということを理解することなく62歳になってしまった。それを解らせるのは猿の次郎に教えるより困難であろう。 しかし直後にこの企画自体に無理があることに私は気付いた。Kさんが寝ていてガッカリする人など何処にもおらず、むしろ静かで良い、と喜ぶであろう。クリスマスイヴ唯一の企画を滑らせ、ひとしきり飲んでラーメンを食べて帰った。

去の雑記
HOM



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