明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



久しぶりに自作の乱歩作品を眺めたおかげで、頭の中に新たなイメージが沸いてしまうので、なるべく考えないようにしている。何度か書いているが、子供の頃、自分の頭の中に浮かんだイメージは、いったいどこへ行ってしまうんだろう、と思っていた。間違いなく在るのに。それを取り出して、やっぱり在ったと確認したいというのが、そもそも私の制作する動機になっている。そしてすでに亡くなっている作者ではあるが、私はあなたのおかげで、こんな物が浮かんでしまったんです。と見てもらうことを夢想するのである。とにかく乱歩は頭の中にちゃんと在るから今は考えるのを止めろ。と自分を抑えている。いずれ『青銅の魔人』は作るけど。 しかし作りたい物は、たとえばスケッチブック(ほとんど描くことはないが)を広げて、次は何を作ろうか、等と考えてから浮かんで欲しいのだが、こればかりは棚からぼた餅のように、突然落ちてくる。そういう時私は、昔の漫画の表現の、電球が点いた時のような顔をするそうだが、とにかく今は鏡花の河童に専念するべく、他の創作について考えないようにしている。そうはいっても浮かんでしまうものは仕方がないが、私は創作について考えないで済む方法を一つだけ持っている。Kさんというカワウソ風の人物である。この人が横にいる間はぼた餅は落ちてこないは、電球は点かないは、私の創作能力を消してしまう力を持っている。こんな人には生まれて始めて出会った。さらに河童を制作中の私のためにモデルになってくれようと、自らの頭に皿上のスペースを作ってくれようとさえしている。それなのに恩着せがましいことはいわない。私は完璧な皿になることを楽しみに、毎日横目で観察しながら感謝している。

去の雑記
HOM



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